7月24日、いすゞ自動車は車両総重量を3.5トン未満に抑えることでAT限定の普通免許でも運転できる小型トラック「エルフミオ」を30日から発売すると発表した。積載量1.5トンクラスのトラック市場において経済合理性の高いディーゼル車の設定は国内初、初年度の販売目標は5千台、小口配送を中心とするラストワンマイル物流や小売業をはじめとする多様な自営業者のニーズに応える。いすゞ自動車は “ドライバーの裾野を広げる” ことで深刻化するトラックドライバー不足の低減に貢献する。
一方、国は社会資本整備の観点からこの問題に取り組む。道路空間をフルに活用した「自動物流道路」構想である。具体的には高速道路の路肩や中央分離帯、あるいは地下に輸送専用レーンを設置し、そこに自動輸送カートを走らせるというもの。昨年10月末、国土交通省の国土幹線道路部会は “高規格道路ネットワークに関する中間報告” に「今後10年での実現を目指す」ことを盛り込んだ。第二東名高速道路の新秦野と新御殿場間が実証実験ルートとして想定される。
自動物流はスイスが先行する。名称は “Cargo Sous Terrain”、文字通り “地下物流” の意で、2021年12月に地下貨物法が成立、2022年8月に施行された。トンネルの総延長は500㎞、時速30㌔、24時間体制で無人カートを走らせる。2031年までにチューリッヒとヘルキンゲン間の約70㎞、2045年までに全線の完成を目指す。英国でも西ロンドン地区の既存の鉄道敷地内に専用線を敷設、低コストリニアモーターカーによる完全自動運転による物流システム “MAGWAY構想” が始動している。
輸送量の増大、小口化、ドライバー不足、高齢化、慢性化した渋滞、道路施設の老朽化、そして、脱炭素からの要請など、従来型輸送システムの拡張と更新はほぼ限界であり、これは先進国に共通の課題だ。メーカー、業界、荷主による輸送力向上策や効率化対応の積み重ねは重要だ。とは言え、既存の道路インフラを前提とした対策だけでは追いつかない。言い換えれば、物流といった視点だけでは問題は解決しないということだ。社会はいかに持続可能であるべきか、それは国土、産業、暮らし方そのものの問題であり、その営みの中でモノやヒトの移動システムを捉え直す必要がある。地上、空、地下、海を未来からの視点で立体的に捉え直すことから発想したい。
今週の“ひらめき”視点 7.21 – 7.25
代表取締役社長 水越 孝