2025年から統合熱マネジメントが本格普及
~熱の効率的な活用で、BEVの問題を解決~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、世界の次世代車(xEV)用キーデバイス/コンポーネント世界市場の調査を実施し、主要国の市場概況、コンポーネントの技術動向及び将来展望、主要メーカー動向を明らかにした。ここでは、統合熱マネジメントの技術動向を取り上げ、中核となるヒートポンプシステムについて、2035年までの搭載数量、および対象車両における搭載率予測について公表する。
車載ヒートポンプシステムの世界市場規模予測
次世代車(xEV)用サーマルマネジメントの技術動向
1.市場概況
次世代車(xEV:HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(電気自動車)、FCEV(燃料電池車))の統合熱マネジメントにおいて重要な役割を担うヒートポンプシステムは2022年時点での搭載率は48.0%となっており、PHEV、BEV、FCEVでの需要が主流となっている。
BEVの普及により注目が集まる統合熱マネジメントはモータ、インバータ、バッテリ、車室内冷暖房など車両全体で発生する熱エネルギー(排熱)を配分し、効率的に使い切るための技術である。モータやインバータの排熱を活用することで、ヒートポンプの稼働負担を軽減でき、消費電力を抑えることでBEVにおける航続距離の伸長に貢献する。また、モータやインバータの非効率駆動※1による創熱という制御、路面情報や運転状況などを基に、温度上昇を予測、電池を適宜冷却することで急速充電や登坂走行時など負荷がかかる場面での電池温度上昇を抑制する制御などの開発が進んでおり、次世代のBEVにおいてクルマの熱の有効活用は重要である。
※1. 非効率駆動とは走行に必要な出力以上で稼働させること
2.注目トピック
BEVの普及で注目されるサーマルマネジメント
次世代車(xEV:HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(電気自動車)、FCEV(燃料電池車))は従来の内燃機関車(ICE)と動力源が異なるため、車両を構成する機器やコンポーネントも当該車両に適合した仕様や性能が求められている。ここでは次世代車(xEV)の普及によって注目が集まる統合熱マネジメント(サーマルマネジメント)の技術動向を取り上げる。
内燃機関車の熱マネジメントは部位ごとに冷却を検討することで十分であったが、xEVではエンジンによる熱源が少なく、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータなどを活用して車室内暖房を行う必要がある。しかし、PTCヒータなどは電力消耗が激しく、航続距離に影響することから消費電力の少ないヒートポンプに注目が集まる。コストとの兼ね合いからBEV、PHEV、FCEVの世界販売台数におけるヒートポンプシステム搭載率は2022年時点で48.0%とみているが、航続距離伸長の要求から今後、採用車種の拡大が見込まれる。
また、ヒートポンプシステムは、ポンプとバルブを一体化した冷却モジュールと組み合わせることで、クルマの熱を効率的に活用できる統合熱マネジメントが実現できる。すでに一部車種に適用されており、航続距離の伸長、低コスト化、小型軽量化とメリットが大きいため、2025年頃から本格的に普及が開始するとみる。また、将来の環境規制を見越して、冷暖房に使用する冷媒をフロンではなく、CO₂を使用するヒートポンプの採用が欧州市場を中心に始まっており、PFAS(有機フッ素化合物)規制の動向次第ではCO₂が冷媒として主流となる可能性もある。
そのほか、次世代車(xEV)の主要部品は、急速充電対応可能なSiCインバータ、高い安全性と長寿命を兼ね備えた全固体電池などが2020年代後半から投入が予定されているなど、急速に技術が進化する領域である。
3.将来展望
次世代車(xEV)の普及に伴い、搭載率の上昇が見込まれるヒートポンプシステムの世界市場について、量産によるコスト低減、航続距離伸長の要求から搭載車種が拡大すると想定したAggressive予測(最大成長予測)では2030年に2,321万個で、搭載率※2は75.0%、システムコストの高さからA/Bセグメントなどの小型車ではPTCヒータがメインになり、搭載車種が限定されると想定したConservative予測(最小成長予測)では、1,301万個で搭載率※2は60.0%とみる。
※2. ヒートポンプシステム搭載率は搭載対象となるPHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(電気自動車)、FCEV(燃料電池車)の世界販売台数に占める比率を示している。
調査要綱
1.調査期間: 2023年4月~6月 2.調査対象: 自動車メーカー、xEV主要部品・システムサプライヤー等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング、ならびに文献調査併用 |
<次世代車(xEV)用主要部品(キーデバイス/コンポーネント)市場とは> 本調査における次世代車(xEV)とは電動四輪車と同義であり、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(電気自動車)、FCEV(燃料電池車)とし、乗用車はA~Eセグメント、商用車は車両総重量3.5t以下の小型商用車を対象とする。また、主要部品として、主機モータ、主機モータ用ポジションセンサ、インバータ、駆動バッテリ、電流センサ、DC-DCコンバータ、車載充電器、サーマルマネジメント、ヒートポンプシステム、電動ウォーターポンプ、電動オイルポンプ、電動コンプレッサを対象とする。ここでは、統合熱マネジメントの技術動向を取り上げ、中核となるヒートポンプシステムについて、2035年までの搭載数量、および対象車両における搭載率予測について公表する。なお同システムの搭載率は、対象となるPHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(電気自動車)、FCEV(燃料電池車)の世界販売台数に占める搭載比率を示している。 また、対象車両の世界販売台数の予測にあたり、Aggressive予測(最大成長予測)は急速充電などインフラ整備が整うことで、車格を問わず、BEVの普及が進むと仮定し、Conservative予測(最小成長予測)はBEVが高級セグメントや小型商用車まで限定的に普及が進むことを想定し、算出している。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 乗用車および車両総重量3.5t以下の小型商用車に限定した次世代車(xEV);ストロングハイブリッド(HEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、電気自動車(BEV)、燃料電池車(FCEV)、及び主要キーデバイス・コンポーネント |
出典資料について
資料名 | 2023年版 xEV用キーデバイス/コンポーネント <主要部品・サーマルマネジメント編> |
発刊日 | 2023年06月29日 |
体裁 | A4 355ページ |
価格(税込) | 220,000円 (本体価格 200,000円) |
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