個性が輝く道の駅を厳選。人気ランキングでは測れない、地域の魅力に触れられるイチ押しの道の駅をピックアップ

最近はインターネットで道の駅関連の記事を検索すると、さまざまなランキングが出てくるようになりました。紹介されている道の駅は、1日滞在できるような充実した施設から、なぜ選ばれたのか理由を考え込んでしまうものまでありますね。

こういったランキングの選者をやったこともありますが、自分が好きな道の駅とメディア映えする道の駅は違うと思い知らされました(絶対採用されることはないと分かって、裏ランキングを作って提出したこともあります)。

もちろん好みは人それぞれですが、私はエンタメ要素が満喫できるところより、特産品を上手に活かしながら、少々地味でも(失礼!)しっかり地域の魅力を伝えている道の駅が好みなので、今回はそんな道の駅を選んでみました。

目次

  1. 【栃木県】道の駅を中心に地域の農業の活性化に貢献。「もてぎ」
  2. 【岐阜県】地域の食文化の伝承という役割を果たす「おばあちゃん市・山岡」
  3. 【京都府】“お茶しかない”を逆手に取った発想。「お茶の京都みなみやましろ村」
  4. ぜひ地域色あふれる道の駅を見つけてみてください

【栃木県】道の駅を中心に地域の農業の活性化に貢献。「もてぎ」

個性が輝く道の駅を厳選。人気ランキングでは測れない、地域の魅力に触れられるイチ押しの道の駅をピックアップ
敷地内には季節の花も咲く道の駅「もてぎ」

道の駅の主役というとやはり地元の野菜や果物が並ぶ農産物直売所だと思いますが、全ての場所にある訳ではありませんし、規模もまちまち。更に言えば旬の時期を逃すとその土地の名産が何か分からないこともあります。そんな中で異彩を放つのが栃木県茂木町にある道の駅「もてぎ」です。

元々葉タバコの生産が盛んだった茂木町(現在でも町内にたばこ神社があります)。1977年に専売公社が撤退したのをきっかけに離農する人が増えていきました。そんな中、代替として植えられたのがユズです。傾斜地でも栽培できるのと、比較的手間がかからず栽培がしやすかったことから着目され、次第に生産量を増やしていきました。

ただ、そのまま食べるリンゴやミカンなどの果実と違い、どちらかといえば脇役。そのユズを買い上げ、加工することで価値が上げられないか模索したのが道の駅もてぎです。

個性が輝く道の駅を厳選。人気ランキングでは測れない、地域の魅力に触れられるイチ押しの道の駅をピックアップ
道の駅もてぎの代名詞にもなった「もてぎのゆず塩ら~めん」(720円)

ユズを使ったグルメといえば、道の駅の代名詞にもなっている「もてぎのゆず塩ら~めん」。道の駅のグルメ王を決める、道-1グランプリで3年連続グランプリに輝き、殿堂入りを果たしています。

手動の圧搾機を使い、苦みを出さないようゆっくり手絞りして、ユズ本来の香りと酸味を残した果汁にすることで、あの芳醇なスープが生まれました。まさに地域一丸となって作り上げた名物グルメだった訳です。ユズ果汁はドレッシングや酢などの調味料にも使われていて、こちらも道の駅の看板商品になっています。こういう商品、つい買っちゃうんですよね。

個性が輝く道の駅を厳選。人気ランキングでは測れない、地域の魅力に触れられるイチ押しの道の駅をピックアップ
特産のユズを使ったさまざまな加工品が購入できる

道の駅もてぎの魅力は、ユズに留まりません。成功例は横展開され、地元産の米粉を使ったバウムクーヘンの制作やイチゴやブルーベリーを練りこんだアイスクリームなど、採れた農産物をただ売るだけではなく、道の駅で加工することで一気に知名度を上げる効果を得ました。

近年は道の駅で農業法人を立ち上げて農園の運営を始めていて、収穫した農産物を道の駅に供給するなど連携を図っています。当然雇用も生まれるので、まさに道の駅を中心に地域の農業の活性化が図られているといえます。

2026年度には改築してリニューアルを目指すとのことで、ますます目の離せない道の駅になりそうです。

道の駅「もてぎ」(栃木県)

・施設情報ページ:https://www.mobilitystory.com/michinoeki/detail/tochigi/post_307/
・公式HP:http://www.motegiplaza.com/
・栃木県の道の駅一覧:https://www.mobilitystory.com/michinoeki/tochigi/

【岐阜県】地域の食文化の伝承という役割を果たす「おばあちゃん市・山岡」

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巨大な木製水車が目印の道の駅「おばあちゃん市・山岡」

岐阜県の観光スポットである小里川ダムの湖畔に建つ一際大きな木製水車。直径24メートル、一時は日本一の大きさを誇りました(現在は2位)。そのたもとに道の駅「おばあちゃん市・山岡」はあります。店内はそれほど大きくありませんが、地元の野菜や加工品などが所狭しと並んでいます。中でも目を引くのが「山岡細寒天」です。

個性が輝く道の駅を厳選。人気ランキングでは測れない、地域の魅力に触れられるイチ押しの道の駅をピックアップ
全国シェアの8割を占める特産の「山岡細寒天」

道の駅のある山岡地区はその大半が丘陵地。主要な産業は全国一の生産量を誇る細寒天の生産です。その生産は冬に行われ、ところてんを天日干しして徐々に水分を抜いて作られます。元々昭和の初めに農閑期の副業として始められたようですが、冬季の乾燥した気候と昼夜の寒暖差が生産に適していたため、工業的に作られたものが主流になってきた近年も伝統的な製造方法で作られています。

寒天は道の駅内にあるレストラン「みはらし茶屋」でも味わえます。麺に細寒天を使った名物グルメの「寒天らーめん」、甘味のところてんなど一度は味わっておきたいところですが、個人的に愛して止まないのが「おふくろの味定食」。天ぷらや煮物、田楽などが付いてきます。

個性が輝く道の駅を厳選。人気ランキングでは測れない、地域の魅力に触れられるイチ押しの道の駅をピックアップ
懐かしい味が堪能できる「おふくろの味定食」(950円)

この食堂で調理しているのは、道の駅の名称の元にもなった地域の女性たち。

元々道の駅は地域の高齢者が生きがいづくりにと始めた朝市が前身で、2000年に麓に店舗が開業し、その中で地元の女性グループが中心になって山岡のおふくろの味を加工品にして販売していました。2004年に現在の場所に道の駅がオープンしてからもその理念を引き継ぎ、女性の雇用の場としてだけでなく地域の食文化の伝承という役割を果たしています。

こういった視点で運営されていた道の駅は、かつてはたくさんありましたが、徐々に姿を消し、貴重な存在になってしまいました。何でもない普通のことなのかもしれませんが、懐かしい味や雰囲気などの郷愁もまた道の駅の個性を形作るひとつの要素だと、ここは教えてくれている気がしています。

道の駅「おばあちゃん市・山岡」(岐阜県)

・施設情報ページ:https://www.mobilitystory.com/michinoeki/detail/gifu/post_630/
・公式HP:http://obachanichi.jp/
・岐阜県の道の駅一覧:https://www.mobilitystory.com/michinoeki/gifu/

【京都府】“お茶しかない”を逆手に取った発想。「お茶の京都みなみやましろ村」

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京都府唯一の村にある道の駅「お茶の京都みなみやましろ村」

宇治茶の産地といえば京都。でも宇治市にはほとんど茶園がないって知っていましたか? 実は生産地は京都府の他に奈良県、滋賀県、三重県などにもまたがっていて、宇治地域に由来する製法で加工されたものが宇治茶の名称で販売されているのだそうです。今回紹介する道の駅「お茶の京都みなみやましろ村」のある南山城村も、その生産地のひとつです。

村民2500人、面積のおよそ7割が山林で、主要産業はお茶の生産一択。ともすれば過疎と高齢化で衰退しかねない小さな村ですが、道の駅の開業はその状況を打破する大きなチャレンジになりました。道の駅が生産者の暮らしを下支えし、雇用を生み、お茶の発信拠点になることで、結果的に村民の暮らしを守る試みは運営会社のコンセプトの「村で暮らし続けることを実現する」にも表れています。

個性が輝く道の駅を厳選。人気ランキングでは測れない、地域の魅力に触れられるイチ押しの道の駅をピックアップ
麺に抹茶が練りこまれた「村抹茶そば」(900円)

画像提供:お茶の京都みなみやましろ村

多種多様な産品を取り扱う道の駅も多い中で、この道の駅が取った戦略はお茶の一点突破。店内を見渡すとありとあらゆる商品にお茶が使われています。

高価な抹茶を贅沢に使ったプリンやパウンドケーキ、濃厚な味わいの抹茶ソフト、レストランの抹茶そばなど数え上げたらきりがありません。そしてそのほとんどが道の駅で開発された商品。人気すぎて繁忙期には生産が追い付かなくなることもあったそうです。

個性が輝く道の駅を厳選。人気ランキングでは測れない、地域の魅力に触れられるイチ押しの道の駅をピックアップ
春摘みの貴重な抹茶を使った「むらちゃパウンドケーキ」

画像提供:お茶の京都みなみやましろ村

その人気の秘密は原材料をケチらない本気度。春摘みの貴重な抹茶を使用していて、一口食べただけでお茶の香りと独特の苦みが感じられるレベルまで練りこんでいます。「茶どころの余裕」と言っていますが、色や味でごまかさないクオリティーがファンを生み、新たな商品を開発する原動力になっています。抹茶以外にもほうじ茶、紅茶、煎茶なども季節限定商品もあるので、こういった手法も「また行きたい」というリピーターに繋がっています。

かく言う私も関西遠征の際には必ず立ち寄ってしまうので、まんまと術中にハマったひとり。「お茶しかなかった」を逆手に取った発想で「南山城村に行けばお茶がある」に繋げた道の駅には、研ぎ澄まされた強い個性を感じました。

道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」(京都府)

・施設情報ページ:https://www.mobilitystory.com/michinoeki/detail/kyoto/post_744/
・公式HP:https://michinoeki.kyoto.jp/
・京都府の道の駅一覧:https://www.mobilitystory.com/michinoeki/kyoto/

ぜひ地域色あふれる道の駅を見つけてみてください

個性が輝く道の駅を厳選。人気ランキングでは測れない、地域の魅力に触れられるイチ押しの道の駅をピックアップ
道の駅「おばあちゃん市・山岡」

売り場の作り方、並ぶ商品、食堂のメニューはそのすべてに意味やコンセプトがあって、道の駅の場合は背景に地域色が見え隠れします。そういった視点で俯瞰してみると、その道の駅の「個性」がおぼろげながら見えてきます。

また今回は割愛しましたが、地域が元気な場所には必ず道の駅ひいては地域活性化のために尽力するキーマンがいます。目に見えるものではありませんが(たまに売り場に立っていたりしますが)、そういった人たちの思いが詰まった場所が道の駅だと思うと、見方も少し変わってきます。

皆さんもぜひ地域色あふれる道の駅を見つけてみてください。

■著者プロフィール、この著者のこれまでの記事は:https://www.mobilitystory.com/article/author/000031/