「何も対策を講じなければ2024年度の輸送力は14%不足する」とされてきた “2024年問題” が始まって10日が経過した。共同配送、モーダルシフト、リレー運送、宅配便の再配達対策など、物流各社や荷主企業による “対策” が順次発動されつつある。ブルボン、亀田製菓など新潟県内の菓子メーカー6社は「生産地共配」、ファミリーマートとローソンは東北地区で共同配送を、北越コーポレーションは古紙輸送をトラックから鉄道へ切り替える。宅急便各社は「置き配」制度の本格導入を発表、航空各社も貨物輸送の強化に向かう。
4月8日には一般ドライバーが有償で乗客を運ぶ日本版ライドシェアも始まった。地域は東京、神奈川、愛知、京都の特定範囲に限定、運行台数や運行時間帯も地域ごとに指定される。加えて、運行管理をタクシー会社が担う点が海外で一般的なプラットフォーマー型ビジネスモデルと異なる。ここが “日本版” と形容される由縁だ。規制緩和に対する既存業界からの反発は強く、現時点ではドライバー不足解消の決定打とは言い難い。とは言え、課題解決に向けて実証実験が始まったという意味において前進だ。
一方、需要そのものが縮小する中で対応を迫られる路線バス事業者の戦略オプションは限られる。大阪の富田林市で路線バスを運行する金剛自動車は不採算とドライバー不足を理由に昨年末に全路線を廃止した。九州の西鉄バスも全路線の3割で減便を実施、都内や埼玉県で路線バスを運行する国際興業も路線の減便や終バス発車時刻の繰り上げを余儀なくされた。運転手不足、利便性低下、更なる需要減という負のスパイラルが危惧される。
そもそも時間外労働の上限規制がこれほど重大な “問題” として顕在化した要因は、低賃金と過重労働が常態化した運輸業界に社会全体が支えられてきたことによる。トラックドライバーの労働時間は212時間、全産業平均は177時間、バス運転手の年間所得は399万円、全産業平均は497万円だ(2022年、「令和5年版交通政策白書」より)。政府は適正な価格転嫁、商慣行の見直し、DXによる生産性向上、荷主・消費者の行動変容、そして、構造改革を促す。競争条件の変化は新たなビジネスチャンスであり、活性化の起点となり得る。問題はその有効性が及ばない公共交通そして地方であり、ネットワークの空白地帯を作らないためにもこの視点からの問い直しが急務である。
今週の“ひらめき”視点 4.7 – 4.11
代表取締役社長 水越 孝