株式会社を設立したり、証券会社経由で株式を購入したりすれば、誰でもすぐに株主になることができる。株主の権利の一つとして、株主総会への参加権がある。株式を発行する側からすれば、株主総会を開催する必要がある。そもそも株主総会とはどのようなもので、何を決め、どのように運営するべきなのかを見ていくとしたい。株主としても、株主総会を開く側の経営者としても、株主総会に対する正しい知識を理解しておくことは将来必ず役に立つはずである。
目次
そもそも株主総会とは?
株主総会とは、株式会社の最高意思決定機関である。
株式会社の仕組みをシンプルに考えるとは、株主は会社の「所有者」であり、取締役は会社の「経営者」である。重要な意思決定については、原則的には所有者である株主が決めるものとされているが、日々の経営や業務執行は、株主が株式の価値を高めると期待できる取締役に委任する。株主は、実際に経営がうまくいっているのか、経営者が株主のお金で私腹を肥やしていないかなどをモニタリングする必要性が出てくる。
重要な意思決定が株主と経営者によって議論されるとともに、事業の状況についての報告を経営者から受け、場合によって質疑応答が行われる。株主総会は、そうした意思決定やモニタリングの場である。
株主総会以外の経営機関としては取締役会や監査役会などもあり、構成者や権限が混在しやすい。それぞれを正しく理解することが必要である。
株主総会の権限や種類
取締役会の有無
株主総会の権限は、取締役会の有無で変わってくる。取締役会とは、取締役が3名以上いる場合に組成できる任意の機関である。取締役会を組成した会社を「取締役会設置会社」という。
会社法第295条において、株主総会では「株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」と規定されており、大きな権限を持っていることがわかる。
株主総会で決議する議案は、原則として取締役によって決定される。そして、株主が集まる株主総会に諮り、決議をすることになる。一定割合以上の議決権を持った株主の参加により株主総会は有効となり、そのうち一定割合以上の賛成があった場合に可決される。
取締役会設置会社の場合は、重要な意思決定の一部を株主総会から取締役会に委譲できる。株主総会では会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り、決議をすることができるとされている。会社法に規定する事項は後述するが、ここでは「取締役会がある場合は株主総会で決めるべき事項は少なくなる」ことを知っておいてほしい。なお、取締役会を設置するには手続き上、株主総会での決議が必要となる。
定時株主総会
定時株主総会は、年に一度、期末から3ヵ月以内に開催されるものである。通常は、計算書類などの承認に加えて、取締役や監査役の選任、配当の決定などを決議するものである。
臨時株主総会
臨時株主総会は、定時株主総会以外に開催される株主総会である。株主総会を招集する権利を持つのは、取締役(取締役会設置会社の場合は取締役会)または株主である。
取締役または取締役会が招集する場合は、日時や場所、議案を決定し、株主に通知することになる(会社法第296条)。株主が開催を請求するには、全議決権の3%を6ヵ月以上保有している必要がある(会社法第297条)。株主複数名の議決権の合算でも可能である。株主はまず取締役または取締役会に対し、目的や理由を含めて株主総会の開催を請求する。それでも取締役や取締役会が株主総会を招集しない場合は、株主は裁判所の許可を得て、株主総会を自ら招集することができる。
臨時株主総会の議案は多岐にわたるが、合併や買収、新株の発行など重要な意思決定が必要な場合に開催される。近年は株主による会社へのモニタリング機能が強化され、会社へ権利を主張する株主の増加に伴って、配当の増額請求や取締役の解任などが増加している。
株主総会と取締役会の違い
株主総会と取締役会は、主に参加する者と決定すべき事項が異なる(会社法第362条)。
取締役会は、取締役および監査役と、必要と認められた者のみが参加するものである。影響の大きい契約や株主総会への議案の決定などの重要な意思決定がされる場であり、役職員以外の者は基本的には参加できない。取締役会で決定できるのは、会社経営の執行に関する以下の事項である。
・取締役会設置会社の業務執行の決定
・取締役の職務の執行の監督
・代表取締役の選定および解職
・重要な財産の処分および譲り受け
・多額の借財
・支配人その他の重要な使用人の選任および解任
なお、日本では「取締役=経営の執行者」となっているケースが多い。海外においては、社長は業務執行者である一方、取締役会の議長には社外取締役が就いて業務執行はせず、モニタリングに専念するようなモデルもある。国によって統治の形が異なっていることも覚えておくとよいだろう。
株主総会の決議は3種類
株主総会の決議は、その内容に応じて、普通決議、特別決議、特殊決議の3種類存在する(会社法第309条)。
1.普通決議
普通決議は最も一般的な決議方法であり、全議決権の2分の1超を有する株主が株主総会に参加し、その参加者が持つ議決権のうち2分の1超の賛成を得ると可決となる。企業を買収する際など、全株式の50.1%や51%を取得することがよく見られるのは、自社のみで株主総会の普通決議を可決させて意思決定が可能になるためである。
2.特別決議
特別決議は、特に重要な議案についての決議である。議決権の2分の1超を有する株主が株主総会に参加し、その参加者が持つ議決権の3分の2以上の賛成を得ると可決となる。具体的には以下のような議案が対象となる。
・特定株主からの自己株式の取得(会社法第156条1項、160条1項)
・資本金の額の減少(会社法第447条1項)
・現物配当(会社法第454条4項)
・定款の変更(会社法第466条)
・事業譲渡の承認(会社法第467条)
・解散(会社法第471条3項)
他者に株主総会で特別決議を可決されないための拒否権を持つため、最低でも全株式の33.4%や34%を保有するということが考えられる。
3.特殊決議
特殊決議は、特殊な状況下における議案である。あまり例は多くないが、例えば全株式を譲渡制限株式とする定款変更をするときは、総株主数の半分以上かつ、総議決権の3分の2以上の賛成が必要である。可決のための母数が「出席株主」ではなく、「総株主」になっている点が異なる。株主ごとに異なる取り扱いを行う旨を定款で定める場合は、総株主数の半分以上かつ、総議決権の4分の3以上の賛成が必要である。
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株主総会では何が決まるの?
株主総会で決めるべきことについては、先述のとおり、取締役会の有無で異なってくる。以下の事項は、株主総会での決議が必要な旨が会社法内のさまざまな条項に記載がある。
会社の根本を決める事項
決議される内容としては、例えば以下のようなものがある。
・定款の変更
・合併
・減資
・計算書類などの承認(いわゆる決算書=貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表・附属明細書)
役員の人事に関わる事項
決議される内容としては、例えば以下のようなものがある。
・取締役の選解任
・監査役の選解任
・会計監査人の選解任
株主の利害に関わる事項
決議される内容としては、例えば以下のようなものがある。
・自己株式取得
・剰余金の配当
・取締役などの報酬
取締役会を設置していない会社の場合は、上記にとどまらず、一切の事項を決めることができるとされている。上記のような事項に加え、取締役または株主からの要求があった事項について、株主総会で諮ることになる。
株主総会の流れは?
株主総会はいつ行われる?
定時株主総会は期末から3ヵ月以内に実施されるのが一般的である。会社法に3ヵ月という規定があるわけではないが、下記の事情を考慮すると、期末から3ヵ月以内に行うのが望ましいといえる。
・株主が権利を行使できるのは、権利を行使できる株主を決める「基準日」から3ヵ月以内(会社法第124条)
・「基準日」は期末としているのが一般的
・法人税法では確定した決算を基に税務申告することになっている
・法人税の申告期限は期末から最大3ヵ月(申告期限の延長の特例)※連結事業年度は最大4ヵ月
以上のことから、3ヵ月以内に株主総会を開いて、計算書類(決算)を承認して確定させ、税務申告を終えるという流れが妥当といえる。
臨時株主総会は、請求に応じていつでも開催できることになっている(会社法第296条)。
株主総会の招集
株主総会の内容が決まったら、招集通知を開催の2週間(未上場企業の場合は1週間)以上前に送付する必要がある。これは株主に対してその通知を「発しなければならない」という規定であり、発送基準である(会社法第299条)。レターパックや簡易書留など、発送の記録が残る形で送付することが望ましい。
なお、株主の全員の同意があるときは、招集の手続きを経ることなく開催することができる(会社法第300条)。
実際の株主総会の流れ
株主総会の流れについては規定がないので、各社の判断に委ねられることとなる。進行をスムーズに進め、株主総会が適法であることを確認するためにも、以下の点に注意したい。
・議長を選任し、議長が進行する
・株主総会が有効となる議決権数が充足していることを確認する
このあたりは株主総会開始時に行うことが多い。そのあとは、会社の状況説明や具体的な議案を進め、決議をとることになる。上場企業においては、株主からの質問を受け付け、その場で回答していくことが一般的である。質問については想定問答を作成しておくことも多い。
株主総会を6月に行うメリットやデメリットは?
先述のとおり、定時株主総会は期末から3ヵ月以内に開催されることが一般的である。3月決算の会社が上場企業の6割を占めている日本では、株主総会は5月後半から6月に開催されることが多い。また、株主総会で計算書類が承認された後に税務申告や有価証券報告書を提出する慣行があるためか、月末から1営業日を残した日(2019年は6月27日木曜日)が最も株主総会開催が集中する日となっている。この日を「集中日」といい、3月決算の上場企業の約3割が株主総会の開催をする。
株主総会が6月に行われることのメリットとデメリットを見ていこう。開催する会社側としてはメリットとデメリットの両方ある。まず、自社の株主が他社の株主総会に出席するため、参加者が減る可能性がある。次に、多くの株主に参加してほしいと思う場合はデメリットになるが、参加する投資家を絞りたいと考えている場合はメリットとなる。
一方、株主としてはデメリットとなる。株式を保有する会社の株主総会の開催日が重なった場合、開催場所や時間によってはいずれかの株主総会に参加できなくなる。株主総会で経営陣から直接説明を受けたり質問をしたりすることを希望する場合は、時期を分散してほしいと思うだろう。
組織再編と株主総会
会社にとって、さらには株主にとっても株主総会は極めて重要であり、経営側としては法令上の不備がないように総会運営を行う必要があることは言うまでもない。ただし、会社がM&Aなどの組織再編を行う場合には少し違った存在に映ることもある。ここでは、違う視点から株主総会について解説する。
組織再編には原則として株主総会が必要
組織再編とは、より高い競争力を獲得するために、他社の経営権などを取得する行為全般の事であり、主に事業の拡大目的に利用されている。他方、不採算事業からの撤退など、非効率的な事業を会社本体から外部へ切り出すための統廃合目的として利用されることもある。M&Aは組織再編の手法の一つであり、他にも合併や会社分割などの手法がある。
組織再編は、会社にとって大変重要なイベントとなるため、重要事項として株主総会の決議が必要なケースがほとんどであろう。
・株主総会の開催は経営者への負担が大きい
しかし、株主総会を開催するには、原則として招集通知を開催の2週間(未上場企業の場合は1週間)以上前に株主に送付しなければならない。もちろん、株主全員の同意があるときは、招集の手続きを経ることなく開催できるが、多数の株主が存在する場合には個別に説明する手間が発生してしまう。そのため、原則通り株主総会開催のためのルールに従って、順次行っていく必要がある。
株主の権利としては、株主総会で適切な意見を述べる機会を得る事はとても重要だ。しかし、目まぐるしく変わる経営環境に対して、スピーディーな対応が求められる経営者からすると、株主総会の開催はやや手続きが煩雑となる。ましてや、定時株主総会ではなく、臨時的な開催が求められる場合にはなおさらである。
そこで、経営者としては手続きが簡略化できないか、と考えるのが普通ではないだろうか。取締役会で決議を行えればよいのだが、持株会社設立によるホールディングス化、さらには合併や会社分割といった株主にとって重要な事項については、株主総会決議が必要となっている。
それでもスピーディーに組織再編を行うために、会社法では株主総会を省略できるルールが定められている。以下で詳しく触れたい。
株主総会を省略できるケース
株主への影響が小さい組織再編を行う場合には、株主総会の省略が認められている。ここで「株主への影響が小さい」場合とは、「総資産の20%以下」内で行われる小規模な組織再編を指す。これらの組織再編を総称して簡易組織再編ということがある。
例えば、総資産の20%に相当する事業を分割する場合や、自社に対して小規模の会社を吸収合併する場合などが該当する。小規模の組織再編であれば株主への影響は小さいと考えられ、取引の流通性を優先し、株主総会決議は不要とされている。
会社法では、株主総会決議を省略できる要件を定め、上場会社のように株主総会の随時開催が比較的困難な会社等においても、迅速に組織再編を行えるように配慮されているのである。
他方、吸収合併される会社がすでに100%の株式を保有されているようなケースでも、一律に株主総会が必要とすると事務手続きが煩雑となり、組織再編が利用されない可能性がある。そのため、他の会社の議決権の90%以上を保有するなど特別支配関係にある会社間の組織再編については、吸収合併される側の株主総会決議の省略が認められている。これらの手続は、「略式組織再編」といわれている。
株主総会を省略できないケース
組織再編を行う際には、簡易組織再編や略式組織再編などを利用することで、株主総会決議を省略できる。しかし、次の4つのようなケースに該当する組織再編では、株主総会決議の省略ができないこともあるので注意が必要である。
①承継債務が承継資産額を超える場合(差損が発生するケース)
②吸収合併存続会社等において一定数(3分の1以上)の株主の反対がある場合
③吸収合併存続会社等が吸収合併消滅会社の株主等に譲渡制限株式を交付する場合
④組織再編と同時に、定款変更、役員変更等が発生する場合
組織再編時のスケジュール管理への影響
株主総会は株主の権利を保護するための重要な機関である一方、機動的な組織再編時にはその手続きの煩雑さが足かせとなりかねない。経営者としては、できる限り株主の利益に配慮した上で、手続きの簡素化を求めていくことになる。
特に、グループ外部に対してM&Aを実行していく中では、対象会社との交渉も同時並行的に進めていかなくてはならず、スケジュール管理が非常に重要となる。とりわけ、株主総会決議を要するかどうかは、全体のM&Aスケジュールに重大な影響を及ぼす。
買収価額によって、簡易組織再編になるのか、それとも原則的な組織再編になるのか微妙なラインであれば、複数のスケジュール案を走らせながらM&Aを実行していく必要がある。
総会屋と物言う株主の違いとは?
総会屋とは
総会屋の説明する前に、これまでの日本で慣習的に行われていた株主総会運営をまずは整理しておく必要があるだろう。
かつての株主総会は、どこの企業でも概ね30分程度で終了するのが通常であったし、慣習として問題なく終了させなければならなかった。したがって、総会会場のひな壇中央に座る議長役の社長が、株主から質問攻めにあい、答えに窮してうろたえることはあってはならなかったし、そのような質問がでないように、社員株主によって総会会場を埋め尽くすといったことが恒常的に行われていた。
そのため、株主総会の開催時間が長引けば、その企業があたかもトラブルを多く抱える「問題がある企業」というイメージを持たれてしまうという風潮が世の中には確かに存在していた。
世に名を馳せている上場会社を中心とする、大企業の多くはそのようなイメージを持たれることのないように、特に“問題なく”(実際には問題がないようにしていること自体が問題ではあるのだが)株主総会を開催して、無事閉会させることが経営者の使命のようにさえ思われていた時代があった。
穏便に株主総会を済ませたいとする会社側の都合を逆手にとって、株主総会を舞台に企業からあわよくばお金を得ようとする存在がいた。それが「総会屋」であった。今で言う所の反社会的勢力である。
・総会屋の手口と事件の発生
総会屋の手口はシンプルであった。まず、ターゲットとする企業の株式を購入することから始まる。その後、ターゲット企業の株主総会に出席し、長時間にわたって執拗に質問を繰り返すなどして総会の議事進行を妨害するのである。経営陣からすると、このようなことが株主総会当日に行われると、たまったものではない。時には、株主総会開催日の前に、膨大な質問状をターゲット企業に送付するなど、脅しのような行為も行われていたとされている。
経営者側は株主総会を穏便に済ませたいので、総会屋に対してさまざまな方法でお金を供与するという事さえおこなわれていた。その当時、日本を代表する大手銀行及び証券会社が、多額の資金を総会屋に利益供与するという関係性が、長年にわたって続いていたことが相次いで発覚し、関係役員が逮捕されるという事件も発生していた。
それ以外の企業でも、総会屋に利益供与し続けていたことが発覚し、日本の社会全体において企業と総会屋との間で構造的な癒着関係が存在していることが明るみになったのである。
・総会屋への利益供与の手法
利益供与の方法は、会費や工事の請負、機関紙新聞の購読代や広告掲載料、コンサルティング名目での支出などさまざまであった。
企業と総会屋の癒着関係は、1990年代前半のバブル崩壊まで続いたのである。日本の経済成長が滞り、企業業績が悪化の一途をたどる中で、これまでの総会屋との関係にようやく終止符が打たれることなった。自浄作用とは程遠いともいえる状態である。
物言う株主の登場
2000年代に入り、米スティール・パートナーズに代表されるように、経営陣に事業戦略等を提案し、企業価値を高めることを通じて株価を高めようと試みる「物言う株主」が登場した。経営者との相性が悪ければ保有する株式売却して、何も言わずに離れていく株主とは対極に位置づけられることから、そのように呼ばれることとなった。
物言う株主の提案内容は、事業戦略のほか、増配・自社株買いなどの株主還元のための資本政策、経営陣の刷新など役員人事に関するものなど、実に幅広い。米国の年金基金が、運用成績の向上を目指して投資企業先へ直接提案を行ったのが始まりとされ、2001年の米エンロンの不正会計事件等もあり、企業側が株主の意見を聞き入れる風潮に変わってきたことが、物言う株主増加の背景となっている。
日本でも、先に触れたスティール・パートナーズのほか、ニッポン放送に対して村上ファンドが当時の経営陣に対して意見を行ったことは有名である。
コーポレートガバナンスに配慮した株主総会
日本でも、海外からの投資を呼び込むために、上場会社が適切な企業統治を行う上で参照すべき原則と指針として、コーポレートガバナンス・コードが国際的な潮流に合わせて策定された。
コーポレートガバナンス・コードは、「会社が株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」として、以下の5つの基本原則とそれに紐づく原則・補充原則から構成されている。
①株主の権利・平等性の確保
②株主以外のステークホルダーとの適切な協働
③適切な情報開示と透明性の確保
④取締役会等の責務
⑤株主との対話
上場会社では、これに従うことが求められるようになった。特に、株主総会の議案については、取締役中の社外役員が3分の1以上になっているかどうかの確認はもちろん、取締役会のジェンダー・ダイバシティが進んでいない場合には、海外投資家から明確に反対票が投じられることとなった。これまでの日本企業のいわばクローズドな株主総会とは真逆の、開かれた透明性のある株主総会であることが求められるようになっている。
・コーポレートガバナンスは非上場企業にとっても重要
上場会社ではすっかり定着しつつあるコーポレートガバナンスであるが、非上場企業でも無関係ではない。
例えば、融資をしている金融機関から見ると、コーポレートガバナンスが効いている企業は信用力が高くなる傾向があるだろう。また、法令順守や不祥事リスクの低減といった観点からも、ガバナンスが効いているか否かは、外部から問われることが増えていくことだろう。SDGsも含め、企業が社会的貢献に対してどのように取り組んでいくか注目されている中、コーポレートガバナンスは、優秀な人材の雇用を目標とする企業ではとりわけ重要になってくるはずだ。
一口に株主総会といえども奥は深い
取締役会の有無や定時・臨時の別、意思決定する内容によって、さまざまなルールがある。関与する企業が、どの意思決定を取締役会で行うのか、株主総会で行うのかを把握していれば、その会社の行く方向を先読みできるかもしれない。
株主総会に関するQ&A
Q1.株主総会は何月に行われる?
A. 定時株主総会は、期末から3ヵ月以内に開催されることが一般的である。3月決算の会社が上場企業が最も多い日本では、株主総会は5月後半から6月に開催されることが多い。また、株主総会で計算書類が承認された後に税務申告や有価証券報告書を提出する慣行があるためか、月末から1営業日を残した日(2019年は6月27日木曜日)が最も株主総会開催が集中している。この日を「集中日」といい、3月決算の上場企業の約3割が株主総会を開催する傾向がある。
Q2.株主総会を6月に行うメリットは?
A. 日本では3月決算の上場企業が多いため、株主総会は5月後半から6月に集中して開催される。そのため、6月に出席株主が減少する傾向があるため、会社が参加する投資家を絞りたいと考えている場合はメリットとなる。
Q3.株主総会を6月に行うデメリットは?
A.日本では、株主総会が5月後半から6月に開催されることが多く、出席株主が減少する傾向があるため、会社が多くの株主に参加して欲しい場合はデメリットとなる。また、株主としても、株式を保有する会社の株主総会の開催日が重なった場合、開催場所や時間によってはいずれかの株主総会に参加できなくなるといった点がデメリットとなる。
Q4.株主総会の進行は誰がする?
A. 定款に基づいて議長を選任し、議長が進行する。
株主総会の流れについては明文規定がないので、各社の判断に委ねられる。進行をスムーズに行い、株主総会が適法であることを確認するためにも、株主総会開始時に、株主総会が有効となる議決権数が充足していることを確認した上で進行することが多い。その後は、会社の状況説明や具体的な議案を進め、決議を取ることになる。
Q5.臨時株主総会はなぜ開催される?
A. 臨時株主総会は、定時株主総会以外に開催される株主総会である。株主総会を招集する権利を持つのは、取締役(取締役会設置会社の場合は取締役会)または株主である。臨時株主総会の議案は多岐にわたるが、合併や買収、新株の発行などの重要な意思決定を要する際に開催される。
Q6.株主総会は省略できる?
A. 株主総会とは、株式会社の最高意思決定機関であり、株主や会社にとっての重要事項について決議が行われる。取締役会を設置している場合、取締役会決議事項の範囲内であれば株主総会が省略できるほか、株主への影響が小さい組織再編ならば株主総会の省略が認められている。具体的には、総資産の20%に相当する事業を分割する場合や、自社に対して小規模の会社を吸収合併する場合など、の簡易組織再編であれば省略できることがある。また、吸収合併される会社がすでに100%の株式を保有されているような略式組織再編においても、株主総会決議を省略できることがある。
Q7.株主総会の招集は誰が行う?
A.株主総会の招集は取締役または株主が行うとされている。 株主総会の内容が決まったら、招集通知を開催の2週間(未上場企業の場合は1週間)以上前に送付する必要がある。これは株主に対してその通知を「発しなければならない」という規定であり、発送基準である(会社法第299条)。レターパックや簡易書留など、発送の記録が残る形で送付することが望ましい。
なお、株主全員の同意がある時は、招集の手続きを経ることなく開催できる(会社法第300条)。
Q8.株主は株主総会に出席する義務があるのか?
A.株主総会への出席義務はない。ただし、最も一般的な決議方法である普通決議でも、全議決権の2分の1超を有する株主が株主総会に参加し、可決には参加者が持つ議決権のうち2分の1超の賛成が必要となるため、出席株主数は議案成立のための要件となっている。
さらに、特別決議では、議決権の2分の1超を有する株主が株主総会に参加し、その参加者が持つ議決権の3分の2以上の賛成を得ると可決となるほか、総株主数の半分以上かつ総議決権の3分の2以上の賛成が必要であるなど、出席株主数が決議成立に影響を与える。
Q9.株主総会は年に何回?
A. 株主総会は、通常年に一度、期末から3ヵ月以内に開催される。一般的には、計算書類などの承認に加えて、取締役や監査役の選任、配当の決定などを決議する。このほか、合併や買収、新株の発行など重要な意思決定が必要な場合には、臨時株主総会が開催される。臨時株主総会が開催される場合には、年に複数回の株主総会が開催されることになる。
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文・新井良平(スタートアップ企業経理・内部監査責任者)