免税事業者
(画像=PIXTA)

消費税の支払いが免除される免税事業者は、多くの経営者にとって魅力的に映るかもしれない。しかし、課税事業者のほうが得なケースもあるため、安易に免税事業者を選ぶ行為はNGだ。免税事業者の要件と合わせて、今後に役立つ消費税の基礎を学んでいこう。

目次

  1. 消費税の概要をおさらい!近年の税制改正のポイント
  2. 課税事業者と免税事業者の違いとは?
    1. 課税事業者とは?
    2. 免税事業者とは?
  3. 免税事業者は消費税を請求できる?
  4. 免税事業者になるための要件をわかりやすく解説!
    1. 免税事業者の要件にある「基準期間」「特定期間」とは?
    2. 免税事業者の要件にある「課税売上高」とは?
    3. 新規開業時や、基準期間が1年ではない法人の扱いは?
  5. 免税事業者が得につながるとは限らない!課税事業者のほうが得になるケース
    1. 1.課税仕入れが多く、課税売上げが少ない場合
    2. 2.事業の中で免税取引をしている場合
    3. 3.2023年以降に他社と取引をする場合
  6. 消費税はトラブルにつながりやすい!だからこそ押さえたい3つの注意点
    1. 1.「課税事業者」「免税事業者」への切り替えには、手続きが必要
    2. 2.課税事業者になると、2年間は免税事業者に戻れない
    3. 3.消費税転嫁対策特別措置法で禁止されている5つの行為
  7. 消費税のすべてを覚えることは難しい!だからこそ調べることが重要

消費税の概要をおさらい!近年の税制改正のポイント

消費税とは、商品・サービスの消費時に公平に課税される税金のこと。税金の中では比較的なじみ深い存在ではあるものの、「消費者が負担し、事業者が納付する」という点がほかの税金とは大きく異なっている。
消費税は1989年から導入された税金であり、その税率や扱い方には徐々に改正が加えられてきた。令和に入ってからもいくつか変更点が加えられているため、まずは近年の消費税改正のポイントを簡単におさらいしていこう。

時期(実施)税制改正の内容概要
2017年4月軽減税率制度の導入飲食料品や新聞の購読料など、特定の商品・サービスの税率が引き下げられた。
2019年10月消費税の増税消費税の税率が、8.0%から10.0%に引き上げられた。
2019年10月増税にともなう、軽減税率と経過措置の適用税率の引き上げにともない、一部の商品・サービスで軽減税率・経過措置が適用されるようになった。
2023年10月適格請求書等保存方式(インボイス方式)の導入仕入税額控除を受けるために、適格請求書と帳簿の保存が必要になった。

税率の引き上げや軽減税率については、社会的に広く注目された改正点であったため、多くの経営者は記憶に残っているだろう。特に税率10.0%への引き上げは、仕入れや販売価格に大きな影響を及ぼしたため、対応に追われた経営者も少なくないはずだ。
しかし、その陰に隠れている「適格請求書等保存方式の導入」を見落としてはいけない。詳しくは後述するが、この制度が実施されると免税事業者は大きなダメージを受ける恐れがある。
つまり、免税事業者が必ずしも得になるとは限らないため、世の中の経営者は消費税に関する制度について、正しい知識を身につけておくことが必要だ。

課税事業者と免税事業者の違いとは?

まずは、消費税を理解する第一歩として、「課税事業者」と「免税事業者」の違いを理解していこう。

課税事業者とは?

課税事業者とは、国に対して消費税を納める義務が課せられた事業者のことだ。課税事業者が商品・サービスを販売する際には、販売価格に「消費税分」を上乗せしており、後日その受け取った消費税をまとめて国に納付する。
また、少しややこしいかもしれないが、課税事業者も仕入れの際には消費税を前もって負担している。たとえば、原材料や消耗品を購入するときには、一般的な消費者と同じように「商品の代金+消費税」の金額を支払っているはずだ。
この前もって支払った分の消費税を無視すると、課税事業者は2重に消費税を負担することになってしまうため、課税事業者の消費税額は原則として以下の式で算出されている。

消費税額=(売上時に受け取った消費税)-(仕入時に支払った消費税)

ちなみに、上記の「仕入時に支払った消費税」には、交通費や接待費にかかる消費税が含まれる点も合わせて覚えておきたい。

免税事業者とは?

免税事業者とは、一定の要件を満たすことで消費税の支払いが免除される事業者のことだ。商品・サービスを売り上げる際には、課税事業者と同じように「代金+消費税」を消費者から受け取るが、このうち消費税分は会社の収益にすることが認められている。
このときに発生した消費税分の収益(益税)は、本来消費者が税金として国に納めるべきものだ。消費税の仕組み上、事業者が代わりに納付をしているに過ぎないが、免税事業者が受け取った消費税に関しては国への納付が行われていない。
この免税事業者ならではの現象は「益税問題」と呼ばれており、多方面で議論を呼んでいる。

免税事業者は消費税を請求できる?

上記の免税事業者の概要を読んで、「免税事業者が消費税を請求しても問題はないのか?」と素朴な疑問を感じた経営者は多いだろう。結論からいえば、免税事業者であっても消費税分を請求することは法律的に問題ない。
その理由は、いたってシンプルだ。免税事業者に該当する場合であっても、仕入れの際に取引先に支払う消費税が免除されるわけではないので、商品価格に消費税分を上乗せすることは当然の権利として認められている。

では、自分の会社が免税事業者と取引をする場合はどうだろうか。頭の回転が速い経営者であれば、以下のような流れでひとつの疑問にたどり着くはずだ。

〇免税事業者と取引をする場合に生じがちな疑問
ある免税事業者(以下B社)の仕入先になっているA社は、「もっと仕入量を増やしてほしい」と感じていた。そこでA社は、B社の商品が売れれば仕入量が増えると考えて、B社が取り扱う商品の値下げを目指し始める。
このとき、A社は免税事業者であるB社に対して、「お客に消費税分を請求しないで」と要求できるか?

上記のような流れでB社が値下げをすれば、最終的には仕入量が増える可能性があるため、A社にとっては大きなメリットとなる。しかし、免税事業者に対してこのような要求をすることは、「消費税転嫁対策特別措置法」において禁止されているので要注意だ。
課税事業者・免税事業者のどちらの立場になっても、この点は正しく理解しておく必要があるだろう。

免税事業者になるための要件をわかりやすく解説!

細かく見ると、消費税の免税事業者に関する要件は非常に多い。そのため、以下では経営者が特に押さえておきたい2つの要件をまとめた。

〇消費税の免税事業者になるための主な要件
・基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者
・特定期間における課税売上高(もしくは給与等支払額)が1,000万円を超えていない事業者

上記のうち「基準期間」「特定期間」「課税売上高」はやや複雑なポイントであるため、次からはこの3点を重点的に解説していこう。

免税事業者の要件にある「基準期間」「特定期間」とは?

毎年1月~12月が区切りとなる個人事業主とは違い、法人は事業年度を自由に設定できる。そのため、免税事業者の要件にある「基準期間」と「特定期間」は、以下のように個人事業主と法人にわけて期間が設定されている。

個人事業主法人
基準期間その年の前々年その事業年度の前々事業年度
特定期間その年の前年の1月1日~6月30日までその事業年度の前事業年度開始日から6ヶ月間

たとえば、2018年の課税売上高が1,000万円以下の個人事業主は、2020年には免税事業者として扱われる。ただし、この条件を満たしている場合であっても、2019年1月1日~6月30日までの課税売上高が1,000万円を超えている場合は、消費税の納税義務が課せられるため要注意だ。
免税事業者として扱われるには、このように「基準期間」「特定期間」の2つの要件を同時に満たす必要があるので、まずはその点をきちんと理解しておこう。

免税事業者の要件にある「課税売上高」とは?

課税売上高については、国税庁のホームページにおいて以下のように説明されている。

・課税売上高は、輸出などの免税取引を含め、返品、値引き、割戻しをした対価の返還等の金額を差し引いた額(税抜き)

この文言ではやや分かりづらいかもしれないが、課税売上高とは簡単にいえば「消費税を差し引いた売上」のこと。たとえば、1,000円の商品を消費税10%で販売すると、実際に受け取る金額は1,100円となるが、課税売上高では「1,000円」として計算する。
ただし、基準期間においてすでに免税事業者として扱われていた場合は、この税抜きの処理をせずに課税売上高を計算する必要がある。

新規開業時や、基準期間が1年ではない法人の扱いは?

新規開業時の要件については、ここまで紹介した内容と基本的には同じだ。新規開業から2年の間は、基準期間における課税売上高が0円となるため、黒字経営であっても消費税を納付する必要はない。
ただし、設立から2年目に関しては、「特定期間」の要件を満たす必要がある。特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていると、新規開業から2年が経過していなくても納税義務が課せられてしまう。また、事業年度開始日における資本金または出資金の額が1,000万円を超える場合も、免税は適用されないため注意しておこう。

ちなみに、事業者によっては特定の事情で基準期間が1年間にならないケースがある。この場合は通常時とは違い、以下の流れで要件を判定することになる。

〇基準期間が1年間ではない事業者の判定方法
以下の式を用いて、まずは「1年相当に換算した課税売上高」を算出する。

1年相当に換算した金額=(基準期間中の課税売上高)/(事業年度の月数)×12

上記の金額が1,000万円を超えていなければ、免税事業者としての要件を満たせる。

免税事業者が得につながるとは限らない!課税事業者のほうが得になるケース

免税事業者は受け取った消費税を自社の収益にできるため、多くの経営者は「免税事業者になりたい」と感じているだろう。しかし、実は課税事業者を選ぶべきパターンも存在するため、安易に免税事業者を目指すべきではない。

では、実際に課税事業者のほうが得になる3つのケースを、以下で詳しく解説していこう。

1.課税仕入れが多く、課税売上げが少ない場合

企業が消費税の負担を考える際には、押さえておきたい制度がもうひとつある。それは、原則課税方式を採用している課税事業者が対象になる「消費税の還付」だ。

実は「課税仕入れ>課税売上げ」の図式が成立する課税事業者は、この制度によって消費税の還付を受けられる。場合によっては、免税より還付のほうが有利になるケースがあり、さらに免税事業者はこの還付制度が適用されないため注意しなくてはならない。

ちなみに「課税仕入れ>課税売上げ」とは、簡単にいえば消費者から預かった消費税より、支払った消費税のほうが多い状態を指す。たとえば、開業直後で設備投資をしたときや、極端に売上が少ない時期にはこの図式が成立しやすいので、該当する企業は課税仕入れ・課税売上げの金額を一度チェックしてみよう。

2.事業の中で免税取引をしている場合

経常的に免税取引をする事業者も、課税事業者を選んだほうが得になる可能性がある。免税取引では、売上高に消費税が課税されないためだ。

具体的なケースとしては、「輸出業」を営んでいる場合が挙げられる。輸出業は免税取引によって売上を得るため、多くの売上には消費税が課税されない。その一方で、国内での仕入れには消費税が発生するので、「課税仕入れ>課税売上げ」の図式が成り立つ。
つまり、免税取引をすることが多い事業者は、消費税の免税よりも還付を選んだほうが得になる可能性がある。

3.2023年以降に他社と取引をする場合

本記事の前半で触れた「適格請求書等保存方式(インボイス方式)の導入」は、経営者が今後特に気をつけておきたいポイントだ。この制度が2023年に導入されると、仕入税額控除の適用要件として「適格請求書を保存していること」が追加される。

実はこの適格請求書は、税務署から登録を受けた課税事業者しか交付ができない。つまり、免税事業者との取引では適格請求書が交付されないため、結果的に仕入税額控除の適用を受けられないのだ。

制度のこのような仕組みによって、将来的にはさまざまな取引から免税事業者が弾かれてしまう恐れがある。実際にどうなるかは制度が導入されてみないとわからないが、2023年以降には課税事業者のほうが取引面で得になる可能性があるため、より慎重な判断が必要になってくるだろう。

消費税はトラブルにつながりやすい!だからこそ押さえたい3つの注意点

数ある税金の中でも、消費税は思わぬトラブルにつながりやすい税金だ。ひとつの選択を間違えると、大きな損失が生じてしまう恐れもあるので、経営者は消費税に関して正しい知識をつけなくてはならない。

そこで以下では、ここまで解説しきれなかった注意点を3つまとめた。深刻なトラブルを避けるために、しっかりと理解しながら読み進めていこう。

1.「課税事業者」「免税事業者」への切り替えには、手続きが必要

新しく事業を始めた法人や個人事業主は、要件を満たしていれば自動的に免税事業者として扱われるので、免税事業者になるための特別な手続きは必要ない。ただし、途中から課税事業者に切り替える場合や、課税事業者から免税事業者に戻す場合には、各種届出を管轄の税務署に提出することが必要だ。

仮にこの手続きを忘れると、免税事業者の要件を満たしているにも関わらず、納税義務が発生するような状況に直面する。課税事業者と免税事業者とでは、消費税の負担額に大きな違いが生じるケースも珍しくないので、自社がどちらの事業者に該当するのかは常に把握しておきたい。

2.課税事業者になると、2年間は免税事業者に戻れない

前述で解説した通り、企業によっては課税事業者のほうが得になる場合もある。しかし、実は免税事業者から課税事業者になると、その後2年間は免税事業者には戻れないため、安易に課税事業者を選ぶべきではない。

特に1年目と2年目で「課税仕入れ・課税売上げのバランス」が大きく異なるケースでは、細心の注意が必要だ。このようなケースでは、1年目には消費税の還付を受けられるものの、2年目には消費税の負担が増大する恐れがある。

したがって、課税事業者の届出を出すか否かは、2年間の経営状態をきちんと予測したうえで慎重に検討しておきたい。

3.消費税転嫁対策特別措置法で禁止されている5つの行為

前述でも軽く触れた「消費税転嫁対策特別措置法」は、買い手の立場を利用した「消費税の転嫁拒否」を禁止するための法律だ。この法律では公平な取引を実現するために、以下の5つの行動を禁じている。

〇消費税転嫁対策特別措置法で禁止されている行為
・代金を支払う段階になってから、消費税の減額をする行為
・増税分を代金に反映させず、安く買い叩こうとする行為
・増税分の反映を受け入れる代わりに、そのほかの利益供与を要求する行為
・「消費税抜きの本体価格で交渉したい」という相手の申し出を拒否する行為
・不当な行為を公正取引委員会などに知らせたことに対する、報復行為

つまり、買い手の立場を利用して、消費税の面で得をしようとする行為は基本的に禁止されている。違反行為をすると、最終的にはその事実が公表されてしまうため、買い手の立場で他社と取引をする際には十分に注意しておこう。

消費税のすべてを覚えることは難しい!だからこそ調べることが重要

消費税はなじみ深い税金のひとつだが、その仕組みは非常にややこしい。特に課税事業者と免税事業者の違いや、免税事業者になるための要件などは、すべてを暗記しておくことは難しいだろう。

そのため、消費税に関する疑問が生じたら、その都度細かく調べることが必要になる。本記事で紹介したように、2023年には新たな制度も導入されるため、消費税について定期的に調べる癖をつけておこう。

文・THE OWNER編集部

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