2023年度のこども関連ビジネスの市場規模(37分野計)は前年度比2.2%増の10兆6,962億円
~少子化進行や物価上昇による節約志向などの影響を受けつつも市場は拡大を維持~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のこども関連ビジネス市場を調査し、こども向け用品、こども向けサービスの各分野別の市場動向、参入事業者の動向、将来展望を明らかにした。
こども関連ビジネス市場(37分野計)の市場規模推移
1.市場概況
2023年度のこども関連ビジネスの市場規模は、事業者売上高ベース(但し、一部は興行収入ベース)で前年度比2.2%増の10兆6,962億円と推計した。
同市場は、コロナ禍に見舞われた2020年度に前年度比約10%減となったが、その後、コロナ禍での行動制限などのマイナスの影響が緩和されるにつれて、多くの市場分野において回復基調となった。2023年度については、「教育サービス・学用品分野」をはじめとする多くの市場分野において、物価上昇を背景とする節約志向や支出抑制意識の高まりの影響を受けて伸長率は鈍化するも、引き続き拡大推移となった。
同市場を構成する大カテゴリー6分野別(娯楽用品・レジャー、教育サービス・学用品、食品、衣料品、こども関連用品・サービス、保育関連サービス)の2023年度の市場規模を見ると、「教育サービス・学用品分野」を除く5分野では前年度を上回る結果となった。
2.注目トピック
こども関連ビジネス市場における主要3分野の概況
こども関連ビジネス市場を構成する37市場分野を大カテゴリー6分野別に分けた内、市場規模の大きい3分野は、「保育関連サービス分野」と「教育サービス・学用品分野」と「娯楽用品・レジャー分野」である。
まず、「保育関連サービス分野」については、同分野の大半を構成する「保育園市場」では、少子化進行の影響による利用児童数の減少(※)や新規開設ペースの鈍化などによって、2020年度以降、伸長率は鈍化しているものの、少子化対策や子育て支援の拡充に向けた公的資金の継続的な投入によって堅調な推移を維持している。「学童保育市場」は、2020年度に小学校の休校措置や在宅勤務導入の影響によって縮小に転じたものの、2021年度以降、利用する児童数の増加、民営施設の増加などによって拡大を維持している。また、民間学童事業者の中には、人件費をはじめとする運営費の上昇を背景に、価格改定を実施するケースも散見されたことも市場拡大の要因となっている。
次に、「教育サービス・学用品分野」では、当該分野において最大の市場規模である「学習塾・予備校市場」は、2021年度以降、回復基調にあったが、受験対策などの学習サービスの需要停滞や通塾に対するマインドの減退が大きく影響し、伸び悩みの状況にあると推察する。加えて、昨今の物価上昇によって、通塾を控える、或いは受講科目を絞るといった動きもマイナス要因となっている。また、「こども向け習い事教室市場」や「こども向けスポーツ教室・スポーツクラブ市場」においても、2020年度の大幅な市場縮小から順調に回復基調にあったものの、2023年度については「こども向け習い事教室市場」は物価上昇による家計圧迫の懸念から、節約志向の高まりや習い事の見直しなどの影響によって再び縮小となった。一方の「こども向けスポーツ教室・スポーツクラブ市場」は、「こども向け習い事教室市場」と同様に物価上昇による習い事の見直しというマイナスの影響を受けるが、子どもの体力向上や運動機会の重要性が再認識されている中、習い事の中でもスポーツ・運動関連の習い事は比較的安定した需要を維持し、増加での推移となった。
最後に、「娯楽用品・レジャー分野」では、2020年度に大幅縮小した「こども・ファミリー向け劇場用映画市場」、「テーマパーク・遊園地市場」、「ゲームセンター・アミューズメント施設市場」、「インドアプレイグラウンド市場」の4市場が2023年度も引き続き順調に回復しており、当該分野の復調を牽引している。
※出典:こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ」
3.将来展望
少子化進行による需要層の縮小に加え、物価上昇を背景とする節約志向や支出抑制意識の高まりの影響を受けつつも、共働き世帯の増加に伴う預かり保育等の需要拡大によって安定した推移が見込める保育関連サービス分野や、コロナ禍以降の需要回復から更なる拡大が期待される「娯楽用品・レジャー分野」などといった需要拡大が見込める分野に支えられ、2024年度のこども関連ビジネスの市場規模は前年度比0.9%増の10兆7,938億円と予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2024年4月~6月 2.調査対象: 子ども向けに商品・サービスを提供する事業者等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・eメールによる取材、ならびに文献調査併用 |
<こども関連ビジネス市場とは> 本調査におけるこども関連ビジネス市場とは、国内のこどもに向けた商品・サービスの37分野の市場を対象として事業者売上高ベース(但し、一部は興行収入ベース)で算出した。なお、対象となるこどもの年齢は分野によって異なるが、0歳以上15歳以下としている。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 1.娯楽用品・レジャー(玩具/家庭用テレビゲーム/こども向け出版物/こども向け映像ソフト(DVD・ブルーレイ)/ 幼児・こども用自転車/こども・ファミリー向け劇場用映画/テーマパーク・遊園地/ゲームセンター・アミューズメント施設/インドアプレイグラウンド)、2.教育サービス・学用品(学習塾・予備校/私立幼稚園/幼児英才教育/幼児体育指導/幼児・こども向け外国語教室/こども向け習い事教室/こども向けスポーツ教室・スポーツクラブ/幼児・学生向け通信教育/学習参考書・問題集/学童文具/学習机・椅子/ランドセル)、3.食品(育児用ミルク/ベビーフード/玩具菓子)、4.衣料品( こども・ベビー服/学生服/こども靴)、5.こども関連用品・サービス(ベビー用紙おむつ/ベビーカー/ベビーベッド・こども用寝具/チャイルドシート/こども写真館/携帯電話・スマホ(こども利用分)/こども向け防犯用品・サービス)、6.保育関連サービス(保育園/学童保育) |
出典資料について
資料名 | 2024年版 こども市場総合マーケティング年鑑 |
発刊日 | 2024年06月28日 |
体裁 | A4 396ページ |
価格(税込) | 198,000円 (本体価格 180,000円) |
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