紙パッケージは1兆8,000億円市場、価格転嫁効果で2023年度も拡大見込み
~紙化需要を追い風に2030年度の市場規模は2022年度比で約10%増の拡大を予測~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の紙パッケージ市場の調査を実施し、各種紙パッケージの動向や将来展望を明らかにした。
紙パッケージ市場規模(6分野計)推移・予測
1.市場概況
本調査では段ボール、紙器、紙カップ、紙カートン、紙袋、パルプモールドの6種の紙パッケージを対象とし、それぞれの市場動向をまとめるとともに、紙パッケージの需要実態と市場性についてまとめた。
紙パッケージの需要動向をみると、2022年度はコロナ禍からの景気回復が鮮明となる中で、総じて需要は回復傾向で推移してきた。しかし、原材料費や物流費、エネルギーコスト等の高騰を背景に、食料品をはじめとする多くの消費財の値上げが相次ぎ、消費マインドの低下が顕在化したことで、加工食品や菓子等の紙パッケージの需要にも影響を及ぼした。また、この状況下においてブランドオーナーも収益確保が最優先となり、新たな容器の採用に注力しにくい状況だったことから、紙化の動きも停滞した。
2023年度も物価高のマイナス影響は継続し、また巣ごもり需要の収束も相まって、特に段ボールや紙カートン、紙袋(角底袋)などの紙パッケージの需要は低調に推移した。
一方、金額ベースでは、2022年度に入って大半の紙パッケージコンバータが原燃料費等コスト上昇分に対する価格転嫁を実施したことから、2022年度の市場規模は増加し、2023年度も通期に渡って価格転嫁の効果が作用した。そのため、2022年度の紙パッケージ市場規模(6分野計)は前年度比3.5%増の1兆8,124億円、2023年度は同4.6%増の1兆8,959億2,000万円と市場規模は増加する見込みとなっており、需要動向と相反する動きとなっている。
2.注目トピック
「再生可能な植物由来素材」以外の環境価値の必要性が高まる
コロナ禍の混乱から正常な状態に戻った2024年度以降、パッケージ市場では脱プラスチック・紙化の動きが再び進み出すと見られる。コスト高騰による停滞はあったものの、ここ数年、ブランドオーナーの包装材に対するニーズにおいては、「環境配慮」への優先度が飛躍的に高まっており、現在、パッケージのサステナブル化においては、化石燃料由来のプラスチックから持続可能な植物由来素材への転換(代替)、つまり「素材代替」の他、「資源循環(リサイクル)」も重要視されている。
こうした中で、プラスチック素材のパッケージにおいても、ユーザーニーズに適した「環境配慮」が進んでおり、サステナブルパッケージに対するブランドオーナーの選択肢は広がっている。そのため、紙パッケージにおいても「再生可能な植物由来素材を使用している」だけにとどまらない環境価値を提案する必要性が高まってきている。
それを受け、紙カップ、紙カートンにおいては、ここ数年、回収・リサイクルスキームの確立と運用に取り組む事業者が出てくるなど、新たな取り組みが進んでいる。今後もプラスチック素材との競争に打ち勝つための更なる環境価値の創出は、紙パッケージコンバータが取り組むべきテーマになると考える。
3.将来展望
紙パッケージ市場はコロナ禍からの回復フェーズが終了し、ある意味リスタートとなる2024年度以降は再び人口減(少子高齢化)や省包装化が足かせとなると見られるものの、6割弱の構成比を占める段ボールの堅調な需要が市場を下支えする中で、紙化の流れが追い風となり、緩やかな成長軌道を描く見通しである。
2024年度の紙パッケージ市場規模(6分野計)は1兆9,079億4,000万円(前年度比0.6%増)、更に2030年度には2022年度比で約10%増まで拡大すると予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2024年4月~5月 2.調査対象: 紙パッケージメーカー等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用 |
<紙パッケージとは> 本調査における紙パッケージとは、段ボール、紙器、紙カップ、紙カートン、紙袋、パルプモールドの6種の紙パッケージを指す。なお、紙袋については手提げ袋と角底袋、パルプモールドについては、ウェットパルプモールド(ウェット製法)のみを対象としている。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 段ボール、紙器、紙カップ、紙カートン、紙袋(手提げ袋、角底袋)、パルプモールド(ウェットパルプモールド) |
出典資料について
資料名 | 2024年版 紙パッケージ市場の展望と戦略 |
発刊日 | 2024年05月13日 |
体裁 | A4 177ページ |
価格(税込) | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
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