今期ここまでのマーガリン市場は、家庭用は2022年9月の価格改定に加え、2023年4月には乳価改定があった。さらに業務用では人流回復に伴い土産菓子などの需要が戻っており、風向きが変わり始めた。
家庭用マーガリン市場の上期(4~9月)は、金額ベースで前年を超えたと推定される。2023年4月に実施された乳製品向けの乳価(生乳取引価格)の引き上げに伴いバターが値上げされ、マーガリンに一層の値ごろ感が生まれたことが追い風となった。
カテゴリ別では、インテージSRI+によると、プレーンタイプ1%増、ヘルシータイプ1%減、グルメタイプ(バター風味・バター入り)7%増、ケーキ用が3%減だった。一方、物量ベースでは、プレーンタイプが12%減、グルメタイプが2%減など、金額ベースと物量ベースでギャップがあった。
これは、2022年9月に各社で実施されたマーガリンの価格改定によるものだと考えられる。容量別で見ると、小容量(200g未満)のプレーンタイプが、値ごろ感が受け入れられたことで大きく伸長したもようだ。
この市場実績についてメーカーは、「10年以上のダウントレンドに加え、2021年10月に続く2022年9月の価格改定もあり、市場実績は大きく落ちるだろうと予想していた。しかし、バターの値上げにより、マーガリンとの価格差が開いた。マーガリンの値ごろ感は大きな強みとなっており、4月以降、相対的に際立ってきている」と説明する。
各社、自社の強みを生かした商品の拡販に努める印象だ。明治は、チューブマーガリンを事業の柱の一つとして育てていく方針だ。雪印メグミルクは、引き続き「ネオソフト」で増量キャンペーンを実施するほか、ウェブ動画のプロモーションを仕掛け、新規購入やリピート購入を増やす。マリンフードは、プラントベーススプレッド「植物バター」を重点販売する。
〈業務用は土産菓子や外食向けの需要戻る、PBF製品の認知度向上や提案強化〉
業務用加工油脂の動向は、最終製品のダウンサイジングに伴い使用量が減少する傾向は変わらずのようだ。ただ、人流が回復したことで、土産菓子や外食向けの需要が戻り、復調に向かっている。
安価な汎用品と、高付加価値品とでニーズが二極化し、高付加価値品では品質向上や食品ロス削減、省力化に寄与する製品が引き続き好調だ。
各社力を入れているプラントベースフード(PBF)については、市場が活気づいた様子は見られないものの、「関心が高まっている」との声が複数聞かれる。インバウンドの回復などを受け、外食、ホテル、中食の分野へ開拓を進めるほか、海外の展示会に出展するなど、積極的に認知度向上や提案強化に努める。
PBF製品では、例えば長期的な不足が予想されるラードを代替できる植物性ラードの引き合いが引き続き強かった。加えて、卵不足は解消されたものの、価格は高止まりしていることから、卵を一部置き換えられる機能性素材や、植物性カスタードなどの引き合いが増加した。
〈大豆油糧日報2023年12月7日付〉