「成功させるM&Aのこつ」
(画像=supergenijalac/Shutterstock.com)

(聞き手 日本M&Aセンター 渡邊大晃)

― 日本M&Aセンターで仲介させて頂いた株式会社ドライバースタンド(以下「DS社」)の買収後、約1年半が経過しました。その後の状況についてお聞かせ頂きたいと思います。

堀江 お陰様で、DS社は、当社グループ入り以降も順調に業容を拡大しております。M&Aのシナジー効果を早くも大きく発揮しはじめたぞ、という感じです。

― シナジー効果はどのようなものだったのでしょうか?

堀江 DS社の強みを更に伸ばし、弱みを補完できたのではないか、と考えております。DS社は過去複数回、親会社が変わるという経緯もあり、長期的な視点での投資ができない状況でした。我々と一緒になることにより、新たな出店3店舗、またイエローハット店内でのテナント出店3店舗と、合計6店舗を新規出店し、「攻め」へシフトすることができました。DS社で苦戦していた四輪部門は、当社のバリューチェーンや仕入パワー、あるいはブランドを活用することにより一気に稼げる部門へ変貌しました。また間接部門の効率化も積み重なって大きな効果が出始めております。

― 既存店舗の状況は如何でしょうか?

堀江 昨対比で全て上回って推移しております。売上は、昨対比105%という市場環境を考えると極めて高い数字です。経営陣、幹部社員、従業員は一切変更しておりませんので、同じメンバーの頑張りと、当社グループの経営資源が結びついて、早くも結果を出していることが分かります。

― 成功を導くために、M&A後はどんなことを心がけておられますか。

堀江 最も大事な要素は人材です。中途半端に経営に口を挟むことはよくないですから、買収後も、特別な事情がなければ、経営は元々の経営陣や幹部社員に任せて自主性を尊重しております。もちろん、随時相談にのり幅広い視点でアドバイスできる体制や、インフラ管理体制の共有化は行いました。余談になるかもしれませんが、私の持論として、「純血主義では企業成長は行き詰まる」と考えています。出身母体の差別なく、実力に応じて組織の中で活躍できるポジションを与えられる環境は、当社の成長の原動力になっています。

また、成長戦略に必要な投資は、我々グループ全体の将来の利益に直結しますので、どんどん行うようにしております。DS社に対しても、短期的利益のためコスト削減ばかりに注力するということはありません。「もっと出店(投資)しろ、もっと広告宣伝費をかけろ」と、逆にDS社側でびっくりしたかもしれません。

さらに、お譲り頂いた会社の創業オーナー一族や、経営を任された社長をリスペクトするということも大事にしております。私自身、当社創業オーナーの苦労を身近で見て、一通りの経営者の悩みは体験してきたつもりです。規模の大小にかかわらず、根っこにある「創業者の志」「経営者の名誉」を守ることは、とても大切なことです。例えば、社長である私が買収先会社の社長を偉そうに呼びつけるようなことをしたら、それを見ている私の部下も真似をするでしょう。たちまちグループ全体にその悪影響が波及し、新しく仲間になった会社のメンバーのモチベーションをあっと言う間に下げてしまいます。これは絶対にやってはいけないことだと思います。

― 最後に、今後どのようなM&Aを検討されておられますか?

堀江 同業界、関連業界、当社と事業シナジーが期待できる会社であれば、規模の大小はまったく気にしておりません。たとえ1店舗のカー用品店でも、地域のお客様のカーライフを支えており、そこで働く従業員の方を含めて、地域経済を支えている訳です。その会社が無くなってしまったほうが競争相手が減って良いのでは、という考え方もあります。しかし我々は、成熟縮小市場といわれるカー用品市場において、一定の需要が続くことが重要と考えます。ですから、競争相手が無くなることにより、そのマーケットが完全消失してしまうことをリスクと考える少し変わった会社です(笑)。またその会社の業績が悪くても、当社グループのインフラを活用すれば利益体質にする自信はあります。

― 本日はお忙しい中、大変ありがとうございました。今後のさらなる成長・発展を心より祈念いたします。

堀江康生氏(代表取締役社長 株式会社イエローハット)

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