近年、日本の紅茶市場では、はちみつ紅茶の人気が高まっている。専門店から紅茶メーカーまでさまざまな商品を展開し、定番フレーバー化が進む。菓子やケーキを食べるよりもカロリーが低く、時間やシーンを気にせずに楽しめるため、スイーツの代替やご褒美需要の受け皿として選ばれている。
日本市場のはちみつ紅茶カテゴリーにおいて、パイオニア的な存在が、スペインの老舗はちみつメーカーが手がける「Granja San Francisco(グランハ・サンフランシスコ)」だ。2006年から日本への独占輸入、販売を行うグランジャポンの星野マチ子氏に話を聞いた。
――「グランハ・サンフランシスコ」について
1934年に創業したスペイン最大の老舗はちみつメーカーが展開するブランドだ。グランハ・サンフランシスコとは、スペイン語で“聖フランシスコ”を意味し、聖フランシスコは自然界の守神で、“グランハ”はスペイン語で“農場”を表す。このはちみつは自然界の守神、聖サンフランシスコが見守る農場で大切に作られた良質な商品という意味が込められている。
スペイン料理には砂糖をほとんど使わないので、現地ではデザートで甘みを楽しむ習慣がある。「グランハ・サンフランシスコ」は、老舗のはちみつメーカーが手がけており、スペイン各地の代々続く養蜂家が大切に育てた天然はちみつにこだわって使用している。他メーカーのはちみつ紅茶に比べて、より濃く、甘い味わいが特徴だ。茶葉はスリランカ産を使用している。
――はちみつ紅茶との出会いは
20年程前にスペインに留学していた時、バルセロナのスーパーマーケットで見つけた“Té(お茶)”という文字に惹かれて購入した。よく見ると、Té con miel(はちみつ入り)とあり、ティーバッグの中にはちみつが入っているなんて面白いと思い、実際に飲んでみたところ、その美味しさに惚れ込んでしまった。
――どのようにして日本へ輸入することになったのか
日本から遊びに来た友人にスペイン土産として「グランハ・サンフランシスコ」を勧めたのがきっかけだ。その友人が帰国し、はちみつ紅茶を配った相手の中に雑貨屋を営んでいる方がいて、「はちみつ紅茶を売りたいのでメーカーにつないでほしい」と頼まれた。
バルセロナにNutrexpa(ヌトレシュパ)社の本社があったので勢いのまま飛び込んだところ、たまたま海外の輸出部門を担当する方がオフィスにいらっしゃって、笑顔で迎えてくださった。
メーカー側も日本に売りたいと思っていたタイミングだったので、一般人だった私を受け入れてくださり、「可能性があるならやってみよう」と話がまとまった。
最小注文数の300ケース(3600箱)を取り付けて帰国した。とはいえ、具体的な販売計画はなかったので、何かとっかかりがほしいと思っていたところ、新聞で起業塾の記事をみつけ、町田商工会議所の起業塾の一期生となった。そこから近隣の飲食店さんや雑貨屋さんとのつながりができた。
Té con mielのマーク(ブランド)Granja San FranciscoとJapón(日本)をつなぐ架け橋になりたいという思いから、2つの文字を合わせて、社名をGranjapon(グランジャポン)とした。
――その後、どのようにして売り上げを伸ばしてきたのか
20年前の日本にはちみつ紅茶はなかったので、完全に口コミで広がっていった。当時はティーバッグの商品に600円は出さない時代と言われたが、これからはECで買い物をする時代がくると確信していたので、ウェブサイトでブランドの世界観を表現し、オンラインショップも開設した。
すると、芸能人やブロガーの方が紹介してくださるようになり、徐々に売り上げが伸びていった。現在でははちみつ紅茶、はちみつカモミールティー、はちみつミントティーの3種を取り扱っている。
――主な販路は
輸入専門店とECを中心に展開している。コロナが明けてからは、海外旅行の土産カタログでも人気だ。輸入を始めた当時は3600箱と聞くと山のような数量だと感じていたが、今ではあっという間に売れる。
――苦労したことは
売り上げに伸び悩む時期もあったが、「グランハ・サンフランシスコは、はちみつ紅茶だけど、はちみつ紅茶ではない(それ以上に価値がある)」というファンの方の声があり、ここまで続けてくることができた。
2017年頃には、メーカー側から突然、商品の製造をやめると言われたこともあった。当社の危機ともいえる事態で、急いでスペインへ向かって説得し、何とか作り続けていただくことになった。
この20年の間、振り返ればさまざまなことがあったが、「グランハ・サンフランシスコ」から広がるひとときの幸せな時間を多くの方へ届けられていることが嬉しい。今後も売り上げの規模に縛られず、唯一無二のはちみつ紅茶ブランドとして、その価値を深化させていきたい。