矢野経済研究所
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2023年の国内車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場は7,850億円の見込み、2030年には1兆9,130億円に達すると予測

~2021年の制御系と車載IT系の構成比は制御系が70.3%、車載IT系が29.7%と推計、2030年には逆転の見込み~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、ソフトウェア開発ベンダーが手掛ける国内の車載ソフトウェア市場を調査し、ソフトウェア開発ベンダー側からみた制御系ソフトウェアや車載IT系ソフトウェアの動向、開発体制の変化、課題、今後の方向性等を明らかにした。ここでは、2030年までの車載ソフトウェア市場規模、制御系と車載IT系の構成比予測について、公表する。

車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場規模推移・予測

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1.市場概況

車載ソフトウェアは、大きく制御系と車載IT系に分類される。
制御系は自動車を電子的に制御するECU※1ユニットから構成され、ADAS(先進運転支援システム)などの高度化に伴い、搭載数が増加している。車載IT系はCASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)を志向し開発されており、クラウドベースでの運用により、エンタテインメントを含むさまざまな車載関連アプリケーションが稼働することとなる。
制御系や車載IT系いずれも対象とした車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場規模は、ソフトウェア開発ベンダーから自動車メーカー(OEM)や自動車部品サプライヤー(Tear1等)への渡し価格ベースで2021年が3,770億円、2022年は前年比135.3%の5,100億円、2023年が同153.9%の7,850億円となる見込みである。
また、制御系と車載IT系の構成比について、2021年は制御系が70.3%、車載IT系が29.7%と推計した。

※1 ECU(Electronic Control Unit)とは車線維持システムや車間距離制御システムなどを電子制御するコンピュータで、近年、一台当たりの搭載数が増加しており、搭載体積やコスト増が課題となっている。

2.注目トピック

SDVの実現に向けて実装する車載ソフトウェアの構成を整理

SDV※2の実現に向けて、自動車メーカー(OEM)や自動車部品サプライヤー(Tear1等)、協力会社(ソフトウェア開発ベンダー)は、特にCASEを志向した車載ソフトウェアの研究開発に取り組んでおり、制御系ソフトウェアが各専門領域に特化した個別最適であるのに対して、車載IT系ソフトウェアは全体最適でシステム全体をデザインしていく点に大きな特徴がある。車載IT系の構成要素としてAUTOSAR Adaptive Platformを始めとした標準規格に準拠したシステムや、ソフトウェアプラットフォームである車載OS(Operating System)などがある。

SDVの実現に際しては、現在、車両に搭載している制御系と車載IT系が併存した形になるものと考える。
但し、前者はクリティカルな(リアルタイム処理が求められる)部分のECUを除いて、搭載体積やコスト増が課題となっていることもあり、統合ECUへと収れんしていく方向にある。
他方、車載IT系については、さまざまな車載関連アプリケーションが稼働することとなる。ソフトウェア構成をレイヤ別に整理すると、レイヤ1であるインフラはHPC※3からなる。HPC上で稼働するレイヤ2では、AUTOSAR Adaptive Platformを始めとした標準規格に準拠したシステムが稼働する。そして、レイヤ3では、ソフトウェアプラットフォームである車載OSが保有するAPI(Application Programming Interface)を活用し、クラウド上の開発環境を通じて、エンタテインメントを含む多彩な車載関連アプリが開発されていくほか、OTA(Over The Air)でソフトウェアやアプリの更新を行っていく構成となる見込みである。

※2 SDV(Software Defined Vehicle)は、車載ソフトウェアによって自動車の機能が更新されていくことを前提に設計・開発された車両を意味する。
※3 HPC(High Performance Computing)は、複雑な計算や大規模データ処理を高速で行うことが可能なソフトウェア

3.将来展望

2025年の車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場規模は9,660億円になると予測する。OEMや自動車部品サプライヤーがソフトウェア開発ベンダーに対して車載IT系ソフトウェアの研究開発案件を積極的に委託することで、制御系と車載IT系の構成比は、徐々に車載IT系の構成比が大きくなる見通しである。
こうした開発案件の成果物が実車に搭載されるのは2030年頃と考え、2030年の車載ソフトウェア市場規模は1兆9,130億円に達すると予測する。制御系と車載IT系の構成比は逆転する見込みである。

調査要綱

1.調査期間: 2023年10月~12月
2.調査対象: 車載用ソフトウェア開発ベンダー
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材(オンラインを含む)、ならびに文献調査併用
<車載ソフトウェアとは>
車載ソフトウェアは、大きく制御系と車載IT系に分類される。
制御系は、「走る・曲がる・止まる」などの各機能を担うECUユニット(CPU)から構成され、自動車を電子的に制御する仕組みを担っている。一方、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric) を志向したSDVを前提として設計・開発されたソフトウェア群を、本調査では車載IT系ソフトウェアと定義する。

<車載ソフトウェア市場とは>
本調査における車載ソフトウェア市場とは制御系や車載IT系いずれも対象とし、ソフトウェア開発ベンダー(協力会社)から自動車メーカー(OEM)や自動車部品サプライヤー(Tear1等)への渡し価格ベースで算出した。
なお、OEMやサプライヤーが自社で開発する車載ソフトウェア費用や、研究開発費、設備投資等は含まない。
<市場に含まれる商品・サービス>
ソフトウェア開発ベンダーが手掛ける国内の車載用ソフトウェア

出典資料について

資料名2023 車載用ソフトウェア市場の実態と展望 vol.1協力会社編 ~SDV勃興がもたらす新アーキテクチャおよび車載OSの未来~
発刊日2023年12月20日
体裁A4 180ページ
価格(税込)275,000円 (本体価格 250,000円)

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