相続財産のなかで、現金や預金などは、被相続人が亡くなった時のそれぞれの残高が相続税の評価額となりますが、土地についてはそれぞれの土地の利用区分に応じて評価をおこなわなければなりません。
しかし、相続が発生してからでは相続税対策はできません。
相続財産の多くは自宅の土地である場合が多いので、被相続人の生前中にその土地の概算の評価額を知っておくことで、生前贈与などの相続税対策や相続発生時の親族間でのトラブルを回避させることもできます。
土地の評価方法
評価をおこなう土地に路線価が定められている場所は、倍率については「国税庁のホームページ」に掲載されている路線価に基づいて評価をおこない、路線価が定められていない場所は一定の倍率を用いて計算をおこないます。
土地の種類 | 評価方法 |
宅地 | 路線評価方式 または 倍率方式 |
農地・山林 | 倍率方式 または 宅地比準方式 |
雑種地 | 近傍地の1㎡あたりの価額に補正をし、面積を乗じる |
路線価方式による評価
路線価方式での計算方法は土地の面している道路に、1㎡あたりの評価額(路線価)が定められており、その評価額に面積を乗じて計算する方法です。
この路線価は、毎年1月1日現在の土地の価格(公示価格)の約8割程度になるように設定されています。
また、土地は立地状況や利用状態などにより、形状が間口の狭小な宅地や崖地、四方道路などの標準的な土地ではない場合、定められた補正率を用いて計算をおこないます。
倍率方式による評価
市区町村が定めるその年の固定資産税評価額に、国税局長が地域ごとに定める一定の倍率を乗じて、評価額を算出します。
倍率については「国税庁のホームページ」に記載があるのでそちらを参照します。
土地の地目ごとの評価
土地には、その土地がどのような状態なのかを表す地目という23種類の区分があります。
それぞれの地目に合わせて、適した評価方法を用いて計算しなければいけません。
宅地の場合
不動産登記事務取扱手続準則では、宅地は「建物の敷地及びその維持、若しくは効果を果たすために必要な土地」となっています。
具体的には、自宅の建物が建っている土地や植物などを栽培している菜園等の土地などが挙げられます。
宅地に該当する土地は、その土地に路線価が設定されている場合は路線価方式で、それ以外の場合には倍率方式で評価額を計算します。
農地・山林の場合
田畑などの農地や山林の場合には、通常であれば倍率方式で評価額を計算します。
住居や商店などの建物が多い市街地や、その周辺にある農地・山林の場合は将来的に宅地に転用することができることを考慮して、その農地・山林を宅地とみなした場合の1㎡あたりの評価額から、宅地に転用した場合の1㎡あたりの造成費用を差し引き、その土地の面積をかけて算出する「宅地比準方式」を用いて評価額を計算します。
また、農地には4つの種類に区分することができ、それぞれの区分に応じて評価額を計算しなければならず、倍率方式を用いて評価額を計算するのか、それとも宅地比準方式を用いて評価額を計算するのかを判定する必要があります。
純農地の場合
純農地は、主に耕作などを目的とする純粋な農地のことを指します。
純農地の場合は倍率方式にて評価額の計算をおこないます。
中間農地の場合
中間農地とは市街化が将来的に見込まれる農地を指し、第2種農地とも呼ばれます。
具体的には、鉄道の駅やバスターミナルなどの場所から約500m圏内にある農地などを指します。
中間農地の場合は、倍率方式にて評価額の計算をおこないます。
市街地周辺農地の場合
市街地周辺農地とは現在市街化が進んでいる段階の農地を指し、第3種農地とも呼ばれます。
具体的には、鉄道の駅やインターチェンジなどの場所から300m圏内にある農地などを指します。
市街地周辺農地の場合は、市街地農地として評価した金額の80%相当額が評価額となります。
市街地農地の場合
市街地農地とは、すでに市街地となっている地域にある農地を指します。
市街農地の場合は、宅地比準方式または倍率方式を用いて評価額を計算します。
雑種地の場合
雑種地とは、駐車場や資材置き場といった、いずれの地目にも該当しない土地のことを指します。
雑種地の場合は、近隣にある類似する土地の1㎡あたりの価格を基とし、雑種地の位置や形状等の差を考慮した評価額にその雑種地の面積を乗じて評価額を計算します。
マンションの1室の場合
土地全体を所有しているのではなく、マンションなど集合住宅の1室だけを所有している場合は、通常の評価方法とは少し異なります。
これは、マンションの1室はそのマンションの土地全体を所有しているのではなく、あくまでもマンションの1室に基づく敷地権割合と部屋面積に基づく専有部分の建物を所有しているにすぎないためです。
具体的な評価方法は、マンションが建っている土地全体の評価額を路線価方式、または倍率方式で求め、その評価額に自分の持分割合を乗じて土地の評価額を計算します。
計算した土地の評価額にマンションの部屋ごとに定められている固定資産税評価額を足した金額がマンション1室の評価額となります。
土地の評価額を計算してみよう(路線価方式)
評価をおこなうにあたり、はじめに確認しなければならないことがあります。
それは、その土地に路線価が設定されているかどうかです。
倍率については「国税庁のホームページ」にアクセスし、評価倍率表にて評価をおこなう市区町村を探し、該当する土地の「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」欄に1.1などの倍率ではなく「路線」と記載されていた場合は、路線価方式で評価をおこないます。
路線価方式の場合は路線価図を参考とし、該当する土地の路線価を調べます。
その路線価に面積を乗じて評価額を計算するのですが、土地の形状が標準的な形でない場合には、さらに補正率を乗じなければなりません。
標準的な形以外の土地としては複雑な形状、または間口が極端に狭いなどがあり、それぞれの形状ごとに補正率が定められています。
また、これらの標準的な形以外の土地の場合の計算方式は通常の計算方式と異なり、複雑になる場合もあるので注意が必要です。
路線価方式での土地の評価額を求める数式は、下記のとおりとなります。
評価額 = 路線価 × 補正率 × 面積
土地の評価額を計算してみよう(倍率方式)
「国税庁のホームページ」にアクセスし、評価倍率表にて評価をおこなう市区町村を探し、該当する土地の「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」欄に「路線」ではなく、1.1などの倍率が記載されていた場合は、倍率方式で評価をおこないます。
倍率方式の場合は、該当する土地の固定資産税評価額を調べることから始めます。
市区町村が発行する土地の評価証明や、毎年市区町村から発行される固定資産税納税通知書に記載されている土地の評価額をもとに計算をおこなっていきます。
固定資産税評価額を調べることができれば、先ほどの国税庁ホームページにある固定資産税評価額に乗ずる倍率表に記載されている倍率を乗じることで評価額を計算することができますが、数式で表すと下記のとおりとなります。
評価額 = 固定資産税評価額 × 定められた倍率
よく混同するのが、固定資産税評価額と土地の価額です。
市区町村が発行する評価明細書の中には土地の価格と評価額が記載されている場合がありますので、この2つの価格を間違えないよう注意しなければなりません。
まとめ
土地の評価をおこなう場合には、まずは路線価方式か倍率方式なのかを判断しなければなりません。
倍率方式の場合は、固定資産税評価額に定められた倍率を乗じることで比較的簡単に求めることができますが、路線価方式での評価となると非常に手間がかかってしまう場合が多いです。
土地の形状が綺麗な四角形になっている場所などは限られているため、多くの場合は補正率や加算率などを加味しながら計算をおこなっていく必要があります。
しかし、それらの判断や計算などを未経験者がすることは非常に難しく、間違いのもととなってしまいます。
間違いが起きれば相続税申告自体に誤りがあるということになりますので、相続税申告後に訂正や修正申告をおこなわなければない場合もあります。
そのため、なるべく土地の評価などに関しては、相続などの案件を専門としている税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。
(提供:相続サポートセンター)