東京商工リサーチの調査によると、2024年上半期に早期・希望退職者募集が判明した上場企業は36社で、前年同期の1.5倍に達したことが明らかとなった。(文:日本人材ニュース編集部)
2024年上半期(1-6月)に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は36社(前年同期24社)で、前年同期の1.5倍に達した。対象人員も5364人(同1486人)と同3.6倍に大幅に増え、すでに2023年1年間の3161人を上回った。
業種別にみると、電気機器が最多の9社(25.0%)だった。このうち、新たに募集が判明したシャープは堺ディスプレイプロダクトの工場停止、ソニーグループは傘下のブルーレイディスクなど記録メディア事業から順次撤退に伴う募集だった。
近況について東京商工リサーチは「歴史的な円安の恩恵を受け、不採算事業の閉鎖など事業セグメントの見直しを急いでいる。また、賃金上昇による固定費削減のほか、高い有効求人倍率と活発な転職市場を背景に、退職勧奨に応じやすいタイミングにあることも影響している」とみている。
【業種別 早期・希望退職者の募集実施を公表した上場企業数】(社数上位)
電気機器 9社(1800人)
情報・通信 7社(412人)
卸売業 3社(71人)
サービス 3社(27人)
食料品 2社(非開示)
繊維製品 2社(365人)
機械 2社(220人)
その他製品 2社(9人)
市場区分別にみると、東証プライムが25社(69.4%)と約7割を占め、人数を押し上げた。次いで、東証グロースの6社(16.6%)、東証スタンダードの5社(13.8%)と続く。
損益別にみると、「早期・希望退職募集」の判明時の直近通期最終損益(単体)は黒字企業が21社(58.3%)と約6割を占め、有力企業が好業績のうちに構造改革に取り組む姿勢が明らかになった。赤字企業は15社(41.6%)だった。
今後について東京商工リサーチは「好業績が続くうちの構造改革に伴う募集と円安や物価高で業績不振に陥った企業の募集が重なり、2021年(1万5892人)以来、3年ぶりに1万人を超える可能性が高まってきた」と指摘する。
調査は、早期・希望退職者募集の具体的な内容を確認できた上場企業を対象とした。『会社情報に関する適時開示資料』(2024年6月30日公表分まで)と東京商工リサーチの独自調査に基づく。