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「地元に貢献する不動産売買・賃貸・開発のトータルプランナー」を掲げる長井住宅工業株式会社(群馬県高崎市)。業績を拡大し続ける中で、顧客の氏名、住所、物件情報、成約データなどの膨大な顧客情報の管理が長年の課題となっていた。しかし、ネットワークに接続できるハードディスクに保存したデータを、社外からパソコンやスマートフォンなどを通じて活用できる「NASシステム」をはじめとするICTの導入により、業務の効率化とセキュリティを両立し、信頼性と競争力を高めた。(TOP写真:NASシステムの導入により、部門間の連携もよりスムーズにスピーディーになった)
「顧客データの漏洩、消失は困る」情報保護システムの構築を最優先事項に
長井住宅工業は、「地域に密着した街づくり」をテーマに、総合不動産業者として、迅速で信頼できるサービスの提供を心がけている。分譲及び売買事業、賃貸事業、メンテナンス事業、入金管理業など多数の部門を設置し、チームワークの良い連携で顧客の満足を得られるサービスを実現し、地域に根付いた信頼を得てきたという。長井昭雄代表取締役は「お客様の信頼を得るためにも、顧客情報データが漏洩(ろうえい)したり、消えたりするのは困る」と考え、10年ほど前から最優先事項としてセキュリティシステムの構築を模索してきた。
導入していた不動産業界向けのクラウドシステムでは、セキュリティ対策のほか、サーバーやネットワーク構築などの特別な手配の一切が不要であり、会社としても重宝していた。ただ、このシステムでカバーできないエクセル、ワードで作成した資料を適正に管理するにはどうすればよいのかが課題として残されていた。また、長井住宅工業では、すべての物件について「入居後」「退去後」のほか「土地の境界」に至るまで写真や動画で撮影している。一つの物件、現場で20枚~50枚の写真や動画を保存するといい、膨大な量にのぼる不動産物件の写真や動画の保存管理が解消されないまま。試行錯誤の上、2021年末ごろ、長井住宅工業はNASの導入に踏み切った。
必要な契約書面や図面を「社外からいつでも確認」 定期的なバックアップでデータの保存管理も安心
NASは、外付けHDDに比べて膨大な量のデータを保存できる記憶装置のことだ。外部からVPN接続を経由してネットワークに接続できるようにしたため、パソコン、スマートフォン、タブレットなど複数のデバイスから同時にアクセスして、データの保存・読み出しを可能にした。
日頃、長井住宅工業では、社員のパソコン画面に共有フォルダをつくり、画像や動画、図面などのデータを保存するようにしている。共有フォルダ内のデータは、全ての社員が閲覧できる。長井社長は「必要な契約書面や図面を、社外からいつでも確認することができるようになった。勤務時間の半分以上は社外で仕事をしているので非常に助かっている」と話す。データ保存に関しては、NASに不具合が生じたとしても、別のハードディスクにデータを定期的に自動でバックアップしているので安心だ。
さらに、長井住宅工業では、無線LANアクセスポイント、VPN接続、セキュリティ対策、端末管理などの複数の業務用ネットワーク機器を、一つのダッシュボードで一元的に管理するネットワーク管理ソリューションも導入した。これに伴い、「社内にいる時と同じ感覚」で、外部からインターネットを通じて操作することができる。
リアルタイムに共有フォルダで確認 部署間の連携がさらに強化
強みとする「チームワークの良い連携」は、NASシステムの導入でさらに強化された。不動産物件の現場で働く営業部門と社内の管理部門との間で、共有フォルダに入った最新データを活用しあい、効率的な連携を取った。
営業担当者が物件の写真を撮影して共有フォルダに保存すると、管理部門の担当者が1枚のファクトシート(物件の特徴や制限、地勢などを記載した資料)に加工し、自社ホームページにリアルタイムで情報をアップする。また、夏の季節には、社内のメンテナンス部門のスタッフが賃貸アパートの建物周辺の写真を確認して「除草が必要」と判断し、巡回している清掃担当社員に連絡して除草作業を指示するなどの迅速な対応ができる。現場と本社の連携が強化され、作業の効率が飛躍的に向上した。
投資不動産のシミュレーション等社外秘のデータを持ち出すことができず、本社に戻って仕事をしていたがNASのおかげで出先でも可能になった
長井社長は、投資不動産の利回りを計算するシミュレーションを作成する際、社外秘のデータをノートパソコンに保存して外部に持ち出すことは紛失リスクがあると考え、NASシステムで保存することにした。NASシステム導入前には、いったん本社に帰ってから社外秘のデータを打ち込んでシミュレーションを作成していたが、最近では出張先から本社への移動中にノートパソコンからNASシステムにアクセスし、作成している。社外での空き時間に作業が進められることにより、経営判断の迅速化が図られ、業績の向上に寄与している。
スキャン機能による重要事項説明書等の書類のデジタル化や、多様な用紙への印刷機能を生かしたファクトシートの作成等、オンデマンドプリンターが活躍
不動産業界ならではの活用法もある。土地の調査に必要な都市計画基本図や水道管網図、道路台帳図などは、インターネットから閲覧できるサービスが地方自治体で普及しつつあるが、図面の精度が低く見にくいという。紙で入手した方が見やすく、これらの図面をPDFにして共有フォルダに格納している。必要な時にいつでも共有フォルダから取り出せるというわけだ。
不動産取引で使用した重要事項説明書や契約書、関連書類については、業者によっては10年間または20年間保存している場合が多い。長井住宅工業でも、こうした契約関係の書類を全て倉庫に保管してある。これらをPDF化すれば、過去の契約書をわざわざ倉庫から探して持ってくるような面倒な作業は不要となり、作業効率が上がるだろう。
さまざまな特殊素材で印刷できる最新のオンデマンドプリンターを活用。簡単に貼れてはがしやすい粘着紙でファクトシートを印刷して本社前の掲示板に貼るなど、事務作業の工夫にも余念がない。
長井住宅工業は、NASを活用したプライベートクラウドシステムの導入により、セキュリティ対策と業務効率化の両面で大きな成果を上げた。2024年1月1日から電子帳簿保存法改正により、経理関係の電子取引データの電子保存が義務化された。今後はスキャナーを活用し、経理書類をPDFや画像データに加工して、共有フォルダに集約していくという。
細部にこだわった新社屋の設計 地域の人が集まる場所にするため、キッズルームやプロジェクターを設置
長井住宅工業は事業拡大に伴い、2021年9月に新社屋へ移転した。ソファでくつろぎながらアニメ映像を見て楽しめる「キッズルーム」やガラス張りの個室を設けたほか、大画面のプロジェクタースクリーンも設置した。運動会などの地域イベントの試写会など地域の集いの場となるイベントを企画する予定だ。長井社長は「いろんな家族構成やシングル、カップルの方が来店される。今まで以上に気軽に、くつろぎながら相談していただけるよう、細部にこだわり設計した社屋です」と胸を張った。「日々ご来店いただくお客様の様々な思いが、それぞれのお客様にとって素晴らしい物語(STORY)として結実されますよう願い、1件1件のお取引に際し、全力でご対応させていただきます」(長井住宅工業のホームページから)。長井社長の新社屋に託した思いが結実するのはこれからだ。
企業概要
会社名 | 長井住宅工業株式会社 |
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本社 | 群馬県高崎市新保町25-1 |
HP | https://smilekun.com |
電話 | 027-352-0366 |
創業 | 1977年12月 |
従業員数 | 16人 |
事業内容 | 不動産のコンサルタント業、売買・仲介・分譲開発・定期借地・事業借地企画管理、アパート・マンションの企画・管理・斡旋業など |