2024年度の自治体型スマートシティ市場規模は前年度比1.2%増の799億1,300万円の見込
~デジタル田園都市国家構想交付金を契機にスマートシティに取り組む自治体が増加~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のスマートシティ市場を調査し、市場概況、参入企業の動向や将来展望を明らかにした。ここでは、自治体型スマートシティの市場規模、及び分析結果について公表する。
自治体型スマートシティ市場規模推移
1.市場概況
自治体によるスマートシティの取り組みは2010年代には始まっていたが、多くの事業が実証実験で終了していた。その要因のひとつが資金繰りである。スマートシティは事業計画やサービス開発など多大なコストが発生するため、取り組みに意欲的な自治体であっても単独で負担することが難しかった。しかし、国によるデジタル田園都市国家構想交付金(以下、デジ田交付金)が2022年度に開始されたことで自治体によるスマートシティの取り組みが加速した。デジ田交付金とは地方が抱える課題解決と活性化の加速を目指す自治体に対する資金支援である。事業に意欲的な自治体にとってデジ田交付金の役割は大きく、この交付金を活用することで、スマートシティ実現に向けて、大規模に事業を推進することが可能となった。
自治体型スマートシティでは、様々な分野のデータを統合するデータ連携基盤の活用が特徴であり、一部の交付金では、この基盤を用いたサービス創出が採択条件とされている。その結果、2022年度以降、データ連携基盤の導入数が急増した。2023年度には、これらの基盤やサービスの運用に加え、新規サービス拡充に取り組む自治体も見られた。また、交付金の活用を通じて新たに事業に参画する自治体も増えている。こうした取り組みの結果、2023年度の自治体型スマートシティ市場規模は事業者売上高ベースで、前年度比2.1%増の789億6,500万円に達した。
2.注目トピック
事業継続が最大の課題
自治体型スマートシティは事業を継続するために多くの課題を抱えているが、その1つが収益化の難しさである。現状、自治体型スマートシティの多くは、デジ田交付金など国の交付金に依存しながら進められていることから、国の政策に大きく左右される状況にある。
防災といった行政サービスは各自治体が担うことになるが、他の自治体と共同でシステム運用を行うことで1つの自治体で負担するシステムの運用保守やデータ連携基盤の整備などに関するコストを軽減させるといった取り組みが進められている。そのほかにもAIを活用したオンデマンドタクシーといった移動に係るサービスのように利用料を設けることが可能なサービスでは受益者負担の仕組みの構築に取り組んでいる。今後も事業を継続していくためには、収益化の仕組みを構築することが不可欠である。
また、様々な新規サービスを創出しても、十分な利用者を獲得できていない点も課題である。こうしたサービスを十分に周知できていないといった背景もあることから、新規サービスの創出よりも、まずは既存サービスの改善や利用者の獲得に重点が置かれるようになっている。
3.将来展望
2024年度の自治体型スマートシティ市場規模は事業者売上高ベースで、前年度比1.2%増の799億1,300万円を見込む。
既に取り組みを始めている自治体は、収益化を主眼に新たな事業創出よりも既存のサービスにおける利用者獲得に注力するため、大規模な投資は減少傾向にある。一方で新たにスマートシティに取り組む自治体にとっては先進的な自治体による既存のサービス事業や関連するノウハウの蓄積があることから、これらを参考にすることで比較的安価で、かつ短期間での事業が開始しやすい環境が整っている状況にある。こうしたなか、市場全体では大規模投資は減少傾向にはあるものの、新たにスマートシティに取り組む自治体が増えていくことで今後の自治体型スマートシティ市場規模は微増で推移すると予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2024年8月~10月 2.調査対象: スマートシティ関連ソリューションを提供するITベンダー 、自治体 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用 |
<自治体型スマートシティ市場とは> 本調査では自治体が主体となり、事業を推進しているスマートシティを自治体型スマートシティと定義し、市場規模は設計、コンサルティング、都市OS、データ連携基盤、各種の先端技術を活用したソリューション等から事業者売上高ベースで算出した。但し、民間事業者を主体とするスマートシティを含まない。 政府の政策におけるスマートシティは内閣府※によると「グローバルな諸課題や都市や地域の抱えるローカルな諸課題の解決、また新たな価値の創出を目指して、ICT 等の新技術や官民各種のデータを有効に活用した各種分野におけるマネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、社会、経済、環境の側面から、現在および将来にわたって、人々(住民、企業、訪問者)により良いサービスや生活の質を提供する都市または地域」と定義される。このスマートシティは実施主体によって分類することができる。 ※出所:内閣府ホームページ https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/index.html |
<市場に含まれる商品・サービス> MaaS、地域通貨、住民ポータル、データ連携基盤、コンサルティングなど |
出典資料について
資料名 | 2024年 国内スマートシティ事業における進展と今後の展望 |
発刊日 | 2024年10月31日 |
体裁 | A4 174ページ |
価格(税込) | 198,000円 (本体価格 180,000円) |
お問い合わせ先
部署 | マーケティング本部 広報チーム |
住所 | 〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2 |
電話番号 | 03-5371-6912 |
メールアドレス | press@yano.co.jp |
©2024 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。