食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

下期の製油業界の課題の一つは、家庭用オリーブ油の価格改定による需要減の対応だ。

欧州の干ばつによるオリーブの最大産地スペインでは2年連続となる不作がほぼ確実で、原料価格高騰を受け、製油メーカー各社は再度の価格改定を余儀なくされた。

また、上期の家庭用市場は金額ベースで史上最高を更新したと見られるが、食品全般の値上げから消費者の節約志向が高まっており、物量は減少傾向にある。業務用については数次の価格改定を経てコストに見合った適正価格での販売が継続されているが、こちらも物量減少が課題だ。

新型コロナの5類移行で外食市場は回復しつつあるものの、揚げ物メニューの多い居酒屋業態の数字は2019年水準まで戻っていない。インバウンドはすでに2019年レベルに戻っており、日本への団体旅行規制を解禁した中国からの増加も今後見込まれるが、外食・中食ユーザーが油の使用量を減らす動きは定着するという見方もある。

日清オイリオグループ調べによる家庭用食用油の上期(2023年4~9月)推定市場規模は、金額で1%増の910億円となり、上期として過去最大を更新した。そのうち、キャノーラ油と健康系オイルなどを含む汎用油トータルで4%増の310億円となった。

拡大をけん引してきたオリーブ油は3%減の204億円、ごま油は2%増の187億円となっている。アマニ油などサプリ系オイルは9%減の70億円となった。情報番組での露出の減少に加え、嗜好性が強く、高単価商品のため買い控えの対象になったと見られる。そのような中、MCT(中鎖脂肪酸)は53%増の19億円と大きく伸長し、えごま油を抜いてアマニ油に次ぐ油種に。こめ油は13%増の87億円と引き続き堅調だ。

一方、物量については、日本油脂検査協会の食用植物油の4~9月のJAS格付実績によると、家庭用は3.8%減の11万5,505t、業務用は7.7%減の16万8,572t、加工用は0.9%減の29万8,302tと、マイナスで推移している。2019年比では家庭用18.9%減、業務用8.5%減、食品メーカー向けの加工用3.8%減といずれも水面下だ。家庭用と業務用ともに物量減少が課題となっている。

下期の方針として各製油メーカーは、家庭用ではオリーブ油の安定供給に努めるとともに、需要維持や販売数量の維持を方針の一つに掲げている。値ごろ感を出すために容量のダウンサイジングやキャノーラ油とのブレンド油、健康機能を代替するこめ油やひまわり油といった高付加価値油の提案が行われている。新商品では、使用量などが半分になることを訴求する商品や、紙パックを採用した商品で複数メーカーのラインアップがそろったことで、店頭での存在感も出てきた。

業務用は、引き続きコストに見合った適正価格での販売に取り組むことが方針として掲げられている。そのほか、環境負荷低減につながる商品や食のプロに向けたサイト開設、粘度のある油脂を新たな用途で販売などが進められている。

〈大豆油糧日報2023年12月21日付〉