リストラクチャリングのメリット
リストラクチャリングの主なメリットは、以下の通りです。
利益率・キャッシュフローの改善 ができる
リストラクチャリングを通じて不採算部門や利益率の低い部門の整理・縮小、人員削減などによる経費削減を行った結果、企業全体の利益率の改善が見込めます。
また、金融機関との交渉次第ではDESによって債権を株式化できるため、負債を圧縮して自己資本比率を高めることが望めます。この結果、財務諸表が改善し、健全な経営ができるようになります。
主力事業をさらに強化できる
不採算事業の売却・切り離しにより、収益が見込める主力事業に資金や人材など経営資源を集中投下できれば、より効率の良い経営が期待できます。 主力事業が成長することで、新規事業への参入も検討することができ、企業の持続的な成長が見込めます。
リストラクチャリングのデメリット ・注意点
リストラクチャリングの主なデメリットは、以下の通りです。
従業員のモチベーション低下につながる場合もある
リストラクチャリングでは前述の通り、従業員を配置転換したり、人員整理を行ったりする場合があります。そのため、従業員にとっては不安定な状況を生み出し、モチベーションに影響を及ぼす懸念があります。
事業の慎重な見極めが求められる
事業が軌道に乗り、黒字化するには一定の期間を要するため、例えば現状の数字だけに目を向け、事業の整理・縮小をしてしまうと、将来性のある事業まで止めてしまうことにつながりかねません。 事業リストラクチャリングをする際は、現状だけでなく将来の成長可能性まで見越して対処事業を慎重に選ぶ必要があるということです。
リストラクチャリングを行った企業事例
最後に、リストラクチャリングを行った企業事例をご紹介します。
日本航空の事例
日本のフラッグ・キャリアとして世界中の主要都市に就航していた日本航空は、保有機の多くが大型機だったことが災いし、座席の供給過剰が常態化。また就航都市に展開していたホテルチェーンの赤字や不採算路線の就航、社内に抱えるさまざまな労使問題などにより、長年にわたり非常に厳しい経営状態を強いられていました。
こうした状況下で2008年にリーマンショックが起こり、世界規模で航空需要が低迷したことが決定打となり、2010年には経営破綻してしまいます。しかし、ここから企業再生支援機構による経営の立て直しが行われます。
会社更生法の適用により金融機関の債権は約9割放棄され、企業再生支援機構からは3,000億円を超える公的資金が投入されることが決定しました。また100%減資も行われ、既存株主の持分はゼロとなりました。こうした施策と並行して行われたのが、リストラクチャリングです。
国内外の不採算路線を運休するとともに、パイロットや客室乗務員の人員整理を行い、人件費の大幅な削減を行いました。その結果驚異的なV字回復を遂げ、上場廃止からわずか2年後の2012年には再上場を果たしました。
ソニーの事例
「ウォークマン」や「プレイステーション」などの発売により世界を代表する企業となったソニーは、2000年代に低迷期を迎えます。主力だったテレビ事業は赤字が続き、これまで好調だったPC事業の販売も伸び悩み、電機メーカーとしての陰りが見え始めます。
こうした不調の果てに起きたのが、「ソニーショック」でした。2003年の決算では大幅赤字を計上し、2004年度の見通しが大幅減益であることから投資家の売り注文が殺到し、株価が大暴落してしまいます。
しかし、ここからソニーは純利益が1兆円を超す大企業へと復活を果たします。低迷からの脱出をかけてリストラクチャリングによる再構築を繰り返し、ゲームやスマートフォン、音楽や映画、金融などのさまざまな分野へ進出。同時に不採算部門の整理を繰り返し、見事に再生を果たしたのでした。
ソニーは2000年代初頭に大規模なリストラクチャリングとして不採算事業の整理や人員削減、ゲームや音楽、金融など様々な分野へ進出するなど再構築を行いまいました。その結果、収益性の向上と事業の再編が図られ純利益1兆円を超す大企業へ復活を果たします。