備品
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資金繰りの悩みは経営につきものだ。回収のサイクルを早めたり、支払のサイクルに余裕を持たせたりする以外に、会社が保有している備品を売却して資金を得る方法もある。ここでは、会社の備品を売却した場合の経理処理や税務の注意点などをみていこう。

売却した場合の経理処理について

会社が保有している備品を売却した場合の経理処理においては、その備品を購入した際にどのように経理処理をしているか、決算書にどのように記載されているか、いくらで売れたか、関連する費用が発生したか、ポイントとなる。

購入時に全額費用計上している備品の場合

備品を購入した場合は、原則としては資産に計上し、使用できる期間にわたって費用化していくことになる。しかし、単価が10万円未満のものなど重要性の低いものについては、購入時や使用時に全額費用計上しても構わないとされている。
国税庁タックスアンサー

購入時に全額費用計上した備品を売却した場合は、売却金額がすべて収益となる。備品の売却を本業としている場合を除き、営業外収益の雑収入として計上すると考えられるが、購入と売却が同じ事業年度である場合や金額が少ない場合は、費用のマイナスとして処理することも選択できる。

また、備品を売却する際の、仲介者に払う手数料や売れる状態にするためにかかる費用を付属費用と言い、これらの付随費用は支払手数料など該当する費用で処理する。それは、購入時に費用として経理処理した備品は少額で重要性が高くないと考えられるためである。

固定資産として計上している備品の売却

貸借対照表上の固定資産として計上している備品を売却した場合は、まずは該当する固定資産をゼロまで減らし、貸借対照表から除く必要がある。そして売却時の貸借対照表における金額(「帳簿価額」という。)と売却額の差額は、固定資産売却損または固定資産売却益として記帳する。日本の会計基準においては、固定資産の売却は本業に関連しないとされるため、損益計算書上は営業外損益または特別損益の項目になる。

営業外損益と特別損益の使い分けについては、本業にかかわるもの以外で「臨時かつ巨額」であるものは特別損益となり、それ以外は営業外損益とするのが一般的である。この根拠は企業会計原則の注解による。この注解には固定資産売却損益は特別損益の項目として記載があるものの、金額がわずかな場合や毎期経常的に発生する場合は、特別損益としないと記載されている。

つまり臨時でない場合や巨額でない場合は、営業外損益になる。これ以上のルールはないので、あとは企業ごとに判断する。1円でも特別損益として計上する場合や、100万円でも営業外損益とする場合もある。

売却に際して発生した付随費用の処理については、固定資産売却益または固定資産売却損の計算に含めて、売却益の減少または売却損の増加として処理する。

パターン別仕訳方法

具体的な仕訳をみていこう。

消耗品費や事務用品費で処理した備品

消耗品費や事務用品費で処理している備品を売却した場合は、売却した時期により3種類の処理が考えられる。

・当年度より前の年度に購入した備品の売却
1)3年前に5万円で購入した机を1万円で売却した場合
(借方)/(貸方)
現預金 10,000円 / 雑収入 10,000円
全額を売却した年度の収益とする。

・当年度に購入した備品を売却した場合
2)当年度に5万円で購入し、消耗品費で処理した机を当年度に1万円で売却した場合
(借方)/(貸方)
現金預金 10,000円 / 消耗品費 50,000円
○○ 40,000円   /
購入と売却が同じ年度になされた場合は、結果として当年度の費用がマイナスされる。

ただし、重要性や会社の処理方針に沿って、同一の備品であるものの購入と売却を切り離して考える場合は、すべてを雑収入とする1)の方法で処理することも考えられる。

3)当年度に5万円で購入し、消耗品費で処理した机を当年度に7万円で売却した場合
(借方)/(貸方)
現金預金 70,000円 / 消耗品費 50,000円
          / 雑収入 20,000円
2)と同じく、購入と売却が同じ年度になされた場合は、結果として当年度の費用がマイナスされる。このとき、購入時より高い金額で売れているため、購入金額を超える部分は売却益として雑収入に計上する。

ただし、会社の処理方針に沿って、すべてを雑収入とする1の方法や、重要性が低いと考えられる場合は簡便的に全額費用のマイナスとする2の方法をとることも考えられる。

1)から3)の処理は、同一事象についての処理でありながら、損益計算書上の表示が異なる。損益計算書においては、上から売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益、という順番で並ぶ。2の費用のマイナスとする方法は、販売費及び一般管理費が減るため営業利益が増えることになる。一方、1や3の雑収入は営業利益より下の営業外収益であるため、営業利益は変わらず、経常利益が増えることになる。この影響を参考に、どの方法をとるか決めるとよい。

なお、毎回異なる処理を選ぶのではなく、一度方針を決めたら継続して同じ方法で処理することが望ましい。

購入時に固定資産計上したものの仕訳

購入時に固定資産計上したものを売却する場合は、帳簿価額と売却額の差額がポイントである。

1)購入時に備品として資産計上し、売却時の帳簿価額が5万円の机を、5万円で売却した場合

(借方)/(貸方)
現金預金 50,000円 / 備品 50,000円

帳簿価額と同額で売却した場合は、帳簿価額の分だけ現金又は預金で受け取り、固定資産が貸借対照表からなくなるという処理のみで完了である。

2)購入時に備品として資産計上し、売却時の帳簿価額が5万円の机を、10万円で売却し、仲介業者に手数料を1万円支払った場合

2-1 売却代金から手数料が差し引かれて入金される場合は以下となる。
(借方)/(貸方)
現金預金 90,000円 / 備品 50,000円
          / 固定資産売却益 40,000円

2-2 手数料を後で払う場合は以下となる。
入金があった時の仕訳
(借方)/(貸方)
現金預金 100,000円 / 備品 50,000円
           / 未払金 10,000円
           / 固定資産売却益 40,000円
払ったときの仕訳
(借方)/(貸方)
未払金 10,000円 / 現金預金 10,000円

2-3 手数料を先に払う場合は以下となる。
払ったときの仕訳
(借方)/(貸方)
前払費用 10,000円 / 現金預金 10,000円

入金があった時の仕訳
(借方)/(貸方)
現金預金 100,000円 / 備品 50,000円
           / 前払費用 10,000円
             固定資産売却益 40,000円

3)購入時に備品として資産計上し、売却時の帳簿価額が5万円の机を、3万円で売却し、仲介業者に手数料を1万円が差し引かれて入金された場合

(借方)/(貸方)
現金預金 20,000円 / 備品 50,000円
固定資産売却損 30,000円 / 

付随費用を引いたあとの実施的な売却金額と、帳簿価額の差額が、利益又は損失として計上されることを覚えておくとよい。

消費税はどうなる?

個人事業主や株式会社などの法人で、一定の売上を超えた場合または税務署に届出を出した場合は、消費税課税事業者といって、税務署に消費税の申告と納税(場合によっては還付)をしなければならない。備品を売却した場合も、消費税が課される場合があることに注意が必要である。

消費税が課される要件は、
・国内において
・事業者が事業として
・対価を得て行う
・資産の譲渡等 である。

1つ目の要件「国内において」は、どこで消費されるかを基準としている。備品を国内で販売した場合は要件を満たすが、海外に輸出する場合は消費税がかからない。2つ目の要件「事業者が事業として」は、個人事業者や株式会社は、行為がすべて事業のためと考えられるので、特に検討はなく満たしているものと考える。

3つ目の要件「対価を得て行う」は、発生する金銭の授受が何かの対価と考えられるかどうか、という意味である。たとえば寄付金は何かの対価として払うものではないので消費税はかからない。備品の売却は、備品の対価として金銭を受け取るものであるため、要件を満たす。

4つ目の要件「資産の譲渡等」は、備品またはサービスを提供することである。備品を廃棄したことによる損失は、備品を提供するものではないので消費税がかからない。備品の売却は、備品を提供するため、要件を満たす。

このように見ていくと、輸出する場合を除いて、備品の売却には消費税がかかると考えられる。これは個人やリサイクル店などに売却する際も同様である。その売却時の証拠として、現金のみでなく販売したことの明細等を忘れずに受領し、保管することが必要である。

なお、上記で具体的な仕訳を例示したが、これは「税込方式」によるものである。取引時の消費税を「仮払消費税」「仮受消費税」として認識する「税抜方式」の場合は、少し複雑になる。例示は煩雑になるため割愛するが、売却損益ではなく、売却金額すべてに消費税がかかることに注意してほしい。なお、消費税課税事業者でない場合は「税込方式」のみが選べるので、考慮しなくてよい。

貸借対照表に記載した固定資産を売却した場合のその他事務処理

貸借対照表に計上している固定資産を売却した場合、売却した日の証明と減価償却費の考え方により償却資産税申告の処理方法が多少異なる。

売却損益の計上時期

固定資産を売却した時点は、原則として資産の引き渡しがあった日である。ただし、契約において契約の効力発生日に譲渡する場合は、契約の効力発生日を売却日とすることもできる。いずれにしても、固定資産を売却した時点がいつなのかを明確にしておく必要がある。契約書、納品書、受領書といった書面で残しておくことが望ましい。

売却した年度の減価償却費

売却した年度の、当該固定資産の減価償却費の扱いは、2パターン考えられる。減価償却費は、その固定資産に関する費用を、便益を受ける期間に応じて費用化し、正確な期間損益計算をするための手続きである。これを厳密に運用すると、売却した固定資産についても売却までは使用による便益を受けていたと考える。よって、パターンの1つめは、売却直前までの減価償却費を計上し、計上後の帳簿価額と売却額の差を固定資産売却損益とするものである。
仕訳は以下のようになる。

パターン1 期首帳簿価額20万円、毎月の減価償却費1万円の備品を、期首から6カ月後に18万円で売却した場合

売却までの当期の仕訳(数値は合計)
(借方)/(貸方)
減価償却費 60,000円 / 備品 60,000円

売却時の仕訳
(借方)/(貸方)
現金預金 180,000円 / 備品 140,000円
           / 固定資産売却益40,000円

パターン2 期首帳簿価額20万円、毎月の減価償却費1万円の備品を、期首から6カ月後に18万円で売却した場合

2つ目は、当期の減価償却費はなかったものとして、期首の帳簿価額ベースで売却損益を計算する方法である。

売却までの当期の仕訳(数値は合計)
(借方)/(貸方)
減価償却費 60,000円 / 備品 60,000円

売却時の仕訳
(借方)/(貸方)
備品 60,000円 /  減価償却費 60,000円
現金預金 180,000円 / 備品 200,000円
固定資産売却損 20,000円 /

減価償却費と固定資産売却損を合算すると、いずれも当期の利益に与える影響はマイナス2万円であり、どちらの処理をとっても最終的な利益に差はない。減価償却費は営業費用であるため営業利益に影響を与え、固定資産売却損益は営業外損益または特別損益として表示される。

パターン1の方が減価償却費を多く計上するため、営業利益は少なくなり、その分固定資産売却損の金額は小さく、固定資産売却益の金額は大きく見せやすい。パターン2は期中いつ処理しても同じ結果になるため、損益計算書を操作しづらく、予算の管理もしやすいといえる。方針を決めたら、継続的に使用していくことが望ましい。

一括償却資産の売却:3年で均等償却の場合

取得価額が20万円未満の資産は、税務上「一括償却資産」といって、その資産の内容にかかわらず、また取得した月にかかわらず、3年で均等に税金計算上の費用にしていく方法をとることができる。貸借対照表に資産として計上する方法と、すべて消耗品費などの費用で処理して税務申告の際に調整する方法がある。

3年で費用化するというルールは、固定資産を廃棄したり売却したりしても影響がなく、3年にわたって費用化していくことになる。よって、消耗品費として処理しても、固定資産として計上しても、売却額は全額売却益とすることになる。

社員に売却する場合、みなし給与になるので注意

次に、社内の備品を社員に売却した場合どのような処理になるかを見ていく。

市場で買うより安価に売却するとみなし給与になる可能性がある

所得税法第36条において、給与以外の名目の金銭や無償の便益等の供与を受けた場合でも給与となることが規定されている。これは固定資産を安く従業員に売却した場合にもあてはまる。

たとえば、新品のパソコンを会社が30万円で購入し、直後に社員に10万円で売却したとすると、社員は20万円得をすることになる。この得の部分に課税しないことを認めてしまうと、同じ20万円の経済的利益を会社から得るとしても、金銭提供の場合と安価にパソコンを提供した場合とで所得税が変わってしまう。よって、パソコンを安価に得た場合の利益を給与とみなし、所得税を課すことにしているのである。

どのような価格で売却すればいいか、相談先は?

社員に固定資産を売却する場合、値段をいくらにすればよいのだろうか。それは、売却額が市場の価格等に照らして妥当であり、従業員への経済的利益の供与でないと言えればよいと考えられる。

たいてい、固定資産の売却は会社として不要になったものや、誤って購入してしまったものなどが想定される。そうした事情をくみつつ、中古品市場で購入した場合や、第三者に売却した場合に想定される金額と同額とするのがよい。これは目安であるため、個々のケースに対応するには税理士や、税務署に相談することも視野に入れてほしい。

特定の関係会社に売却する場合、グループ法人税制があるので注意

株式を100%保有する親会社と子会社の間の取引や、その親会社が株式を100%保有する子会社間(兄弟会社)の取引についてはグループ法人税制を適用する。これは、税務上の特別な扱いを定めたもので、経理処理には直接関係がない。

ここに、「資産の譲渡損益の繰延」と「寄附金・受贈益の益金・損金不算入」という扱いがある。親会社の意向で、黒字の子会社の資産を不当に安く赤字の子会社に売ると、黒字の会社の利益が減り、税金を抑えられることになるため、これを認めないこととしている。

グループ法人税制においては、グループ外の第三者に譲渡して初めて、税務上も処理が認められる。また、上記の従業員と同様、通常よりも安く譲渡した場合は、他法人への寄附金とみなされることがある。寄附金は、払った方は税金計算上の経費にできず、受け取った方は法人税が課されるが、グループ内であれば、この扱いはなく無視してよいという規定である。

会社の備品を売却する際の処理は条件により異なる

備品を売却した際の条件によって、さまざまな処理になることがお分かりいただけただろうか。損益計算書上の表示から、税務調査、従業員の所得税まで影響がおよぶので、正しい理解に基づいた処理と、必要な資料の保管をしてほしい。

文・新井良平(スタートアップ企業経理・内部監査責任者)