廃棄されるモノに新たな命を吹き込み、伝統工芸とアートの可能性を追求する株式会社ikiri。設立者の東村奈保(ひがしむらなお)さんが描くのは、日本の美意識「粋」を現代のプロダクトに融合させ、世界に発信することです。本コラムでは、職人やアーティストと共に創造的な挑戦を続けるikiriの思いと取り組みを語っていただきました。 |
「伝統工芸に携わる職人などの担い手が2050年代に現在から4割減り、地域によって消滅する可能性もある」という記事が、2024年5月5日の日経新聞に掲載されていました。
当社は日本の伝統工芸が生き残るためには海外展開や若者への訴求が急務だと考え、現代アートなど新しいデザインを伝統工芸の世界に取り入れた、これまでにない製品をつくっています。
日本の伝統工芸と現代アートの融合!
古いモノや廃棄されるモノに、現代アートのデザインで日本の伝統工芸である蒔絵(まきえ)をほどこした、スーパーアップサイクルな蒔絵万年筆が誕生しました。
蒔絵とは、漆器の表面に漆で絵や文様、文字などを描き、それが乾かないうちに金や銀などの金属粉を「蒔く」ことで器面に定着させる技法を言い、日本での蒔絵の起源は奈良時代までさかのぼります。
歴史ある伝統工芸と現代アートを組み合わせることによって、日本の技術を受け継ぎ、そして未来につなげます。
アーティスト大河 紀がデザインを担当
ART蒔絵第一弾として、アーティスト大河 紀さんにデザインをお願いしました。大河 紀さんは、 海外有名ブランドのメインビジュアルに抜擢されるなど、国内外で活躍する今大注目のアーティストです。
今回、大河 紀さんの素晴らしい作品の中から、「Lovely droppings world 02」を蒔絵のデザインとして採用させていただきました。
大河 紀(Nori Okawa)プロフィール
岡山県出身、東京都在住。
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒。
浮世絵の快楽主義的なテーマと技法にインスパイアされ、無機質な形と極端なディテールのコントラストが特徴であり、情緒的な作品を描く。広告ビジュアルやパッケージ、アパレルや装画など、 さまざまな媒体のアートワークを幅広く手がけながら、個展など国内外問わず精力的に作品を発表し続けている。
【大河 紀さんのコメント】
とても楽しみな気持ちで、今回の蒔絵プロジェクトに参加させていただきました。蒔絵は日本の伝統工芸の中でも特に繊細で美しい表現方法のひとつであり、その中に自分の作品が取り入れられることは大変光栄です。この機会を通じて、現代のアートと伝統工芸の融合の可能性を広げ、さらなる創造の世界を共に築いていけることを楽しみにしております。
スーパーアップサイクルについて
アップサイクルとは、廃棄されるはずのモノに、デザインやアイデアによって新たな付加価値を持たせて再利用することをさします。 ものとしての寿命が長くなることも期待できるため、製品のアップグレードと捉えることもできます。
当社はそのもう一歩先を目指して Super Upcycle Japan(スーパー アップ サイクル ジャパン)のビジョンを掲げました。
古くなった、価値のなくなった、廃棄予定のモノなどに、日本の伝統工芸やアートをほどこすことで高い付加価値をつけ、新品時よりも価値のある製品として生まれ変わらせます。ひいては、 日本の職人やアーティストの活躍の場を世界に広げ、深刻な成り手不足にも寄与出来ればと考えています。
ART蒔絵万年筆について
中古品の万年筆にアーティスト大河 紀デザインで、日本の伝統工芸である蒔絵を施した一品です。
今回、大河 紀デザインの漆塗りと蒔絵製作を担当する福井県鯖江市の漆琳堂さんにご相談したところ、今までの蒔絵の文様にないデザインに、「面白い!ワクワクする!」ととても共感していただきました。
同時に、初めての試みということで技巧的な面での問題点も多々ありましたが、それを乗り越え素晴らしい製品に仕上げていただきました。
匠の技によって生み出される大河 紀デザインの蒔絵万年筆は、制作本数限定30本となっております。
【株式会社漆琳堂 代表取締役社長 内田 徹さんのコメント】
今回の万年筆は、漆のパーツごとに塗り分けを行い、これまでにない独自の表現を試みました。 伝統的な図案にこだわらず、漆絵と蒔絵が融合したグラフィックを目指し、工程を一から模索しました。
漆の色味で表現されるグラフィックには奥行きがあり、新たな発見がありました。万年筆の塗りには特に注意を払い、刷毛むらが残らないよう工夫し、刷毛を置く場所と抜く部分を考えながら作業を進めました。
蒔絵を施すことで、新たな価値が万年筆に生まれるのが面白いところです。単なる印刷では表現できない、漆の手触り感と蒔絵の立体感をぜひ楽しんでいただきたいと思います。
◎仕様
全長:約156mm
キャップ外した状態:約146mm
胴軸径:約13mm
重さ:約30g
材質:アクリル系樹脂/漆/ペン先14金
本体:モンブラン マイスターシュテュック146 中古品使用
制作本数限定:30本
【万年筆本体にモンブラン146を使用】
大河 紀モデルのART蒔絵万年筆はすべて、中古品のモンブラン マイスターシュテュック146を活用しています。
モンブランを選んだ理由は、数ある万年筆の中で最も有名な万年筆だからです。
万年筆の最高峰として不動の人気を誇るモンブランだからこそ、日本の伝統工芸である蒔絵を施こした、スーパーアップサイクルな製品をつくるのに最適だと考えました。
【万年筆は全て、分解洗浄とペン先調整済み】
中古万年筆はすべて、ベテランリペアマンの手によってメンテナンスをおこなっています。
▼メンテナンス内容
分解洗浄組み立て直し/外装磨き/ペン先くい違い直し/ペン先開き直し/インク出調整/ひっかかり直し/書き出しかすれ直し/ペン先反り直し/ペン先・ペン芯伱間直し/ペン先筆記角度調整/ペンポイント形状直し/ペン先曲がり直し/ペン先字幅研磨調整
【それぞれの分野の専門家が集結!】
ART蒔絵万年筆は、その製造過程で各分野の専門家のサポートによって製品となります。
ikiriについて
株式会社ikiriは、古くなったモノ、価値のなくなったモノ、 廃棄されるモノなどに、日本の伝統工芸やアートという付加価値をつけて新たな製品として生まれ変わらせることによって、日本の伝統工芸を守り、その素晴らしさを世界に発信していきたい、という思いから設立しました。
会社名のikiriは、大阪弁の”イキリ”から発想しました。現代では否定的な意味で使われることが多い”イキリ”ですが、「粋」の動詞化「いきる」の連用形「いきり」からきており、「自分を粋に表現しようとする様や人」を指します。
江戸時代に生まれたとされる日本の美意識 「粋」の真髄を、日本各地に存在するたくさんの素晴らしい伝統工芸、アート、プロダクトの中から、見つけ、 組み合わせ、新たな命を吹き込む。「未来につなげたい日本の技術と粋を世界に発信していきたい」これが、会社名に込めた思いであり、当社の理念となります。
これまでの職歴の中でも、ものづくりのクリエーターの作品を展示販売するシェアスペースや、電子機器の廃棄物でアートをつくる長坂真護氏の専属ギャラリーの運営、アートプロダクトの製作(makuakeにて先行販売「100人のARTノート:100種類のアートから、お気に入りの一冊を」 https://www.makuake.com/project/100_onart02/ )などを通じて、数多くの職人やアーティストの方々と交流を深め、独創的・創造的な作品を創出できるネットワークを築いてきました。
今回リリースの、大河 紀デザインART蒔絵万年筆をスタートに、今後も素晴らしい日本の伝統工芸士、アーティストと連携しながら、世界のどこにもないワクワクするような商品を開発していきます。