矢野経済研究所
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2019年度の賃貸住宅新設着工戸数を前年度比85.6%の33万4千戸と予測

~貸家新設着工戸数の減少トレンドが継続、入居需要が多く見込める都市部でのシェア拡大競争へ~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の賃貸住宅市場を調査し、賃貸住宅新設着工動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

貸家新設着工戸数推移・予測

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1.市場概況

2019年度の国内賃貸住宅市場規模は新設着工戸数ベースで、前年度比85.6%の33万4千戸と予測する。
金融機関の融資の厳格化を背景とした新築着工の低迷が続いていることで、2017年度以降、貸家新設着工戸数(国土交通省「建築着工統計」より引用)は減少トレンドが継続している。一方で、主要な賃貸住宅事業者は、地方と比較して人口移動が多い都市部に集中した営業戦略を取っていることから、今後も賃貸住宅の入居需要が多く見込める都市部地域でのシェア拡大競争が継続していくものと考える。

2.注目トピック

コンセプトやテーマ性を持たせた良質な賃貸住宅の供給がトレンドに

住まい方のコンセプトやテーマ性を備えた良質な賃貸住宅の供給が進んでいる。女性目線や子育てといったコンセプトなど住まい方や入居者像を絞った賃貸住宅が供給されることで、賃貸住宅への積極的な入居需要が掘り起こされ始めている。
賃貸住宅事業者は、今後、賃貸住宅に日常生活を豊かにする工夫や特徴を持たせて物件力を強化し、長期的に安定した入居率を維持することが出来る賃貸住宅商品の開発を進めていかなければならない。

3.将来展望

貸家新設着工戸数の減少トレンドは引き続き継続しており、2020年度の賃貸住宅市場規模を新設着工戸数ベースで、前年度比90.1%の30万1千戸と予測する。人口・世帯数が減少し、入居需要の拡大が進まない地方を中心に、今後も貸家新設着工戸数の減少は続く見通しである。一方で、地方と比較すると都市部においては依然として新築の賃貸住宅入居需要は底堅いものがあるため、賃貸住宅事業者は入居が見込めるエリアにおける積極的な営業、競合他社との差別化提案は、市場シェア獲得のために今後ますます強化する必要がある。

また、築30年以上の賃貸住宅の多くは好立地に建築されているケースが多いが、将来的に建て替えを検討するタイミングに差し掛かっている。賃貸住宅事業者はオーナーに対して、入居率の維持向上や収支改善のために、建て替えを選択肢の一つとして提案する必要がある。更に、賃貸住宅以外の不動産と組み合わせた複合的な提案や資産の組み替えによる新たな提案を強化していく必要があると考える。