昭和産業は大豆たん白の新ブランド「SOIA SOIYA(ソイア ソイヤ)」の販売を9月から開始した。プラントベースフード(PBF)の裾野を広げるため、代替肉に限らず、幅広く使えて食シーンを提案できることを目指したシート状の商品だ。味付けタイプと、大豆の味が好ましいとポジティブに捉えたプレーンタイプの2種類をそろえた。ミシュランの星を獲得している「鈴なり」主人の村田明彦氏にプロの視点からアドバイスも受け、肉の代替はもちろん、野菜の炊き合わせからエスニック、コースの締め、おやつからおつまみまで1つの素材であらゆるメニュー提案が可能になった。
山田真也技術センター兼プラントベースフードプロジェクトリーダーとフード事業部第グループの草野亜美担当課長に「ソイア ソイヤ」の開発の道のりと今後の展開について聞いた。
――「ソイア ソイヤ」の開発を振り返って。
山田 元々4年半ほど検討していた。きっかけはSDGsで、食料生産には限界が訪れるだろうと、植物肉を検討し始めた。PBFの裾野を広げるために、代替肉以外のメニューに使ってもらえる提案、素材開発に力を入れてきた。代替肉はいずれ必要になるという認識はあるが、日本の消費者は価格と品質にはシビアで、モドキでは難しいことが分かった。新しい切り口の提供が必要だと考えた。
草野 日本人は目も舌も肥えている。代替はやはり代替で、大豆ミートではなく、新しいメニューに使えて、食生活を豊かにできるものを検討した。当社は「穀物ソリューションカンパニー」として多くの穀物を扱っている。代替に限らず、幅広く使えるものをPBFで可能にし、食シーンを提案できる取り組みとして進めていくべきだと考えた。今回のように、ミシュランの星を獲得している「鈴なり」主人の村田明彦氏とのコラボというのは当社があまり行わない企画だった。
〈味付きとプレーンの2タイプ発売、1つの素材であらゆるメニュー提案可能に〉
――バー形状にした理由は。
山田 肉をイメージさせないシンプルなシート形状にした。とはいえ、カットしたものがいいという要望もあったので、プレカットタイプも用意している。
今後はバラエティ化を図っていく。ネーミングについては、大豆のソイと、プロジェクトとして推進するにあたりゴロが良い繰り返しで、素意という言葉も掛け合わせた。
草野 いい意味で昭和産業らしくない。ロゴも含めて、どこの会社の商品だろうと思ってもらいたい。産声を上げたばかりで、これからブランドを育てることになる。第2弾、第3弾も念頭に置いている。
――味や食感でこだわった部分は。
山田 2つのタイプで発売した。味付きタイプは、塩味とうま味を付与し、大豆の味が分かりにくくしている。どのような料理でも使える汎用タイプで、肉の代わりに使うこともできる。もう1つのプレーンタイプは、大豆の味が好ましいとポジティブに捉えた。大豆ミート特有のにおいをネガティブに捉えると、大豆臭は抑えるというマスキングの目線になりがちだが、料理によっては活かす方向もあると、村田氏から提案があった。
従来の粒状大豆たん白の製造ラインにプラスアルファの装置を導入し、繊維状のしっかりとした食感になるようにした。
草野 やはりおいしくなくては駄目なので、さまざまなアイデアを練り、村田氏からアドバイスをもらった。
バー状のPBFはどう使うか正解のない商品なので、プロの視点からの気付きがあり、開発視点でメニューのバリエーションが広がった。例えばかりんとうは全く考えてなかったが、こういう風に使ったらどうかとアイデアをもらえ、さまざまなものに使える食材と言えるようになった。1つの素材で、肉の代わりはもちろん、野菜の炊き合わせからエスニック、コースの締めまで提案できる。おやつやおつまみまでも広がる。
――注力する販路について。
山田 業態としては、外国の旅行者の多いホテルやレストラン、カフェなどが対象だ。和食と相性がいいことがわかっている。和食を楽しみに来日する外国人が多いのでチャンスだ。
草野 大阪・関西万博とインバウンドは火がつくポイントだ。日本に滞在する中で、食は切っても切り離せない。関西経済連合がピクトグラムでメニューにアレルギー表示を掲載する取り組みを行っているが、そういった取り組みが広がれば外食市場も活性化する。
〈大豆油糧日報2024年10月30日付〉