リッチモンドホテルを運営するロイヤルグループのアールエヌティーホテルズは、外国籍社員の採用と定着に力を入れており、初年度には9人の採用に成功している。取り組み内容について、アールエヌティーホテルズの本山浩平代表に話を聞いた。

外国籍社員の採用で、多様な人材が企業価値を高める【アールエヌティーホテルズ】

アールエヌティーホテルズ

本山浩平 代表取締役社長

目次

  1. 外国籍社員を採用するに至った背景や経緯をお教えください
  2. 採用の結果はいかがでしたか
  3. 採用者の受け入れ体制や定着への取り組みについてお教えください
  4. 採用した外国籍社員の評価はいかがですか
  5. 今後のビジョンについてお聞かせください

外国籍社員を採用するに至った背景や経緯をお教えください

当社は、レジャーやビジネスにご利用いただける「リッチモンドホテル」を日本全国の主要都市に43店舗展開しています。

コロナ前はインバウンド観光客の増加で、ホテル業界全体として右肩上がりの成長を続けていました。ところが、コロナ禍に直面し、2020年5月の当ホテルの稼働率は創業以来最悪の17.8%まで急減しました。

ロイヤルグループは外食や食品、コントラクト、ホテルの4事業を展開していますが、ホテル事業はグループで最大の影響を受けました。やむを得ずいくつかの店舗は休業せざるを得ず、アルバイトやパートのスタッフに関しては、自主的に辞めて行く方が続出しました。また、ロイヤルグループにおいては希望退職を募りました。

近年コロナも落ち着き始め、2022年10月11日から水際対策が緩和されたことを受け、入国者総数上限が撤廃されて68の国や地域へのビザ免除措置が再開されました。これによりインバウンドが復活し、ホテルの需要も一気に高まっていきました。当チェーンとしてもスタッフ不足が見られたため再度スタッフの募集を開始しましたが、以前のように母集団を集めることが難しくなっていました。

ロイヤルグループは「“食”&“ホスピタリティ”の提供を通じて、無形の財産と人気の蓄積を確保し、経済価値の創造を果たし企業価値向上を遂げる企業グループ」を目指しています。これを遂行するのは、貴重な財産と捉えている人材です。間接業務においては省人化を進めていますが、お客さまと接する部分は人でなければならないと考えています。

多様化が進む現代において、さまざまなバックグラウンドを持つ人が当ホテルに関わることで、新たな価値が生まれる契機になると捉えています。

これまでも外国籍社員は在籍していましたが、全員が日本在住の方でした。今回は、初めて本国の在住者にも枠を広げ、従来よりもさらに多様な方に来てもらえるようにしました。その他に、アルバイトやパートのスタッフは短時間就労前提の主婦(夫)や学生にも枠を広げています。

採用の結果はいかがでしたか

2023年度として10人の外国籍社員の採用を目標に掲げ、結果的に9人の採用に至りました。内訳としては、中国から6人、台湾、ベトナム、カザフスタンからそれぞれ1人ずつで、その内4人が特定技能外国人材としての採用です。採用方法は、国内のエージェントに依頼し採用のサポートを行ってもらい、本国在住者から選考しました。選考基準は、日本語能力がN1もしくはN2であること、日本での就業意欲が高いこと、ホテル業に興味があることです。

採用者の受け入れ体制や定着への取り組みについてお教えください

採用者の処遇は日本人社員と同じですが、外国籍社員向けの受け入れ研修を別途実施しています。店舗は各都市に点在している上、外国籍社員は人数が少ないので孤立しがちです。そのため研修では、横の繋がりを強化し一体感を持てるような機会にしています。

集合研修の風景

外国籍社員の採用で、多様な人材が企業価値を高める【アールエヌティーホテルズ】

日本語への対応としては、動画マニュアル作成ツールの翻訳機能を活用し、資料などにはルビを振るといった配慮をしています。また、必要と判断した人には日本語学校で学んでもらうことにしています。

さらに、何でも相談できる近しい相手としてメンターも用意し、ちょっとした困り事でもすぐに対応できるような仕組みを整えています。

外国籍社員の定着には双方の歩み寄りが必要と考えており、受け入れる側の教育研修にも力を入れています。

具体的には、出入国在留管理庁と文化庁から発信されている資料等を活用した「やさしい日本語」研修の導入です。文節が入り組んだ日本語は外国人には難しいので、わかりやすく分解して話すといったことを心掛ける内容です。

例えば、「電車でいけなくはないです」は、「電車で行けます。でも時間はかかります」と言い換えます。こうした教育コンテンツをイントラネットで提供し、スタッフ全体に対して研修を行っています。

なお、外国籍社員の配属先は基本的に本人の希望を優先しています。母国の人が多い地域への要請や、寒いところが苦手といったニーズを吸収して決めています。住居として社宅も提供しています。

「やさしい日本語」研修の導入で、スタッフ全体でわかりやすい日本語を心掛ける

外国籍社員の採用で、多様な人材が企業価値を高める【アールエヌティーホテルズ】

採用した外国籍社員の評価はいかがですか

9人のうち7人は2023年10月1日もしくは11月1日の入社で、これからの活躍に期待しています。すでに配属されている2人は、いずれも現場責任者である支配人からは「日本語能力には全く問題なく、働く意欲も高く素晴らしい人材」と高く評価されています。労働力の確保という以上に、意欲の高さや自主的に学ぶ姿勢が職場のチーム全体に与える影響は大きく、良い効果が表れています。

さらに、増加しているインバウンドのお客さまに対する効用も大きいと思っています。同じ母国のスタッフがいれば、言葉などの面でも安心度が高まるからです。

コロナ前のリッチモンドホテルプレミア浅草では、インバウンドのお客さまが70%を占めていました。そのホテルの朝食ラウンジで、一時期10カ国以上からワーキングホリデーで来日していた外国人アルバイトが働いていました。

一度も求人募集を出していなかったのですが、「ここは雰囲気がいい」と口コミで広まったのです。多様なバックグラウンドの人たちが集まる場所特有のいい雰囲気が形成されることで安心感が生まれ、お客さまだけでなくスタッフも集まる場になりました。

お客さま自体が多様化しているため、受け容れる側が多様化していなければ、お客さまにとっては窮屈を与えるだけです。こうしたことを通じて、チェーンホテルの画一的なオペレーションや思想に凝り固まるのではなく、多様性を尊重して様々な見方や考え方を取り入れていくことがこれからはさらに重要になると考えています。

今後のビジョンについてお聞かせください

外国籍社員の採用は、本年度は目標を上回る成果を予測しますが、絶対数は全く足りてはいません。始めたばかりなので一足飛びに増やすのではなく、まずは採用した9人の定着や順応を図り、体制を固めたところで徐々に採用人数を増やしていきたいと考えています。

採用する国も、より多様性を重視してアジアに限らず全世界に広げていけるように計画を進めています。その際は、国籍や人種を意識することなく、一人の人間としてその魅力や能力を重視した採用にしたいと思っています。

そして今後は、こうした外国籍社員の中から支配人を輩出することが一つの目標です。このような人材がロールモデルとなれば、「自分もそうなりたい」と追随する意欲ある人が増えるのではないでしょうか。そのためにも、外国籍社員の方が既存のリーダー向け研修に参加できる機会を増やしていきたいと考えています。

アールエヌティーホテルズ株式会社

代表者:代表取締役社長 本山浩平
設立:2004年4月
資本金:1億円
従業員数:1565人(2023年4月現在)
事業内容:ホテル運営
本社:東京都世田谷区桜新町1-34-6
売上高:231億7500万円(2022年実績)

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