【新卒採用】学生は企業選びの軸として安定と同時に、やりたいことができるかを重視

アールナイン

長井 亮 代表取締役

【PROFILE】1999年青山学院大学経済学部卒業。リクルートエイブリック(現リクルート)に入社。連続MVP受賞などトップセールスとして活躍後、2009年に人材採用支援会社アールナインを設立。これまでに2000社を超える経営者・採用担当者の相談や、5000人を超える就職・転職の相談実績を持つ。北陸学院大学にて非常勤講師を務めるなど、全国で学生・ビジネスパーソン、また経営者を対象に年間約100回のキャリア・採用・育成・定着に関する講演、セミナー、研修を行う。またキャリアに対する啓蒙活動及びキャリア・スペシャリストの普及を行う、一般社団法人国際キャリア・コンサルティング協会の代表理事に就任。人材プロフェッショナルの育成にも取り組んでいる。

コロナ禍からの経済回復に伴い、企業の採用意欲が高まっています。市場データによると、24年3月卒業予定の大卒求人倍率は1.71倍で、コロナ前の水準に戻りました。

売り手市場が続く中、個々の学生の価値観を理解し、戦略的に自社の魅力を訴求できるか否かで、25年卒の採用の勝ち負けがはっきり分かれると考えられます。

企業は24年卒採用に続き、オープンカンパニーやインターンシップを活用して、いち早く学生と接点を取ろうとしています。内定時期も年々前倒しになり、市場データによると、23年3月卒業の学生が初めて内定を得た割合が最も高かった時期は、前年の4月から3月に早まりました。

採用難易度の上昇を見越した早期化の動きが一層、加速しそうです。一方、学生は企業選びの軸として安定と同時に、自分のやりたいことができるか否かを重視する傾向が続いています。

更にその判断方法として、ネットにあふれる噂話や企業の一方的な宣伝をうのみにせず、①自分個人に向けられた情報を基に②信頼できる事実を自分で確認し、意思決定する傾向が近年一層、強まっているように思います。

実際、口コミサイトで悪評を発見しても即座に悪い企業と決めつけず、自分の目で確かめるために説明会に参加するという行動が目立ちます。こうした中で企業に求められるのは、一律の情報を一方的に与えることではなく、学生と個別に接点を取って適切なタイミングで適切な情報を提供し、意思決定を手助けする環境を作ることです。

内定まで時間が空くと離脱する学生が増えます。企業は初回接点の方法より、参加者をその後の選考につなぐことに意識を向けるべきです。

最初から詳細な業務内容や福利厚生を話すのではなく、学生が知りたい業界動向を中心に説明したり、社員やオフィスの雰囲気の良さを感じてもらうにとどめ、次の座談会に誘導するのも一つの戦略でしょう。

個々の学生に向き合い、時期によって提供する情報を変え、内定承諾につながる意思決定ストーリーをうまく描けるかが成否を左右します。


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