中小企業の倒産が高水準で推移している。2024年1-6月期の倒産件数は前年同期比2割を越える。構造的な後継者難に加えて、人手不足、仕入れ価格の高騰、過剰債務など、価格転嫁力の弱い下請型中小企業の資金繰りの悪化が背景にある。政府は「中小企業にも賃上げの流れが進んだ」と自賛するが、賃上げを実施した中小企業の6割が “業績の改善が見られない中での防衛的な賃上げ”(日本商工会議所、東京商工会議所の調査より)であることを看過してはならない。
一方、業績不振が常態化し、社員に十分な給料を支払うことが出来ず、公的支援と借金で延命してきた中小企業、所謂 “ゾンビ企業” は退場すべきだ、との声も大きい。技術革新に追いつけず、旧来のビジネスモデルから抜け出せない企業の淘汰はむしろ歓迎すべきであり、資本と労働力の成長産業への移動は日本経済全体の生産性の向上と持続的な成長に資する、というわけである。
しかし、はたして “苦境にある下請企業=ゾンビ企業” であるのか。3月7日、公正取引委員会は下請事業者36社に対する不当減額について日産自動車に是正勧告を行った。日本を代表するグローバル企業による「下請いじめ」は本来であれば “衝撃的” と受け止められて然るべきであるが、社会の空気は「やっぱりか」という落胆に溢れた。そして、その通り、今度はトヨタ子会社だ。7月5日、公取委は特装車などを手掛けるトヨタカスタマイズ&ディベロップメントに対して、下請企業に対する金型の無償保管と不当返品について是正勧告を発した。
令和5年度、下請法違反にもとづく公取委の勧告件数は直近10年度で最多の13件、指導件数は8千件を越える。ピラミッド型の下請構造の頂点に立つ完成車メーカーへの勧告はまさに日本のサプライチェーンの構造問題を象徴する。30年におよぶ日本経済の停滞、生産性の低さの原因はどこにあるのか。中小企業の付加価値を搾取し、生産性を押さえ込み、自立の機会を奪ったのは、イノベーションを怠り、国内のデフレに甘んじ続けてきた大手企業の側ではないか。何とかすべきはむしろこれらの “ゾンビ” たちだ。
今週の“ひらめき”視点 6.30 – 7.11
代表取締役社長 水越 孝