新型コロナウイルス感染拡大の影響による症例減や受診控えなど外来患者減からの回復がある一方、供給遅延や生産コスト高騰による採算性が悪化
~2023年度のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場は前年度比2.3%増の6,839億700万円を見込む~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場について調査を実施し、製品別市場規模推移、今後の成長要因、市場特性などを明らかにした。
1.市場概況
メディカルバイオニクス(人工臓器)製品とは、病院、クリニック、検査センター等で使用される体内植込み型及び関連装置の医療機器(デバイス)である。
体外循環を除いた人工臓器の市場では、より低侵襲な手術手技の発展、新たなデバイスの上市が市場の趨勢である。適用基準はあるものの、臨床では経皮的手術デバイスが継続して採用され、Open surgery(直視下手術)デバイスに影響を与えている症例や製品群は増えている。
また、慢性疾患においても、骨粗鬆症薬やリウマチ治療薬を投与される患者の増加が、一部ではあるが手術件数の変動要因になっている。
2022年度は新型コロナウイルス感染拡大による影響で抑えられていた症例数が前年度から引き続き回復し、症例によってはコロナ禍以前の水準やそれ以上になっている。
一方で、海外生産製品をはじめとした、原材料や輸送コスト高騰による製品納期の遅延や生産コストの増加を要因とする製品供給不足が深刻化している。このような状況下で、2022年度のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場(主要34項目68製品合計)を、前年度比1.4%増の6,687億8,400万円と推計した。
2.注目トピック
脳外科6製品の動向
メディカルバイオニクス(人工臓器)市場のうち、脳外科6製品の2022年度市場規模は前年度比0.3%減の103億9,100万円となった。
内訳をみると、脳血管内治療症例増加等の影響もあり脳動脈瘤手術クリップがマイナス推移、塞栓コイルを含めた脳血管治療用デバイス症例は増加傾向にある。水頭症などシャントバルブ症例は微増となった。また、放射線治療件数の増加もあり、脳外科領域では開頭術は減少傾向にあり、マイクロプレートシステムや脳外科分野で採用される人工骨の市場では厳しい状況が続いている。
3.将来展望
メディカルバイオニクス(人工臓器)の動向を診療科目別にみる。
胸部・心臓血管外科、循環器領域では、コロナ禍からの症例数の回復がある中、TAVI・TAVR(経カテーテル大動脈弁植え込み術)での人工弁は伸び率が若干鈍化、人工血管は腹部・末梢血管領域でのDCB(薬剤コーテッドバルーン)の影響もあり、減少推移である。
整形外科領域では、コロナ禍の影響による症例減少が回復傾向にあり、人工関節市場、脊椎固定システム市場ともプラス推移となった。
人工腎臓及び関連製品では、慢性透析患者数の伸び率は減少している中、前年度比微減となった。
この様な状況下、2023年度のメディカルバイオニクス(人工臓器)市場は前年度比2.3%増の6,839億700万円を見込み、2027年度の同市場規模は7,070億1,400万円になると予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2023年4月~2024年1月 2.調査対象: 国内メーカー及び輸入製品の製造販売業:販売元 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに電話取材調査併用 |
<メディカルバイオニクス(人工臓器)市場とは> 本調査におけるメディカルバイオニクス(人工臓器)市場とは、病院やクリニック、検査センター等で使用される体内植込み型及び関連装置の医療機器(デバイス)を指し、インプラント材や体外循環関連装置・製品(主要34項目、68製品)を対象とし、国内メーカー及び輸入製品の製造販売業:販売元ベースで算出した。 主なデバイスとしては、循環器分野では人工心肺や人工血管、ペースメーカー、人工弁等、整形外科分野では人工関節や人工骨、人工靭帯、各種プレート、その他分野は人工腎臓(透析)、皮膚欠損用創傷被覆材、人工肛門・膀胱(ストーマ)、各種ステント製品等が該当する。 |
出典資料について
資料名 | 2023年版 メディカルバイオニクス(人工臓器)市場の中期予測と参入企業の徹底分析 |
発刊日 | 2024年01月30日 |
体裁 | A4 790ページ |
価格(税込) | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
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