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相続や遺言によって遺産を取得した場合に、その取得した財産には相続税がかかります。

基本的には財産金額に応じて、一定の算式により相続税が計算されますが、相続が発生した家族ごとの特殊な事情により、相続税が免除されたり優遇されたりする制度も存在します。

この記事では、相続税が課税されない(つまり非課税となる)制度を活用して、相続税が1円も発生せずにすむ10の節税パターンを紹介していきます。相続税を余分に払いすぎないためにも、相続税の非課税枠をしっかり覚えてください。

この記事の監修者 税理士 近藤洋司

1 相続税が一切かからない「相続税の基礎控除」

相続税の趣旨は「富の再分配」であるため、相続財産が少ない人に税金を課すのは妥当ではないとして一定の非課税枠が定められています。これが「相続税の基礎控除」です。この相続税の基礎控除を超えた金額にのみ相続税がかかることになります。

相続税の基礎控除は、「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」の計算式で算出されます。

仮に、故人に配偶者と子供2人がいたとしましょう。 法定相続人の数は3人となりますので、相続税の基礎控除は 3,000万円+600万円×3人 = 4,800万円 と計算されます。故人の遺産総額が4,800万円以下であれば非課税枠の範囲内となり、相続税は一切かかりません。

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※相続人の人数ごとの基礎控除額

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2 生前対策によく利用される「死亡保険金」の非課税枠

生命保険をかけていた人が亡くなった場合、死亡保険金として生前に指定されていた受取人に保険会社から保険金が支払われます。

この死亡保険金は、相続税の対象となる財産に含まれるのですが、このお金は残された家族の生活の為のものということで、相続税の非課税枠が用意されています

計算式

生命保険の非課税限度額(非課税枠)=500万円×法定相続人の数

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死亡保険金は、もともとの保険の契約で受取人が家族に指定されているものなので、「相続財産ではない」という考え方があり、実はこの考えは合っています。指定されている受取人の方の「固有の財産」とされ、実際に相続人同士で財産の分割をする際は、この保険金は遺産分割の対象とはなりません。

ではなぜ相続税がかかるのか? が疑問となるのですが、多額の保険金があれば他の相続財産と同様、相続税の負担に耐えうるだろうという発想で「相続財産とみなして」課税される決まりになっているのです。

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3 定年前に亡くなった方の「死亡退職金」の非課税枠

企業に在職中の方が亡くなった場合、本来個人が受け取るはずだった退職金を、遺族の方が受け取れる制度のことを死亡退職金制度といいます。

遺族に死亡退職金が支払われるかどうかは、その企業の就業規則によって決められており、死亡退職金の規定がある企業でしか通常、支払われることはありません。

この死亡退職金は相続税の対象となる財産に含まれるのですが、このお金も死亡保険金と同様、遺族の生活保障の意味合いが強いため、相続税の非課税枠が用意されています

相続税の非課税枠の計算方法は次の通りです。

計算式

死亡退職金の非課税限度額(非課税枠)=500万円×法定相続人の数

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死亡退職金も死亡保険金と同様、相続財産ではなく受取人の固有財産となり、相続人同士で財産の分割をする際は、遺産分割の対象外です。

相続税法上は「相続財産とみなして」課税される決まりになっているのです。

4 「養子縁組」するとなぜ相続税の節税になるの?

上記、相続税の基礎控除で説明したとおり、法定相続人の数が多いほど、非課税となる基礎控除の金額が高くなることが分かります。

実は、法定相続人の数が多いと、基礎控除額が増えるということのみならず、相続人の人数が多いことによって「税率」が下がるということもあります。これは、各相続人の「法定相続分に応じた取得金額」が小さくなるので適用される累進税率の区分が変わることによるものです。
みなし相続財産としての生命保険金や死亡退職金の非課税枠も、相続人の人数が多ければ多いほど増加します。

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法定相続人の第1順位である子については、実子だけでなく養子も含まれます。
これが、「養子縁組」が相続税の節税になる理由です。

ただ注意しなくてはならないのが、税法上では法定相続人に含める養子の人数に制限があり、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までと定められています。

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ただし、節税だけを狙った養子縁組は税務署に否認される可能性があるだけでなく、親族間の感情的なもつれを引き起こす危険がありますので、慎重に考慮して決断しましょう。

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5 相続税の節税に大きなインパクト「小規模宅地の特例」

相続財産のうち不動産、特に土地については相続税法特有の複雑な計算によって、評価額を算出します。この土地の評価については、誰が何の用途で使用していたか? によって大幅な評価の減額を受けられることがあります。

一例ですが、預金などは一切相続できずに自宅不動産だけを相続した同居の家族は、相続税が支払えずに自宅を売却せざるをえない状況に陥るケースがあります。そのような状況を防ぐために、「小規模宅地等の特例」という優遇措置が用意されています。

土地の評価額を最大80%も減額することができる制度で、適用前に基礎控除を超えていても、適用後には相続税額が0円となるケースも多数あります。

この小規模宅地等の特例を使う場合には、相続税の申告期限までに遺産分割を確定させて、税務署に申告書を提出する必要があります。

ただし、減額幅が大きい分、適用できるかどうかの要件はしっかりと確認する必要があります。税理士でも判断に迷うようなケースもあるため、適用にあたっては十分に注意してください。

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6 配偶者への相続は1.6億円まで無税「相続税の配偶者控除」

相続税は、遺産の金額に応じて税額が決まり、実際に財産を受け取った割合に応じてその相続税額を負担するのが基本的なルールです。しかし、「配偶者」が相続する財産については、次のような理由から、大幅な税額控除の優遇措置がとられています。

  • 同一世代間での財産の移動であり、次の相続で再び相続税が課されること
  • 残された配偶者への生活保障が必要なこと
  • 財産形成において配偶者の貢献もあったこと

この配偶者控除を使う場合には、相続税の申告期限までに遺産分割を確定させて、税務署に申告書を提出する必要があります。

相続税の配偶者控除とは?
配偶者が財産を相続する場合、財産評価額が1億6000万円もしくは法定相続分までは非課税になります。

【実際に相続する財産額が1億6000万円または法定相続分以下】
相続税の納税は発生しません

【実際に相続する財産額が1億6000万円を超える】
法定相続分までは相続税はかからず、法定相続分を超える場合にはその超過金額について相続税がかかります

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7 障害者が相続する場合の優遇措置「相続税の障害者控除」

相続人の中に障害を持っている方がいる場合、生活保障としての意味合いで、相続税額の控除が受けられます。この控除は、障害者が相続した分の財産だけではなく、その扶養義務者が相続した財産からも控除されます。

控除される金額は次の通りです。基礎控除や配偶者控除に比べて金額が小さいと感じるかもしれませんが、こちらは「相続税額」から控除するため、かなり大きな効果が見込めます。

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障害者控除により相続税が0円となる場合、税務署への申告書の提出は必要ありません。配偶者控除により相続税額が0円となる場合と取り扱いが異なりますのでご注意ください。

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8 未成年者が相続する場合の優遇措置「相続税の未成年者控除」

相続人の中に未成年者がいる場合、成人するまでの生活保障としての意味合いで、相続税額の控除が受けられます。この控除は、その未成年者が相続した分の財産だけではなく、その扶養義務者が相続した財産からも控除されます。

控除される金額は次の通りです。

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税務署への申告については、障害者控除と同様、未成年者控除により相続税が0円となる場合、税務署への申告書の提出は必要ありません。

9 相続が連続した場合の優遇措置「相次相続控除」

短期間に続けて相続が発生した場合、同じ財産について二度続けて相続税が課せられることになります。このため10年以内に2回以上の相続が発生し、相続税が課せられる場合は、前回の相続税のうち一定の割合を、今回の相続税額から控除することが認められています。

なお、この相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)の適用を受けられることができるのは法定相続人に限定されます。

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10 相続税の対象とならない「非課税資産」

相続税は、基本的には被相続人(亡くなった人)の名義の財産すべてにかかります。別の名義でも実質的に被相続人の財産であれば、それも相続税の対象となります。財産は、被相続人が亡くなった時点を基準にします。

ただし例外があり、公益性や社会政策的見地あるいは国民感情などの理由で、課税するのにふさわしくないとして相続税の対象にならない財産もあります。これを「非課税財産」といいます。

非課税財産であっても、投資目的で所有している金の仏像や骨董品などは、祭祀用ではなく投機目的とみなされ、課税対象となることもあるので注意しましょう。

日常礼拝をしているもの死亡前から所有していた墓地・墓石、霊廟、仏壇、仏具等※純金製の仏壇や骨董品など高価なものは除く
寄付財産相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定法人に寄付したもの
公益事業用の財産寺社の境内地など、公益を目的とする事業に使われることが確実なもの

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11 まとめ

いかがだったでしょうか? 非課税枠をうまく活用できれば、相続税を大幅に軽減できたり、場合によっては相続税を0円にできます。今回ご紹介した非課税のルールについては、適用の判断や申告書の提出要件などまでしっかりとチェックして、ムダな相続税を払わなくて済むように情報収集してください。
(提供:相続サポートセンター

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プロフィール
税理士 近藤洋司

相続サポートセンター(ベンチャーサポート相続税理士法人) 税理士。昭和60年生まれ、愛媛県出身。
大学卒業後、不動産会社に就職。その後、税理士業界に転職。
評価する税理士によって差のでる、不動産の評価に強い。「全く同じ不動産はない」が口癖。わかりやすく、丁寧な説明でお客様からの信頼も厚い。