MA Channel:ちょっとためになるコラム
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ファンドを活用して成長路線を描こう

日本における日本独自のファンド活動の歴史は長く、おおよそ25年が経過しています。皆様も、メディアを通じて「ファンド」という言葉を見たり聞いたりしていると思います。近年特にメディアに掲載される機会が増えていますね。

私が当社で働き始めて10年超が過ぎましたが、その間で「M&A」という言葉は広く世間に浸透し、いまや多くの経営者の方々が「M&A」についての知識をお持ちになっています。
一方、メディアを通じて触れる機会は増えているものの実際に「ファンド」、とりわけM&A世界で登場する「プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)」というものについて正しく理解している経営者の方はまだまだ少ないように感じます。
以下、「プライベート・エクイティ・ファンド」を単純に「ファンド」とここでは呼ばせていただきす。

知っているようで知らないファンドの実態について、ご紹介していきましょう。

ファンドと聞いて何を思う?

お会いする経営者の方々に、「ファンドに対してどのようなイメージをお持ちですか?」と伺うと・・・
「ハゲタカ」「のっとり」というネガティブな回答が多いのが現状です。
世の中のファンドのイメージとして、資本を武器に現経営者や従業員が望まない敵対的な買収を仕掛けたり、人員削減に始まる過激な経営の合理化を行うなど負のイメージが強いようです。

一方で、M&Aについて深く理解しファンドとの取り組みについて学ばれた方は、提携のお相手候補としてはじめからファンドを要望する方も増えています。
圧倒的なマイナスイメージのファンドを提携の相手先として選ばれる経営者の方が増えている―それは、一般の企業間のM&Aとは違う、ファンドならではの優位点に起因します。

事例紹介:IPOを目指す過程で、ファンドの活用を検討

ここで一つの事例をご紹介します。

事業を興して数十年が経過してビジネスモデルも確立、近年においては毎期2桁成長を実現していた創業オーナーがいました。
このオーナーは、個人としては「ある年齢では引退して自由な時間を過ごしたい」と創業時から考えていらっしゃいました。年齢を重ねて引退を考えるようになり、周りの人たちにそういった自分の考えを漠然と話したところ、「IPOできる経営内容なのにもったいない!」と多くの人から言われて改めて自分の会社をどうするか検討するようになりました。

オーナーがひとつの選択肢として浮かんだのが、“IPOを目指した事業承継”だったそうです。あくまで、個人の目標は“事業承継”ですから、“IPOを目指す”という形にとらわれず、あらゆる可能性も模索されました。
その中で、“ファンドの活用”についても勉強したそうです。実際に多くのファンドの方々とお会いして話をすると「ファンドと組めば社内体制の課題が解決し、事業も更に成長していくのではないか」という思いが確信に変わりました。

ファンドからの提案と思いの変化

ファンドは、対象会社を深く理解して提携後正しい成長に導くべく、提携前でも多くの時間を費やして企業研究を行い、オーナーとディスカッションを行います。
先述のオーナーも同様に同社を深く研究されたファンドから、事業支援とIPOに向けた技術支援の両面で提案を受けました。

一方で、ディスカッションを進めるうち、IPOの現実性も感じることができ、これまで抱いていた引退の想いは消え、経営者として続投していきたいと思うようになっていました。
すると、ファンドから新たな提案として、IPOに向けたオーナーによる株式の一部継続保有の打診がありました。
ファンドの担当者曰く、「オーナーのIPOに対する気持ちは強くなっていたので、単に買収ではなくIPOを目指したJVのイメージでオーナーとしての側面を残すべきだと感じた」とのことです。「売却後は会社との関わりが薄くなっていくんだな」と寂しく感じていたオーナーとしては予期せぬ嬉しい提案で、驚きとともに新たなやる気に繋がり、ファンドへの売却を決断されました。

“やりたくてもできなかったこと”が実現される提携

現在この会社がファンドから具体的に受けている支援としては、ガバナンス・会計・システム・組織の強化等のIPOに向けた支援と、海外進出支援の2本柱です。
ガバナンス・会計・システム・組織強化については、オーナーも長く課題意識があったものの手をつけられなかった分野でした。海外進出については、今後の事業成長の柱として取り組みたかったもののこれまでは社内資源の問題で劣後していました。
オーナー経営時代に着手することのできなかったこれら2点ですが、ファンドの力を借りて実行することができるようになりました。
この会社の成長はあらゆる面で加速し、組織体制が強化されるとともに、業績も順調に伸びており増収増益を続けています。オーナー自身はもちろん、従業員全員が提携後5年内のIPOを具体的に肌で感じるレベルになっており、社内が非常に活性化しているとのことです。

ファンドは経営戦略の一つの選択肢

「M&A」は多くの経営者から関心を持たれ浸透し、一つの戦略として認知されてきました。同様に、経営戦略の一つの選択肢としてファンドとの取り組みが正しく理解され浸透していけば、日本の中堅・中小企業の未来の選択肢が広がると思っています。

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プロフィール
日本M&Aセンター 役員室 部長
能登 雄太(のと・ゆうた)

2005年日本M&Aセンターに入社。関与したM&A件数は100件を超える。現在はプライベートエクイティファンドによる投資保有銘柄へのadd-on、EXITの支援にかかわるM&Aを手掛ける。2017年4月、ファンドとのM&A協働を行う部門の責任者に就任。
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