相続財産の中に有価証券が含まれていた場合、どのように相続税評価を行うかが問題になります。
有価証券とは、上場株式や公社債、投資信託などのことを指します。
金銭的な価値はありますが、現金や預金ほど額がはっきりしていません。
そのため、有価証券の種類に合わせて相続税の評価方法を使いわける必要があるのです。
この記事では、上場株式・公社債・投資信託の相続税評価方法について解説します。
上場株式の概要と相続税評価方法
株式には上場株式と非上場株式があります。
上場株式は、証券取引所で取引できる株式のことです。
一般的によく取引されている株式を想像するとイメージしやすいのではないでしょうか。
上場株式は株価などである程度の相場を把握することが可能です。
対して非上場株式は、証券取引所に上場していないため市場価格がなく、ネットや新聞などで相場を把握することが困難になります。
この相続税評価方法は、株式という大きな括りの中でも、上場株式についての評価方法になります。
上場株式は、具体的にどのようにして相続税評価を見定めればいいのでしょうか。
上場株式の相続税評価
上場株式の相続税評価方法は、1株の株価に所有している株数をかけるという至ってシンプルな方法です。
A上場株式とB上場株式があれば、2つの株式には別々の株価がありますので、それぞれで計算を行います。
流れとしても非常にシンプルではないでしょうか。
ただし、どの株価を使うかが問題です。
なぜなら、株価にはいろいろあるからです。
株価は常に変動しています。
10月1日と2日では、株価は変わっているのです。
ネットで株価を検索すると、刻々と株価が移り変わっていることがよくわかります。
このように常に移り変わる株価の中から、相続税評価のさいには何時の時点の株価を用いるかが問題になるのです。
相続税評価に用いることのできる株価は4種類。
4種類の株価の中から最も低い株価を使っても良いというルールです。
・1.課税時期の最終価格
・2.課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
・3.課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
・4.課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
課税時期は、亡くなった日のことを意味します。
株価の最終価格は、終値のことです。
月平均額とは、その月のすべての日の終値の平均になります。
なお、相続税申告の際は上場株式の評価証明書を作成して添付することになります。
ただし、証券会社に残高証明書を発行してもらい、その残高証明書で評価額がわかる場合は、上場株式の評価証明書は作成不要です。
残高証明書を添付すれば良いとされています。
最終価格がない場合
最終価格が存在しない場合は、課税時期前後の最終価格のうちで一番近い日の最終価格を使うことになります。
近い日の最終価格が2つあれば、2つの平均を利用するのです。
公社債の概要と相続税評価方法
公社債とは、債券のことを指します。
国の国債や自治体の地方債、会社の社債などがあります。
公共の債券と民間の債券を総称した呼び名として使われるほか、債券すべてを指す言葉として使われることもあります。
相続税評価の場面では債券全般のことだと解釈しておけば問題ありません。
公社債の相続税評価
公社債は、最終価格がある場合は最終価格で相続税評価を行います。
最終価格がないものは、公社債の発行価額をもとに相続税評価をするのがルールです。
ただし、公社債にはいろいろなタイプがあるため、タイプに沿って相続税評価を見直すことが必要になります。
◼︎個人向け国債
個人向け国債は、個人が購入できる国(日本)の債券です。
小さな額から購入できるため、個人が資産運用のさいによく活用しています。
金融機関の窓口などでも、個人向け国債という言葉を見かける機会は少なくないはずです。
個人向け国債は、亡くなった日に途中換金した場合に支払いを受けられる金額で相続税評価を行います。
財務省で提供している個人向け国債の中途換金シミュレーションを利用すれば、簡単に算出可能です。
◼︎利付公社債
利付公社債とは、公社債の中でも利払い日に決まった利息が支払われるタイプの公社債です。
利付公社債には上場している利付公社債と、上場していない利付公社債があります。
上場している利付公社債は、課税時期の最終価額に既経過利息(税金を引いた分)を足して評価します。
上場していない利付公社債は、発行価額に既経過利息(税金を引いた分)を足すことで評価が可能です。
◼︎割引発行公社債
割引発行公社債とは、利息を最初に引いて、そのぶんだけ安く発行される公社債のことです。
券面額が100万円で、利息分5万円を引いて95万円で発行する等の公社債がこれにあたります。
単純計算では、100万円-95万円で差額が5万円ですから、公社債が償還されると5万円分の利益になるというわけです。
割引発行公社債は基本的に券面額と発行価額の差が利息ですから、この5万円が利息でもあります。
割引発行公社債にも、上場しているものと、していないものがあります。
上場割引発行公社債は、課税時期の最終価格での評価です。
上場していない割引発行公社債は、発行価額に券面額と発行価額の差額を日数で按分した金額を足すことで評価を算出します。
投資信託の概要と相続税評価方法
投資信託とは、株や債券などで構成されており銘柄によって配分が異なります。
投資家は自分の気に入った投資信託の銘柄に投資し、分配などを受けます。
売買や途中解約なども可能です。
日本では非常に多くの投資信託の銘柄が取引されています。
投資信託の相続税評価
投資信託の相続税評価は、投資信託のタイプによって異なります。
◼︎日々決済型の投資信託
亡くなった日に解約した場合に支払いを受けられた金額で評価することになります。
また、相続税評価には基準価額が必要です。
基準価額は1万円あたりで公開されており、相続税評価では、課税時期前の最も近い日の課税価額を利用可能です。
投資信託の分配金は、税金を引いたうえで再投資されています。
亡くなった日までの未収分配金も評価額にプラスする必要があるため、注意しましょう。
証券会社に投資信託の資料請求を行い、税理士に相談することをおすすめします。
◼︎上場投資信託
上場投資信託は中途解約による換金ができないため、売買によって換金することになります。
上場株式と同じ方法で相続税評価を行います。
◼︎上場していない投資信託
亡くなった日に解約などを行った場合に支払いを受けられる金額が相続税評価となります。
なお、解約時の税金や信託財産留保額はマイナスすることが可能です。
投資信託の銘柄ごとに詳細な確認を行う必要があるため、証券会社への資料請求や税理士への相談をおすすめします。
まとめ
有価証券の相続税評価は、有価証券の種類ごとに行うことになります。
上場株式、公社債、投資信託でそれぞれ相続税評価の基本が異なるため、注意が必要です。
いろいろな銘柄を所持している場合は、証券会社などに資料請求を行い、銘柄を勘違いしないように注意することも重要になります。
有価証券の相続税評価は、一見してシンプルです。
しかし、銘柄や有価証券のタイプによっては、計算が細かになる可能性があります。
特に投資信託などは注意が必要です。
税理士や税務署の窓口に相談し、ミスなく進めましょう。
(提供:相続サポートセンター)