TSR情報
(画像=Sergey Nivens/Shutterstock.com)

企業経営にとって、有益な情報を効率的に取得することが必要不可欠なのは言うまでもない。特に近年は、コンプライアンス(法令順守)、情報漏洩の問題なども絡み合い、企業の信用情報を得ることが難しくなりつつあるようだ。そんな中で、大手経済系の日刊新聞やWebメディアが網羅できていない情報まで掲載している情報誌「TSR情報」の存在は意外と知られていないのではないだろうか。

情報誌「TSR情報」とは

THE OWNER編集部

「TSR情報」は民間信用調査の大手、株式会社東京商工リサーチが発行する紙媒体の情報誌だ。全国版は、原則祝祭日を除く毎日発行されている。また地方版は近畿、中部、神奈川などに40程度あり、発行回数は全国版とは異なった週1日から週3日のペースとなっている。

「TSR情報」の体裁は、A4版左綴じ、原則16ページ建て(表紙含む)、表紙・裏表紙、表表紙と裏表紙裏の4ページが4色カラー、記事面は原則横書きモノクロで構成されている。なお、地方版では独自情報の掲載も加わって24ページ建てとなるケースもある。

企業信用情報メーンに多彩なコンテンツをほぼ日刊で

THE OWNER編集部

情報誌のコンテンツは「民事再生開始決定」「民事再生法申請」「破産の申請・開始決定」「特別清算の開始決定」といった企業の信用情報を中心に、独自データをもとにした「データを読む」や自社取材による記事など、巻頭特集の記事や外部ライターによる寄稿などで構成されている。

企業の信用情報の記事には、経営破綻した企業の住所、設立年月、資本金、社長名、従業員数といった基礎データに加えて、破産管財人とその連絡先、破綻に至った経緯、債権者情報などがまとめられている。

特集記事「データを読む」では、東京商工リサーチが統計を示しながら独自に編集をおこなっており、調査・データ収集能力の高さが余すところなく発揮されているように感じる。

「TSR情報」を発行する東京商工リサーチ

「TSR情報」に掲載される記事は、大手新聞社の記事や記事のネタ元としても活用されるケースも多い。2020年では、「上場企業の個人情報漏洩・紛失事故」調査~2019年は86件、903万人が被害、サイバー攻撃増加で大型化~、地方の「独立系」百貨店の苦戦が鮮明に、2019年「粉飾決算」倒産調査~前年比2倍と急増、過去に渡る30年間の粉飾決算も~などをタイトルとした記事が掲載された。
そのため「東京商工リサーチ」の情報スタッフは、新聞記者をはじめとするマスコミ関係者とも良好な関係を築いていることが強みの一つだ。

そのうえ、「TSR情報」には20弱の連載記事があり、タイムリーなスポット記事が掲載されることもある。その出稿者は、株式メディア関係者、弁護士、商社の元審査マン、エコノミスト、大学教授、シンクタンク、実務系の社会保険労務士など多岐にわたる。

全国80拠点の活用が強み、Webも充実

東京商工リサーチは取材及び編集スタッフも充実している。情報スタッフは全国80数拠点に駐在し展開しているほか、東京都千代田区大手町の本社では20名を超える情報本部メンバーが編集やデータ構築に携わっている。こうして発行された「TSR情報」のユーザーは、大手・中小を問わず企業の審査・管理部門や営業部門のほか、業種的には商社、リース業が主となり、官公庁でも購読契約されている。発行部数は非公表としているが数万部を誇っているのではないだろうか。

「TSR情報」の年間購読料7万円(全国版、税別)の定期購読者は、限定無料の専用サービスとして「TSR情報Web」を付加価値サービスとして利用できる。

「TSR情報Web」では、上場企業倒産リスト、全国倒産件数月次推移、業種別倒産件数(月次)、負債情報1億円以上の倒産記事・債権者情報を検索できるほか、「事業停止」や「弁護士一任」などの速報をメールで受信し、その速報記事にダイレクトにアクセスできるサービスも定期購読に付随している。
また、「TSR情報」では主要ユーザーである銀行などの金融機関や企業の管理部門に向けた企業のブランディング広告の出稿需要も高まっているようだ。

今年は2年連続で倒産件数は増加と予想

2019年(1月~12月)の全国企業倒産負債額は過去30年間で最少の負債1兆4232億3800万円となった。しかしながら、倒産件数は8383件とリーマン・ショック以来11年ぶりの増加(TSR情報1月15日号)に転じた。

「TSR情報」編集責任者を務める東京商工リサーチ情報本部の原田三寛部長は、
「1984年は現在の3倍となる年間2万件を超える企業倒産がありました。この統計と比べると倒産企業数は大幅に減りました。しかし、今年2020年は昨年に続き2年連続で倒産企業数の増加が予想されます。事業承継の統計や休業・廃業の公的データが見当たらないため、今後はそういった信用情報など幅広く提供していくことが必要と考えています。業界的には地方の百貨店などが厳しいでしょう」と語る。

さらに、「今年は、粉飾決算の発覚が増えることを予想しています。金融債務の返済条件の変更でしのいでいる企業で業績改善が思うように進まない企業は、さらなる金融支援を受けることは難しく、息切れするケースが増加するでしょう」と原田氏は言う。

また、東京オリンピック・パラリンピック2020開催という明るい話題がある一方で、新型コロナウイルスの広がりによる経済活動への影響が懸念される。

「TSR情報」は一見すると、倒産情報など結果論のみを掲載する情報誌と捉えられることがあるかもしれない。しかし、企業信用データの分析や多彩な執筆陣の寄稿記事が、企業活動上では「他山の石」としてリスク・シグナルをいち早くキャッチする手段になるだろう。意外と知られていない「TSR情報」だが、有用性の高い情報媒体としてその存在を知っておきたい。

文・THE OWNER編集部

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