せっかくつないだM&Aの縁も、切れてしまっては大惨事
巷では時折耳にする、M&Aに関するトラブル。
「M&Aは三方良しと言っても、実際はどうなの?!」と皆さんも気になる点かと思います。そんな皆さんの不安、トラブル事例をご紹介しながら解説するシリーズ第2弾!
こちらは無事にM&A成約まで至ったようですが・・・?
買主:
「対象会社の幹部社員が当社のことを良く思っていないようだ。当社から派遣した役職員との間でやや険悪な雰囲気になっている。」
売主:
「今回のM&A後の新体制に対して、古参の幹部から不安の声が上がっている。『今後の事業運営方針や自分たちの処遇が不透明だ』と詰め寄られた。これでは今いる社員たちがそろって辞めてしまう。取引先からも不安の声が出ている。今回のM&Aを無かったことにできないのか。」
社員や取引先がM&Aについて不満を抱いている非常に危険な状況ですね。このままの状況で社員・取引先が離れていってしまっては、事業価値の源泉は毀損し相乗効果は期待できなくなるしょう。
M&A成立後のトラブルは、時に大きな訴訟問題に発展します。
トラブル、M&A成立前と後
M&A成立前のトラブルは、調整の余地がありますから専門家による対応によって解決することが可能な場合があります。解決が困難な場合はブレイクとなり、交渉を進めてきた両社にとっては時間的・精神的ロスが生じます。ただし、M&A成立前のため、大きな訴訟問題にまで発展するようなケースは稀です。
一方、成立後のトラブルでは少し事情が異なってきます。調整の余地がないため、大きな訴訟問題に発展するケースもみられます。
M&Aにおいては、トラブルの発生が遅れるほど解決が難しくなり、痛手が大きくなる傾向にあることを覚えておいて下さい。
とはいえ、M&Aプロセスにおけるトラブルの種=リスクを適切に排除しておけばトラブルは発生しませんし、M&Aは両社の成長発展の未来をもたらします。
リスクを排除するためには、豊富なM&Aの経験・ノウハウが必要です。トラブル回避の視点から見ても、専門家を通してM&Aをするメリットは非常に大きいものです。専門家に相談し、しっかりと準備をし、リスクを排除して進めることが重要なのです。
M&Aプロセスで起こるトラブル:周到なPMI準備(ポストM&A)
M&Aは目的ではなく事業戦略実現の手段―
つまり、M&A成立初日が本当の意味でのM&Aスタートです。M&A成立初日から当面の融合プロセスのことをPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)と言います。
初日以降にやらなければならないPMI作業はたくさんあります。その作業の多くは、買主・売主の共同作業となります。
ここで大事なポイントは“M&A成立後にPMIの検討を始めるようでは遅すぎる”ということです。
初めの最も重要な作業は、売り手企業の従業員への本件開示と各種方針・今後のスケジュールの説明です。これに続いて、取引先への挨拶・説明も行います。これらはM&A成立初日から1週間程度以内には完了すべきです。
そのためには、買主側にはしっかり準備頂くことが必要ですし、同時に、売主は買主にどのような方針をどのように説明すると効果的かをしっかり買主に相談することが必要です。
従業員や取引先への説明は、方法・タイミング・関心事を踏まえて対応する必要があります。特にキーマンや重要取引先への説明は計画性をもって慎重に行います。
このようにM&A後をイメージして、求めるPMI対応ができるようなお相手か否かという視点を持つことも、譲渡先選定の一つのポイントかもしれません。
専門家を使って効率的なPMIを
M&Aは多くの経営者にとって初めてのこと。ましてM&A成立後のPMIの経験を豊富に有する経営者は、ほとんどいないでしょう。
専門家がファシリテーターの役割を担うことで両社納得する点での融合が実現でき、経営コンサルティングや事業計画の策定もスムーズに行うことができます。これらすべてを初心者の自分たちでやるとしたら・・・大変なことになるのはお分かりかと思います。
“専門家の存在”がM&A成功の可否を分けるのです。
西川 大介(にしかわ・だいすけ)
新卒にて大手プラントエンジニアリング会社に入社、海外エネルギープラントの設計・調達・施工・プロジェクト管理業務に従事。その後、大手外資系コンサルティングファームにてM&A統合業務、デューディリジェンス業務を、大手証券会社にてM&Aアドバイザリー業務を経験し、2010年日本M&Aセンターに入社。通算15年に及ぶM&A実務経験に強み。