2030年度のワイヤレスIoT市場規模は2,710万デバイスを予測
~2026年度に向けては拡大基調が続くが、新たな通信規格へのシフトが進む2027年度以降ではシュリンクする見通し~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、BtoB向けワイヤレスIoTデバイスを調査し、通信規格別のワイヤレスIoT市場規模※、需要分野別の動向、将来展望などを明らかにした。ここでは、通信規格別のワイヤレスIoT市場規模、分野別の普及動向について、公表する。
※920MHz帯LPWA(Wi-SUN)、920MHz帯LPWA(Wi-Fi HaLow)、その他920MHz帯LPWA(SIGFOX、LoRa、ZETA、ELTRES、Sidewalkなど)、セルラーネットワーク(3G、4G/LTE)/セルラー系LPWA(NB-IoT、LTE-M)
通信規格別IoT市場規模推移・予測
1.市場概況
IoTの適用分野では、工場やオフィス・建物といった、有線の信頼性や安定性に根強いニーズがある分野もあるが、近年では無線通信の信頼性/利便性、柔軟性などが向上している。併せて、通信及びデバイスコストの低廉化や多様化もあって、ワイヤレスタイプのIoTシステムが増えている。 また今後は、屋外タイプの画像系ソリューション(画像系IoT)が増える見通しでもある。
画像系IoTの用途は、防犯/セキュリティや防災/災害監視、インフラモニタリング、圃場/生体監視、 エネルギー施設監視、遠隔医療などが想定される。画像系IoTの場合は、高速・大容量通信に対応したネットワークが必要となるため、無線通信規格の中ではセルラーネットワーク(4G/LTE、5G)やセルラー系LPWA(NB-IoT、LTE-M)、Wi-Fi Halow、Wi-Fi 6/Wi-Fi 7などが有望視されている。
本調査の対象となる通信規格(Wi-SUN、Wi-Fi HaLow、その他920MHz帯LPWA、セルラーネットワーク/セルラー系LPWA)において、2023年度のワイヤレスIoT市場規模は前年度比20.3%増の2,912万デバイスを見込む。通信規格別の内訳をみると、セルラーネットワーク/セルラー系LPWAが2,200万デバイス(構成比75.5%)と7割を超えており、次いで電力スマートメーター向けが主体のWi-SUNが632万デバイス(同21.7%)、その他920MHz帯LPWAが80万デバイス(同2.7%)となった。
2.注目トピック
高帯域Wi-Fi市場
Wi-Fi規格は2.4GHz帯から5GHz帯へと基本的に高帯域化しており、通信速度が速くなっている。Wi-Fi 6Eからは6GHz帯も対象になっている。
大容量データの高速通信が可能な高帯域Wi-Fiは、製造業や建設業、物流倉庫などでの利用がターゲットとなる。
製造業では、生産設備・機器からのデータ収集や、工具類の位置情報管理、ネットワークカメラの画像データ収集、AGVの運行管理/自動運転、圧力センサ・流量センサ・温度センサ/電力量計等の各種センサ類からのデータ収集、PLCからのデータ収集、産業用ロボットからのデータ収集などが対象業務となる。
建設業では、作業員の位置データや、重機・建機/部材の位置情報、作業ロボットの位置情報、危険位置アラート、監視カメラデータ収集、作業員のバイタルデータ収集、作業現場の環境情報収集、重機・建機の遠隔操作時のモニタリングなどとなる。
物流倉庫では、在庫品の位置情報や、フォークリフト等物流機器の運行管理、ネットワークカメラの画像データ収集、AGVの運行管理/自動運転、作業員のバイタルデータ収集、倉庫の温湿度情報、物品の位置情報、輸送中の温度管理などがターゲットになる。
3.将来展望
ワイヤレスIoT市場は、新型コロナウイルス感染拡大による行動制限などの影響を受けた2020年度から2023年度においてもおおむね好調を持続しており、2024年度での市場規模は前年度比8.7%増の3,165万デバイスと予測する。
当該市場はコロナ禍の逆風で減速した時期もあったが、行動制限などが緩和されたことで保留案件やペンディング案件も順調に回復し、さらにPoC(概念検証)から実装への進展も見られた。通信規格別では、電力スマートメーターへの導入が進んだWi-SUNの伸び率は減速したものの、IoTマーケットの中核をなすセルラー系LPWAを含むセルラーネットワークが好調で、当該市場の拡大を牽引した。
また今後は、コネクテッドカーなど自動車関連や、スマートメーターソリューションなどエネルギー関連、物流倉庫や製造業、建設業、介護施設での見守りなど位置情報系IoTシステムが牽引する見込みである。
但し、2025年度以降では、セルラーネットワークにおいて「3G/4G→5G」へのシフトが進み、本調査対象のセルラーネットワーク規格(3G、4G/LTE、NB-IoT、LTE-M)は縮小が見込まれる。この点を主因として、本調査対象市場全体としては2025~2026年度をピークにシュリンクする蓋然性は高いとみる。
調査要綱
1.調査期間: 2023年12月~2024年3月 2.調査対象: MNO(移動体通信事業者)、その他通信事業者、業界団体、ITベンダー、ユーザ企業等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話による調査、ならびに文献調査併用 |
<通信規格別IoT市場とは> BtoB向けワイヤレスIoT市場を対象に、以下の通信規格別マーケットを調査した。 ◇920MHz帯LPWA(Wi-Fi HaLow) ◇920MHz帯LPWA(Wi-SUN) ◇その他920MHz帯LPWA(SIGFOX、LoRa、ZETA、ELTRES、Sidewalkなど) ◇セルラーネットワーク(3G、4G/LTE)/セルラー系LPWA(NB-IoT、LTE-M) ※市場規模はIoTデバイス数ベースで算出した。 ※BtoB向けIoTデバイスは、スマートメーターや各種センサー、監視カメラ、タブレット、各種設備・機械、ドローンなど、通信機能を内蔵した機器が該当する。 |
<市場に含まれる商品・サービス> IoT端末/IoTデバイス、通信モジュールなど |
出典資料について
資料名 | 周波数帯別のワイヤレスIoTマーケット分析 ~セルラー系/920MHz帯LPWA/セルラー系LPWA/WiFi系/その他周波数帯の市場ポテンシャル~ |
発刊日 | 2024年03月26日 |
体裁 | A4 191ページ |
価格(税込) | 220,000円 (本体価格 200,000円) |
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