※M&A実行当時の情報
譲渡企業情報 | 譲受け企業情報 |
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社名:式会社アンビュランス(大阪府) 事業内容:患者等搬送事業、訪問介護事業 売上高:約7.8億円(2023年10月期) 従業員数:正社員18名、アルバイト10名(2024年7月時点) |
社名:株式会社エスオーシー(大阪府) 事業内容:リネンサプライサービス、レンタルコスチュームサービス 売上高:約38.9億円(2024年4月期) 従業員数:正社員132名、パート・アルバイト448名(2024年4月末時点) |
大阪府岸和田市でリネンサプライ業を営むエスオーシーは、2023年4月に、「民間救急」事業を展開するアンビュランス(大阪府大阪市)を譲り受けました。異業種である2社がM&Aにより手を取り合うに至った背景と、PMIで得られたメリットや今後の展望について伺いました。(取材日:2024年5月29日)
日本PMIコンサルティングによる主なサポート内容 |
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・PMI定石についてのアドバイス ・現状分析のための従業員インタビューおよびレポート(報告書) ・100日プラン作成 ・経営ビジョンの検討(ミッション・ビジョン・バリュー/戦略・施策/新組織) ・経営ビジョン発表会サポート ・人事制度設計 ・ビジョン達成に向けたプロジェクトマネジメント |
コロナ禍での後悔から、早期に組織拡大をしたいと譲渡を決意
――M&Aを検討された背景を教えてください。
譲渡企業 アンビュランス 畔元様: アンビュランスは、医療・福祉における民間救急および介護タクシー事業に注力した事業展開を進めてきました。コロナ禍の際には大阪府内の複数の行政から委託を受け、全国初の消防との連携による救急搬送業務を実現しています。しかし、行政の仕事で手一杯になり、思うように事業を拡大する余裕がありませんでした。
私たちが事業のルートを拓くことができていれば、他の自治体でも役に立ったはずと悔やみ、どうすればスピード感を持って組織拡大を行えるだろうか、と探り始めたときに、日本M&Aセンターを知って相談したのが最初です。
譲受け企業 エスオーシー 善野様: 弊社はリネンサプライ業を営んでいますが、以前から介護タクシー事業への参入を検討していました。クリーニングの配送を担っているドライバーが65歳を超えて、体力的に集配作業が難しくなったのちの受け皿となる事業を模索していたのです。
そんな折、日本M&Aセンターからアンビュランスの話をいただきました。コロナ禍で社会的な使命を担っていた企業であることを知り、ぜひお手伝いをしたいと考えて、話を進めていただきました。
――異業種であることに懸念はありましたか?
畔元様: 窓口は違えども新たな取引先との関わりをともに生み出せるだろうという予感がありました。計画的にビジネス展開してこられた企業の規模感に、安心感もありました。
善野様: 懸念も、異業種という感覚もほとんどありませんでした。弊社は病院や介護施設の職員向けユニフォームのリネンサプライも手掛けていますので、医療・介護福祉を支えるもの同士として、根底ではつながっています。
客観的なインタビューと経営方針の策定で、運営の指標が見えた
――M&Aが成立したのち、日本PMIコンサルティングにPMIコンサルティングを依頼されています。アンビュランスの現状分析のために担当者が従業員インタビューを行いましたが、提出された報告書をご覧になっていかがでしたか。
畔元様: 第三者にインタビューしてもらったことで率直な意見が得られて、意義の高い内容でした。社長の自分が話を聞いても、従業員はみな良いことしか言ってくれなかったかもしれません。 思っていた以上にトップダウンの組織になっていた部分が見えるなど客観的な気づきもありました。
その後、見えてきた課題や取り組むべき施策をスケジュールに落とし込んだ「100日プラン」を提示してもらいました。組織体制の軟弱な部分や改善点だけでなく、弊社の価値を再確認できた ことは大きな収穫です。
――100日プランに沿って経営方針の策定にも取り組まれました。日本PMIコンサルティングの担当者も入って何度も打ち合わせを重ねたそうですね。
畔元様: ひとつはアンビュランスのミッション、ビジョン、バリューを決めました。会社の方向性を示すものが明確になっていなかったんです。ほかにも、これまで私が中心になって引っ張ってきた会社を今後どんな組織にしていけばいいか、どう作っていけばいいかを十分に検討できました。大変な作業でしたが、日本PMIコンサルティングに入ってもらったことで非常に進めやすかったです。
善野様: 働く人たちに響く言葉にするためには、畔元社長らしい言葉で表現しなければならないと思い、ミッション、ビジョン、バリューの内容にはこだわりました。畔元社長はこれからも経営者として皆を引っ張っていくわけですから、私たちは前に出ていくのではなく、畔元社長が仕事をしやすいように支えていく立場です。ですから畔元社長がこれまで積み重ねてこられた想いを言語化するのが一番大事だと思っていました。
日本PMIコンサルティング 西川: 経営方針を策定するうえでまず大切なのは、両社の歴史や事業の現状、経営の苦労や喜びなどを共有、理解することです。同席しながら感じたのは、両社が互いにリスペクトしあっている点でした。それは、異なる歴史の中で経験してきたご苦労や喜びを、互いに知ることに力を尽くされたからこそだと思います。
普段口にしない想いを発信し合った、経営方針発表会
――経営方針発表会を実施して、従業員の皆さんの反応はいかがでしたか?
善野様: エスオーシーを知っていただく初めてのチャンスでしたから、私は単純に楽しかったです。皆さんに弊社を知ってもらい、安心感を持ってもらうことを意識しました。
畔元様: M&Aをしたことはすでに知っていますから、今後に対する興味をもって参加していた印象です。これまで曖昧だった、ミッション、ビジョン、バリューを明確に示したことで、特異事案が発生するような場合でも、落ち着いて行動できる基準がひとつ頭に入ったと思います。
西川: 発表の場で主任の皆さまが熱い想いを正直に語ってくださいましたね。当初想定していた倍の時間がかかるほど盛り上がったのが印象的でした。
畔元様: イベント救護の担当者はこの活動を全国に大きく広げていきたいと語ってくれましたし、現在の医療の中に救命士をどうつなげればより患者さんのためになるかといった想いを語ってくれた主任もいました。彼らはアンビュランスが好きで、もっとどうにかしたいと思っているんですね。普段は口にしない想いを発信し合えた意味は大きいです。
経営方針発表会以降、一人ひとりが責務を意識して動き始めました。 そこがアンビュランスの弱みの部分だと思っていたので、自分のカラーを出した仕事ができていることに変化を感じています。会社を売り込むのではなく、個人を売り込むようにと常々言っているのですが、今後も個人が活躍できる場を支援していきたいですね。
PMIのプロが伴走することで両社がフェアにつながった
――M&Aから約1年が経ちました。日本PMIコンサルティングの伴走へのご感想は。
善野様: M&A後の手順が明確になって非常に助かりました。過去に2社、事業だけを譲っていただいたことがありますが、今回のような株式譲渡は初めてでしたから、自分たちで進めようとしたら手探りになっていたでしょう。日本PMIコンサルティングを導入するということは、M&A 後の課題と目標を明確にし、互いのエネルギーを活かしつつ両輪となって走り出すための支えを得たに等しいと思います。
畔元様: 北PMIの専門家が第三者の目線で牽引しながら、クッションの役割も担ってくれました。もしエスオーシー主導でPMIに取り組んでいたら、納得できない部分があっても言いづらい場面が出てきたかもしれません。
善野様: 私たちには決してそんな思いはありませんが、企業を譲り受ける側の傲慢さみたいなものが、日本PMIコンサルティングを入れたことでなくなったのではないかと思います。
もしも自分たちで進めていたら、どこかで譲受け側の都合の良いほうを選択する場面があったでしょう。それは傲慢さにつながる。そこを減らすことが、M&Aを成功させる条件の1つになってくるのではないでしょうか。
日本PMIコンサルティング 相良: 常に互いを思いながら活動するのは簡単ではありません。M&Aのスタートから尊敬の念を抱き合っていらっしゃるからこそ、PMIのバックアップを新たなパワーの創出に繋げていただいているのですね。
――シナジー効果をどう考えているか、今後の展望を含めてお願いします。
畔元様: シナジーの面で言えば、個人的にはM&Aに絶対必要な条件ではないと考えています。もちろん重要ですが、シナジーだけを求めるのではなく、アンビュランスを引き立ててくださっているエスオーシーに対する思いがそこにつながるように考えて動かなければと思っています。
善野様: 素晴らしい仕事をしてこられた会社ですから、アンビュランスには今後も極めていっていただきたい。それと、これは個人的な希望ですが……。クリーニング業は工場を持つため、自ずと地域密着型にならざるを得ないのですが、本来の自分はもう少し自由に動きたいという欲求があります。M&Aを通じて、アンビュランスが日本全国へビジネスモデルを持って打って出る姿が見たいという願望も抱いています。
畔元様: それは、アンビュランスがまさに目指している未来です。着実に前進して、各救命士が、個人個人で各地域へ飛んで行ける力をつけていきたいですね。
善野様: ぜひ新たな展開を見せてください。とても楽しみです。
西川 佳那(日本M&Aセンターグループ)