目次
- 真空ガラスを売りたい一心で独立。窓のリフォーム効果を訴え、一般消費者向け事業に参入
- 女性ならではの視点でお客様の悩みを解決 潜在需要開拓へ 女性に優しい窓のリフォーム店目指す
- 収益の多くは社長が担当する建設会社向け資材販売 リフォーム事業強化へ女性来店のハードル下げる努力続け「窓」のショールーム開設
- 政府が窓の改修促進へ多額補助金 2023年はリフォーム売上比率が4割に急伸 競争激化に備えて事業体制強化
- 2014年からホームページ作成ツールを活用 タイムリーな情報提供に魅力 女性の美意識に訴える画面作りを試行錯誤 ホームページからの問い合わせ急増に手応え
- 新バージョンで機能追加も検討 「窓」の事業拡大はそのまま社会的貢献の役割拡大 SDGsを実践する従業員のモチベーションアップ
家業のサッシ、ガラス販売会社から独立して夫婦で設立したのが「窓」のリフォームを売りにする株式会社クリアだ。建設会社向けの資材販売・施工と一般消費者向けの窓を中心とした住宅リフォームに取り組む。少数精鋭で効率的な事業展開を可能にしているのが営業ツールとしてのホームページだ。10年前からホームページ作成ツールを使いこなし、窓の断熱効果に着目した政府の補助金政策も追い風に、インターネットを駆使した受注活動に新たな可能性を見出している。(TOP写真:窓のリフォームは近年、高い省エネ効果があることが認知されてきた)
真空ガラスを売りたい一心で独立。窓のリフォーム効果を訴え、一般消費者向け事業に参入
クリア取締役の林則子さんは、大学卒業後、地元のケーブルテレビ会社やテレビレポーターを経て、父親が設立したサッシ・ガラス販売会社に入社した。家業を手伝う中で、日本板硝子株式会社が開発した「真空ガラス スペーシア」のすごさを知って、事業意欲が湧いた。「これを売りたい」と。
「個人の住環境の悩みや要望に応えるのは、きめ細かな仕事だからこそ、女性の私にもできるかもしれないと独立するのに迷いはなかった。とはいえ、スペーシアは断熱効果が高いものの高額なため販売するのは容易ではなかった。一般的にキッチンやトイレに比べると窓はリフォームの緊急性は低く、後回しにされがちだった。しかし、スペーシアを導入したお客様はいずれも断熱機能による省エネ効果や結露を防ぐ清潔さ、遮音効果など導入効果に満足してくれた。
女性ならではの視点でお客様の悩みを解決 潜在需要開拓へ 女性に優しい窓のリフォーム店目指す
日本では既築住宅の7割がまだ単板ガラスといわれるが、それだけ潜在需要があるともいえる。近年は高機能な窓の製品化や二重窓化などリフォーム技術の進展で、その断熱効果や遮音効果、防犯機能などが注目を集めるようになってきた。林さんは「それでもまだまだニッチな世界。だからこそ専門店ならではの知識と技術で、お客様の悩みを解決したい」と言葉に力を込める。専門家しかできない仕事を売りにしており「価格競争はしない」方針だ。
経営方針は、「『窓』から暮らしと健康を守り、社会に貢献する」である。林さんの名刺には取締役の肩書はなく、「店長<クリアさんの窓の店>」と書かれている。本社の窓には「女性に優しい住宅リフォーム」と書かれ、女性に気軽に立ち寄ってほしいという姿勢を表している。
林さんともう1人の女性スタッフが、女性ならではの視点で顧客の相談をすべてこなしているのも男性主体の業界としては大きな武器となっているようで、「窓のリフォームの相談は増えている」と話す。
「主婦目線のリフォーム相談にきめ細かく応えられるのはウチの強み。最初は『なんだ女性か』と思われる男性のお客さまも、専門知識と現場をよく知っている対応力で信頼していただけている」という。
収益の多くは社長が担当する建設会社向け資材販売 リフォーム事業強化へ女性来店のハードル下げる努力続け「窓」のショールーム開設
クリアは、建設会社向け資材販売・施工事業と一般消費者向けリフォーム事業を展開しており、前者は元則社長が担当、林さんが後者を担当している。商圏は山梨県のほか首都圏や静岡県、長野県と広い。
窓リフォーム事業に注力したいという林さんの熱意で設立した会社だが、売上規模は建築会社向け資材販売が圧倒的に大きく、従来は8割を占めていた。林さんは一般消費者向けの「窓」のショールームを本社に併設した。窓の高機能製品を直接見て、相談に応じることのできるスペースを確保。「窓」に関する悩みを気軽に相談できるよう、女性の来店ハードルを低くする努力を続けてきた。
政府が窓の改修促進へ多額補助金 2023年はリフォーム売上比率が4割に急伸 競争激化に備えて事業体制強化
転機は2023年、環境省の補助事業「先進的窓リノベ2023事業(断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業)」がスタートしたことだ。断熱窓への改修や既築住宅の省エネ化を促すことで住環境の快適性向上とCO2削減効果を高めることを目的とし、2023年度補正予算で1,350億円を計上。断熱性能を向上させるガラス交換や内窓設置などの工事に一戸当たり最大200万円の補助金が支給されることになった。
市場は活気づいた。林さんは、政府が環境保全に果たす「窓」の役割の大きさを認識して多額の助成制度を新設したことを評価。「従来は後回しにされた『窓』が注目されるようになった。ようやく時代が追いついてきた」と笑うが、当然、参入企業は増え、顧客獲得競争の激化が予想される。
クリアは補助金効果で2023年度のリフォーム事業の売上高が4割に拡大。2024年はさらに伸びると見込んでおり、補助金申請担当者の増員や技術者の育成を強化。ビジネスチャンスを逃さないため、事業体制の増強を急ぐ。現在、従業員は女性4人、男性3人と少数精鋭だが、顧客とのやり取りや積算、発注、現場のスケジュール管理などの業務はすべて女性が担当するなど役割分担を徹底。20~30代の若手従業員が過半数を占めていて、若手もそれぞれやりがいを感じられる業務の流れができているという。
2014年からホームページ作成ツールを活用 タイムリーな情報提供に魅力 女性の美意識に訴える画面作りを試行錯誤 ホームページからの問い合わせ急増に手応え
林さんがリフォーム事業の営業ツールとして最も重視しているのが、自ら作成し頻繁に更新しているホームページだ。2014年にホームページ作成ツールを使い始めて以来、「タイムリーに情報をアップできる魅力」を強く感じた林さんは、たくさんの情報をいかに見やすく伝えられるかを試行錯誤。「ホームページの中でブログへのアクセスが一番多い」となれば、ブログの情報更新を熱心に行い、女性の美意識に訴えるきれいな画面作りを追求してきた。その甲斐あって、同業者からも「手作り感やスマートさを褒められることが多くなった」と嬉しそうに話す。もちろん、ホームページの出来栄えそのものより、営業ツールとしての機能を林さんは重要視している。
ホームページからの問い合わせは、2022年は100件ほどだったが、2023年は210件に急増した。そのうち「60件が受注に結び付いた」というから、営業ツールとしての役割を立派に果たしているといえそうだ。
利用しているホームページ作成ツールは、外部に依頼することなく高度な編集が簡単にできる。長年ホームページ作成を続けてきた林さんだが、「見て満足してもらえるホームページを作るにはコンテンツだけでなく商品知識や現場知識がしっかりないとだめ。もっとホームページ作成に時間を割きたいが、助手もほしいと考えている」
現在、一般社団法人板硝子協会のホームページでもクリアの施工事例が数多く紹介されており、取材協力のリンクからもホームページに訪れる方への施策となっている。
一般社団法人 板硝子協会 エコガラスの事例紹介ページ
働きやすい光と熱を 日照時間トップの地で窓リフォーム
https://www.ecoglass.jp/s_case/building/detail/building202112.html
白い内窓はエコガラス 短工期で悩み解消、心地よい家に
https://www.ecoglass.jp/s_case/reform/detail/reform202405.html
部屋と庭とを美しく繋ぎ 豊かさつくるエコガラス
https://www.ecoglass.jp/s_case/reform/detail/reform202301.html
(上記は、外部サイトです。予告なしにリンクが外れる事があります。ご承知ください)
新バージョンで機能追加も検討 「窓」の事業拡大はそのまま社会的貢献の役割拡大 SDGsを実践する従業員のモチベーションアップ
ホームページ作成ツールは2024年10月に新バージョンに更新する予定だが、「まだやりたいことができていない。もっと自由度もほしい」とメーカーへの要望もある。例えば、ホームページから見積要望を申し込めるが、顧客が品番を入力すればある程度自動で見積計算が可能になる機能も付加したいと考えている。
膨大な品数が短期間で入れ替わることもあり、実際には機能追加は容易ではないが、「検索の裾野もニーズも10年前と雲泥の差がある」という顧客の意識の変化に対応し、ホームページの新サービスで先行したいという気持ちは強い。
近年、SDGsへの取り組みをアピールする企業が増えているが、「窓の断熱化」は最も効率よくビルや住宅を省エネ化できることが認知され、クリアの事業はまさにSDGsの実践ともいえる。2023年秋に「やまなしSDGs推進企業登録企業」に認定されたが、「窓」に特化した事業拡大はそのまま社会的貢献の役割拡大を意味している。
林さんは「持続可能な会社作りに向けて心を一つにして進んでいけるわかりやすさが若手従業員のモチベーションにつながっている」と確信している。また、メーカーや仕入先、外注先との連携を深めながら顧客のために最善を尽くし、結果的に「三方よし」になることが株式会社クリアの事業継続の要であることを付け加えた。
企業概要
会社名 | 株式会社クリア |
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住所 | 山梨県甲府市青沼2-23-14 |
HP | https://clear-g.co.jp/ |
電話 | 055-226-8887 |
設立 | 2013年3月 |
従業員数 | 7人 |
事業内容 | ビル・住宅用サッシ、ガラス工事、住宅リフォーム全般、エクステリア工事 |