パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda(デューダ)」は、20~60代の転職を検討しているビジネスパーソン500名と企業の中途採用担当者500名を対象に「生成AI」をテーマに調査を行った。この結果、企業の「生成AI」活用割合は約6割となり、未活用企業でも5割が今後導入を検討していることがわかった。また、個人の活用は2割にとどまったが、転職後の活用ニーズは5割を超えていた。
「生成AI」は、2023年の対話型AI「ChatGPT」の登場を皮切りに、ビジネスシーンで高い関心を集め、今年も関連ニュース等が連日のように報道されるなど、引き続き注目を集めている。そこで今回、最新の「生成AI」活用の概況と転職市場における実態を明らかにするため、転職を検討しているビジネスパーソン(以下、個人)と、企業中途採用担当者(以下、企業)へ調査を実施。これらの結果を、dodaキャリアアドバイザーとdoda編集長の考察・アドバイスを通じて解説する。なお、生成AI活用とは、すでにあるデータを学習し、人間が用意した指示に従って新しいものを作り出すAI(人工知能)技術のこと。調査では、画像、テキスト、動画、音声、デザイン、ソースコードなどの作成を生成AI活用と定義している。
企業に対して、生成AIツールの活用の現状を確認したところ、全体の59.6%が活用していることが明らかになった。業種別では、上位から「IT・通信(73.0%)」、「金融(70.7%)」、「メーカー(68.8%)」と並んだ。
現在生成AIツールを未活用の企業に対して、今後の活用予定を聞いたところ、47.5%と半数近くの企業で活用を検討していることがわかった。
活用開始時期については、「時期は未定であるが活用を検討している」が23.8%と、検討している企業の中で最も高い割合となった。時期などの具体的な方針は立っていないが、活用は始めたいという心情の表れと推測する。
業種別でみると、特に1年以内の早急な活用開始を想定している業種は、「商社(25.0%)」、次いで「運輸・物流(23.5%)」となった。「運輸・物流」は、残業規制の観点から業務効率化が急がれ、また、「商社」はデータを活用する業務が多く煩雑なトランザクションの効率化ニーズから活用を早急に進めたい背景が見受けられる。
また、「doda」で扱っている生成AI関連求人の数は、昨年4月から今年6月の間で約24倍に伸長していることから、企業での生成AIに関わる人材のニーズが増えていることが確認できる。
企業にとって、生成AI導入の最も大きなハードルとなっているのは、「活用できる人材がいない」で38.2%。次いで、「コストが高い」が30.0%、「活用の仕方がわからない」が29.8%、「社内周知が困難である」が29.2%と約3割の僅差で続き、運用面での課題感を感じさせる結果となった。
実際に、業務における生成AIの運用方針・指針が定められている企業は、53.0%(認めている35.0%、禁止している18.0%)と半数にとどまっていた。
個人に対して、現在業務で生成AIを活用しているかを尋ねたところ、活用している割合は約2割(19.8%)にとどまることがわかった。
一方で、業務を離れた転職活動での生成AI活用状況では約3.5割(34.8%)にのぼり、業務上での活用状況を超える結果に。活用内容としては、上位から「自己分析(19.4%)」「自己PRの作成(17.8%)」、「職務経歴書の作成(15.6%)」と続いた。
さらに、転職後の企業で生成AIツールを「活用してみたい」と考えている個人は、計54.0%と5割を超えることが明らかになった。
業種別でみると、「IT・通信」を押さえ「建設業」がもっとも高くなっており、7割近い個人が転職後に生成AIを活用したいと考えていることがわかった。
転職先での生成AIの活用目的については、68.0%の個人が「業務の効率化を行い、ワークライフバランスを改善するために生成AIを活用したい」と考えていることが判明、活用目的の中で最多となった。
続いて個人に対し、転職先を検討する際に、生成AIツールを活用している企業としていない企業どちらの方が良いと思うかを尋ねたところ、生成AIツールを「活用している企業の方が良い・やや良い」の回答は計30.0%と、「活用していない企業の方が良い・やや良い」の回答の計15.0%と比べ2倍の差があることがわかった。
また、転職先として生成AIツールを活用している企業のイメージを尋ねたところ、「技術革新に取り組んでいそう(32.0%)」という印象が最も高く、次いで「考え方に柔軟性がありそう(31.6%)」、「働き方改革が行われていそう(29.2%)」と続き、従業員の働き方に対処しているという好印象を与えている結果となった。
様々な業界で人材難が叫ばれている現在、生成AIツールの活用は業務の効率改善が行えるだけでなく、個人により良い企業イメージを与える等ポジティブな影響をおよぼすことがうかがえる。
企業へ、個人が転職活動で生成AIツールを活用して自己PRや職務経歴書を作成することをどう思うかを尋ねたところ、「どのような活用方法であっても良い(36.0%)」、「活用した上で自身に合わせた調整を行うのであれば良い(52.4%)」と計約9割の企業がポジティブな印象を持っていることが確認された。
今回の調査結果について、dodaキャリアアドバイザーは、「生成AIは、調査結果のとおり、企業での活用は今後さらに広がっていくことがうかがえる。一方で、個人活用は2割にとどまる様子も見て取れた。生成AIが様々な業務効率を上げながら何らかの補助を担ってくれる秘書のようなツールだとすれば、個人も実際の業務に加え、自身のキャリアを考える機会にも活用を広げてもよいのではないか。企業も、9割が転職シーンでの活用に対して好意的に受け止めている」と分析する。「キャリアデザインの一つのシーンである転職活動においては、様々な生成AI活用例がみられる。今回の調査結果からは、自己分析や書類作成で活用される例が多いことがうかがえる。特に職務経歴書の作成は転職活動を進めるうえでハードルになっていることが多く、『doda』でも職務経歴書を生成AIを使って作成、dodaキャリアアドバイザーが添削する機能を公開、活用してもらっている」と、転職活動での生成AI活用をサポートしているという。
「キャリアカウンセリングなどで転職希望者とコミュニケーションをとる中で見知った例を挙げると、自身のスキルから適職診断を行ったり、面接対策として対象企業の想定問答集を用意してもらい、さらに質疑応答のラリーを生成AIを通じて行ったりしている人もいた」とのこと。「ただ、ここで一つ注意したいのは、調査結果からも企業の半数は『自身に合わせた調整を行う』ことを前提に良いとしている点。生成AIは必ず正しい情報を、またベストな内容を生成するわけではない。あくまで参考として捉え、事実との相違がないか、自分自身を正しく表す内容・表現になっているかを丁寧に確認することが重要になる」と、生成AIを活用する際の注意点を指摘した。
doda編集長の桜井貴史氏は、「今回は『生成AI』をテーマに調査を実施した。調査のとおり、生成AIに関連する求人は増加傾向をたどり、個人としての今後の活用意向の高まりや、企業イメージなどの調査結果からも、広くビジネスパーソンにとって重要なテーマということが改めてわかった。見方によっては仕事を奪う存在と捉えられることもあるが、調査結果からは求人数の増加や活用業務の拡大が見られ、生成AIが新たな活躍の場を広げるきっかけにもなることが示唆された」と、調査結果について解説。「生成AIは、膨大なデータを学習し、データから新しいコンテンツや価値を生み出す仕組みとなる。過去事例を学習できる点からも課題解決とは親和性が高い。だからこそ、これからのビジネスシーンでは、課題を解決する力だけではなく、課題を発見する力がより重要になると考えられる。あるべき姿/ありたい姿を描き、その目標地との隔たりは何かを考え抜く力、ともいえるかもしれない。その上で、AI等のテクノロジーを活用して、ありたい姿の実現に向けてより生産性高く課題解決をしていくというスタンスが、個人にとってより重要になると思われる」との考えを示した。「また、個人のキャリア形成においても、自分自身の『ありたい姿』を把握し、その目標に向けて行動するというスタンスは同様に重要だと考える。もし『ありたい姿』の把握を始めるにあたって、その壁打ち相手が必要な際やキャリアを考える難しさ、その他キャリアに関する悩みを持った際には、dodaキャリアアドバイザーに相談してほしい」とアドバイスしてくれた。
[調査概要]
調査名:「生成AI」活用調査
個人対象者:転職を検討している20~60代男女、会社員(正社員・契約社員)
集計対象数:500名(性年代均等割付)
企業対象者:全国の20~60代の中途採用の責任者及び選考に関わる人
集計対象数:500名
調査手法:インターネット調査
調査期間:2024年7月29日~8月1日
※集計時に小数点2位以下を四捨五入しているため、総計が100.0%とならない場合がある
パーソルキャリア=https://www.persol-career.co.jp/
転職サービス「doda」=https://doda.jp