運送業と倉庫業を一体化して継続的な成長を実現 労働生産性を高めるためにICTを積極活用 梶運送(岡山県)

目次

  1. 「自らの可能性を物流業界で試してみたい」。20代前半で物流会社を設立 「依頼された仕事はやり遂げる」ことで顧客からの信頼を得る
  2. 運送業と倉庫業を一体化することで企業価値を高めた
  3. 2024年2月に本社・事務所棟と倉庫を備えた岡山営業所を開設 三つの営業所を集約し従業員同士のコミュニケーションが活発化した
  4. 倉庫では荷物の保管から梱包、開梱、加工、検査、発送までの各業務に対応している
  5. 従業員や顧客に充実した毎日を提供したいという思いで事業の拡大に取り組む
  6. 従業員の約4割を女性が占め活躍 基幹業務や出荷準備で成長を支えるため働きやすい環境づくりを重視している
  7. 梶運送の成長を支えるデジタル 基幹業務やドライバーの運行管理にICTやデジタル機器を活用し、ペーパーレス、情報共有を進める
  8. 給与計算システムと連動したクラウド型の勤怠管理システムによって、勤務時間を給与計算システムに入力する作業は不要になった
  9. ホームページ作成システムを活用して、社内行事や新車両の納入など会社の取り組みを積極的に発信
  10. 2023年4月にSDGs宣言を策定 ホームページを通じて具体的な取り組みを発信
中小企業応援サイト 編集部
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岡山県倉敷市で2001年に誕生した有限会社梶運送は、運送業と倉庫業を一体化したビジネスモデルで継続的な成長を実現している企業だ。たった1台のトラックからスタートした車両は四半世紀で90台近くに増加。約150人の従業員が、中国地方から近畿地方に広がる九つの拠点で働いている。更なる成長を目指して労働生産性を高めるためにICTを積極的に活用。従業員数と拠点数の増加に伴って難しくなる社内コミュニケーションを円滑にするために、ホームページを従業員向けの広報ツールとして活用する取り組みも実施している。(TOP写真:西日本の物流を支える梶運送の大型ウイングトラック)

「自らの可能性を物流業界で試してみたい」。20代前半で物流会社を設立 「依頼された仕事はやり遂げる」ことで顧客からの信頼を得る

運送業と倉庫業を一体化して継続的な成長を実現 労働生産性を高めるためにICTを積極活用 梶運送(岡山県)
梶運送の梶房修代表取締役

梶運送は、梶房修代表取締役が2001年、20代前半の時に立ち上げた企業だ。起業するまで、梶房社長は岡山県内の運送会社に勤めていた。大きな仕事も任されてやりがいを感じていたが、自らの可能性を物流業界で試してみたいという気持ちが次第に強くなり、独立を決意したという。

「依頼をいただいた仕事は必ず引き受けてやり遂げることを創業以来、貫いています。一度、二度、三度とお断りすれば、お客様は次の仕事を依頼しづらくなってしまいます。努力を惜しむことなく工夫して仕事を完遂し、お客様に満足していただくことを最大の提供価値にしています」と梶房社長は、事業に取り組む上で大事にしている思いを話した。

運送業と倉庫業を一体化することで企業価値を高めた

運送業と倉庫業を一体化させたビジネスモデルは梶運送の最大の強みとなっている。梶房社長は、創業間もないころから、運送業と親和性の高い倉庫業を同時に営むことで、収益基盤が安定することはもちろん、物流企業としての付加価値を高めることができると考えていた。

着々と準備を進め、2014年に倉敷市内に水島倉庫、翌年には広島県東広島市内に広島倉庫を設置。その後も山口県内や地元・倉敷市内で着実に倉庫を増やし、2019年には大阪府に進出。大阪市東淀川区内に大阪倉庫を設置し、翌年、東大阪市内に移転した。

2024年2月に本社・事務所棟と倉庫を備えた岡山営業所を開設 三つの営業所を集約し従業員同士のコミュニケーションが活発化した

運送業と倉庫業を一体化して継続的な成長を実現 労働生産性を高めるためにICTを積極活用 梶運送(岡山県)
梶運送本社のオフィスの様子

広域に拠点を拡大する一方、地元ではより効率的な経営体制の確立を目指して拠点を集約している。2024年2月には倉敷市内の本社、玉島、水島の三つの営業所を統合。約1万平方メートルの敷地に2階建ての本社・事務所棟と約2000平方メートルの倉庫を備えた岡山営業所を開設した。

運送業と倉庫業を一体化して継続的な成長を実現 労働生産性を高めるためにICTを積極活用 梶運送(岡山県)
梶運送本社のオフィスの福利厚生ゾーン

岡山営業所では従業員の約6割が勤務している。営業所を集約したことで従業員同士のコミュニケーションが活発化し、生産性の向上につながっているという。「これまで見えていなかった無駄を浮き彫りにして改めることができただけでなく、意識の共有も図りやすくなりました」と梶房社長。オフィスの備品やWi-Fiなどの通信基盤も充実させた。事務所棟の2階は従業員が休憩時間に英気を養えるように福利厚生ゾーンとして活用し、食べ物や飲み物を購入できる売店も設けている。

倉庫では荷物の保管から梱包、開梱、加工、検査、発送までの各業務に対応している

運送業と倉庫業を一体化して継続的な成長を実現 労働生産性を高めるためにICTを積極活用 梶運送(岡山県)
多種多様な荷物を保管する梶運送の倉庫

梶運送は大型ウイングトラック、中型ウイングトラックを中心に88台の車両を所有している。運送業では、各拠点を連動して、ホームセンターへの園芸肥料、建築資材商品の一貫共同配送、自動車部品の一貫配送、スーパーへの米、卵を中心とした食品の配送を手掛けている。共同配送以外にもチャーター便、組立配送便、軽貨物緊急便といった様々な運送サービスを提供している。

倉庫業では荷物の保管から梱包、開梱、加工、検査、発送までの各業務に一気通貫で対応。岡山営業所の倉庫では部品からの組み立て、ピッキング、仕分けといった出荷に必要な様々な作業に対応できる体制を整えている。

従業員や顧客に充実した毎日を提供したいという思いで事業の拡大に取り組む

顧客の多様なニーズにきめ細かく対応できる体制は梶運送の大きなセールスポイントになっている。仕事が増えた分採用を増やし、従業員が増えることで受託できる仕事が増えるという好循環を繰り返して事業を拡大してきた。「会社の成長が実感できれば、従業員は安心して目の前の業務に集中し、将来の人生設計も立てやすくなります。働いてくれている人やお客様に充実した毎日を提供したいという思いで事業の拡大に取り組んでいます」と梶房社長は話した。

従業員の約4割を女性が占め活躍 基幹業務や出荷準備で成長を支えるため働きやすい環境づくりを重視している

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フォークリフトを使って出荷準備をする女性スタッフ

梶運送は、事業を拡大するために毎年、新規採用を行っている。従業員の約4割を女性が占め、基幹業務や出荷の準備作業で多くの女性が活躍し、5人が管理職に従事している。今後、女性従業員の配置拡大や管理職候補となる女性従業員の育成研修にも取り組む方針だ。女性従業員が活躍できる環境づくりに加え、中高齢従業員のキャリア支援、男性従業員の育児休業取得の促進を通じて、多様なバックグラウンドを持つ人たちが働きやすい環境づくりに力を入れていきたいという。

梶運送の成長を支えるデジタル 基幹業務やドライバーの運行管理にICTやデジタル機器を活用し、ペーパーレス、情報共有を進める

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運行管理システムを通じてドライバーを見守っている

梶運送は、会社の規模を大きくすることで増大する会計、帳票作成、勤怠管理といった基幹業務や、配送を担当するドライバーの運行管理を人数や時間をかけずに遂行するために、ICTやデジタル機器を積極的に活用している。

「デジタル技術を活用して情報の共有化を進めることで、仕事の属人化を解消していきたい。特定の従業員への依存度を減らして複数の従業員で仕事をカバーし合える体制を作ることで働き方改革につなげていきたいと考えています。紙書類による業務処理をできる限り減らしてペーパーレス化を進め、印刷コストの削減とスペースの有効活用も図りたいと思っています」と梶房社長は話す。ペーパーレス化の取り組みの一つとして会議の際、高性能のプロジェクターで資料を投影することで参加者間の情報を共有し、紙の資料は配布しないようにしているという。

給与計算システムと連動したクラウド型の勤怠管理システムによって、勤務時間を給与計算システムに入力する作業は不要になった

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出退勤の時刻を記録するためのカードリーダー

勤怠管理で活用しているのが2021年4月に導入したクラウド型の勤怠管理システムだ。導入前は紙のタイムカードに出退勤の時刻を記録し、本社と各拠点のタイムカードをすべて回収した上で担当者が、従業員の勤務時間を確認して給与計算システムに手作業で入力していた。そのため、給与の支払業務には毎月トータルで1営業日分の時間が必要だったという。

導入後は、本社に勤務する従業員はICカードをカードリーダーにかざし、拠点に勤務する従業員はパソコンやスマートフォンなどの端末からシステムにアクセスすることで出退勤の時間を記録している。クラウド型の勤怠管理システムは給与計算システムと連動し、給与が自動計算される仕組みになっているので、勤務時間を給与計算システムに入力する作業は不要になった。ドライバーの勤怠時間は、デジタル式タコグラフ(運行記録計)と事務所に備え付けているアルコールチェックシステムを連動して、トラックの乗降時に自動的に記録して給与計算できるようにしている。

ホームページ作成システムを活用して、社内行事や新車両の納入など会社の取り組みを積極的に発信

運送業と倉庫業を一体化して継続的な成長を実現 労働生産性を高めるためにICTを積極活用 梶運送(岡山県)
ホームページ作成システムを活用してホームページを編集する様子

梶運送は、会社の事業内容や採用情報などの情報を外部に発信するだけでなく、本社やそれぞれの営業所の日常的なエピソードを社内や取引先向けに掲載している。企業向けのホームページ作成システムを活用しているので、時間をかけずに手軽に情報を更新することができる。同システムは2016年に導入し、写真や動画を豊富に掲載できるように2021年にバージョンアップした。

ホームページではブログ機能を活用して定期的に情報を更新している。新年会などの社内行事をはじめ、納入が完了した新車両、従業員が参加したマラソン大会の様子、物流分野の展示会に出展した時の様子、取引先との交流といった様々な情報を豊富な写真と共に掲載している。また、ホームページのプラットフォーム機能を強化するために、十数社の取引先のホームページに移動するリンクアイコンも掲載している。「話題を提供することで従業員全体のコミュニケーションを活発にすることに役立ててもらっています」と梶房友紀常務取締役は話した。

ホームページ作成システムには、ハローワークに掲載している自社の求人情報を自動的にホームページに取り込む機能も備わっている。ハローワークの求人情報の記載内容を修正した際は、その内容がそのままホームページにも反映されるので手間がかからないという。

2023年4月にSDGs宣言を策定 ホームページを通じて具体的な取り組みを発信

運送業と倉庫業を一体化して継続的な成長を実現 労働生産性を高めるためにICTを積極活用 梶運送(岡山県)
本社に掲出しているSDGs宣言書

梶運送は、国連の持続可能な開発目標、SDGsの取り組みにも力を入れている。2023年4月には会社の具体的な行動を発信するためにSDGs宣言を策定。ホームページでは、働きやすい環境づくり、ペーパーレス化の推進、ガソリン使用量の抑制、空き缶のプルタブ回収などの地域貢献の取り組みを、SDGsの目標達成のための具体的な取り組みとして紹介している。

「事業活動で多くの二酸化炭素を排出する物流業界の企業は、他の業界以上に環境負荷の低減に対する意識を持って、地球環境の保護に貢献しなければならないと考えています。運搬車両や物流施設のグリーン化、梱包材や段ボールのリサイクル推進などを通じて、事業を拡大しても、二酸化炭素の排出量を減らすことができるように取り組んでいきたい」と梶房社長は話す。

梶房社長は、着実な会社の成長と環境保護への対応を両立する上でデジタル技術の更なる活用が鍵を握ると考えている。AIを活用した配車や受注のシステムの高度化、二酸化炭素排出量を可視化するための数値化、膨大な物流データの分析にも関心を示している。「お客様のニーズをしっかりと受け止める対応力を強化するためにICTやデジタル機器を活用していきたい。現状に満足することなく、安心、安全、安定をモットーに従業員一同歩んでまいります」と梶房社長は力強く話した。

変化が激しい物流業界の動向に対応しながら、必要とされる企業として着実に成長し続けている梶運送。デジタル技術の活用は、更なる収益力の基盤強化とより魅力的な職場づくりに大きく貢献するに違いない。

運送業と倉庫業を一体化して継続的な成長を実現 労働生産性を高めるためにICTを積極活用 梶運送(岡山県)
梶運送の本社外観

企業概要

会社名有限会社梶運送
本社岡山県倉敷市片島町1026-1
HPhttps://kajiunsou.co.jp
電話086-465-0900
設立2001年4月
従業員数147人
事業内容一般貨物自動車運送業務、倉庫業、人材派遣業