食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈需要は交雑種中心、輸入牛のコスト高でホルスの引合いも〉
2月は需要の端境期とあって牛肉の末端消費は弱く、国産・輸入ともにスソ物を使った切落とし・小間材、煮込み系が中心となった。例年より早く春一番が吹いた後に寒波の到来で関東の都心部でも降雪に見舞われるなど、日によって寒暖差が激しく、量販店の精肉の売行きはスライス、焼肉ともに伸び悩み、切落としのような通年商材が動く結果となった。輸入牛肉もコスト高で販促を組み難く、交雑種の2等級や国産豚などに引合いがシフトした。こうした状況を受けて2月の枝肉相場は、和牛は前月から値下がりした半面、交雑、ホルスが値上がりするなど明暗が分かれた。

3月は3週目から量販店の棚替えが進み、スライスや団子関係から焼肉商材のコーナーが広がるほか、グロッサリー部門も鍋スープから焼肉のタレ、ステーキソースへの切り替えが進むとみられる。アフターコロナでの卒業式の謝恩会や歓送迎会シーズンで外食需要も期待できそう。ただ、春先需要に向けた動きがあるのは月後半からとみられる。3月の枝肉相場(東京市場)は和牛去勢A5で2,500~2,600円、交雑去勢B3で1,600円前後、ホルス去勢B2で900円前後と予想される。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、3月の成牛出荷頭数は前年同月比7.0%減の8万6,800頭と前年をかなりの程度下回るとみている。内訳は、和牛が同3.5%減の3万9,100頭、交雑種が同5.7%減の2万600頭、乳用種が同11.6%減の2万5,800頭と見込んでいる。個体識別情報の飼養頭数から推計すると、乳用種のうち去勢は18%減の1万1,000頭程度と予想される。2021年秋口から前年を上回る出荷が続いてきた交雑種だが、ここにきて天井を打った感がある。一方、輸入牛肉の供給は、機構の予測によると、3月はチルドが前年同月比16.7%減の1万4,800t、フローズンが同1.5%減の1万8,700tと少なく、外貨高と円安によってコスト面でも厳しい状況が継続する見通しだ。

〈需要見通し〉
気象庁の季節予報によると、3月も中旬から月末にかけて全国的に平年よりも高い気温が予想されている。量販店も各社3週目から棚替えが進むとみられ、桜前線の到来とともに春らしい売り場づくりが展開される流れだ。もっとも、精肉売り場の焼肉・ステーキ関係の尺数は概ね通年で安定しているため、尺が広がるのはプルコギなどタレ漬け関係が先行しそう。BBQ商材などの動きが本格化するのは4月に入ってからとみられる。外食では卒業式の謝恩会や歓送迎会などの宴会需要の復活が期待されるところ。インバウンド需要は高級店から、食べ放題や居酒屋など大衆店にシフトしていると指摘されており、一部の銘柄牛を除いて高級和牛は苦戦が続きそうだ。部位・畜種の動向としては、小間材・切落とし関係のモモ系は安定した引合いが継続し、月後半からバラ関係の荷動きが強まるとみられる。カタロースはザブトンなどスペック対応である程度の動きが期待される。その半面、ロース、ヒレなどの高級部位の消化が課題となりそうだ。畜種では引続き和牛よりも交雑種の2~3等級が中心とみられる。輸入牛肉のコスト高もあり、交雑の下位等級の相場が上昇すれば、ホルスへの引合いが強まりそうだ。

〈価格見通し〉
3月は例年、「春分の日」がある4週目から春先需要の手当てで枝肉相場が上向いてくる流れにある。ことしも基本的にはそのパターンとなるが、交雑種はすでに去勢B3で1,500円台後半を付けており、月間通して確りした相場展開となりそうだ。月間平均では、和去A5で2,500~2,600円、A4で2,200~2,300円、A3で2,000~2,100円前後、交雑去勢B3で1,600円前後、B2で1,550円前後、ホルス去勢B2で900円前後と予想される。

〈畜産日報2024年3月7日付〉