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(画像=相続サポートセンター)

夫婦が同時に死亡した場合や行方不明者がいる場合、あるいは災害で生死が不明の場合など、こういったケースでは、相続についてもいろいろな問題が生じることがあります.

珍しいケースではありますが、こういった場合の相続について解説します。

夫婦が同時に死亡したケースでは

夫婦はどちらかが死亡した場合、その一方は法定相続人となることができます。

ですが、もし同時に死亡した場合、相続人となることができるのでしょうか。

同じ事故で死亡した場合

夫婦が同じ事故で死亡するというケースがあります。

たとえば、交通事故や飛行機、船の事故など、あるいは災害などによって同じ事故で夫婦が同時に死亡したとします。

このようなとき、問題が生じるのが相続の問題です。

たとえば、夫婦であれば、配偶者は常に相続人となることができますので、夫または妻が死亡した場合、その配偶者である妻または夫は相続人となります。

先に夫が死亡して妻が生きていた場合、妻は相続人となりますので、妻は夫の遺産を受け継ぐことができます

その後、妻が死亡した場合、妻の親族に遺産が受け継がれる可能性もあります。

このように、誰が先に死亡したのかというのは、相続の問題を考える上では非常に重要な問題となっています。

同一の事故にあって、夫婦が同時に死亡した場合も、この問題が生じてきます。

たとえば、同じ事故で同時に死亡した場合であっても、どちらかが1分や2分長く生きていたという可能性も考えられるところだと思います。

ですが、事故の詳細となると後から振り返ってもなかなかわかるものではありません。

それぞれの死亡時刻が違えば、誰が相続人になるのか、またその配分も変わってきます。

これは夫婦だけでなく、親子の場合でも生じる問題ですし、被相続人と相続人が同時に死亡する場合、常に生じる問題となります。

こういったケースではどのように扱うのでしょうか。

同時死亡の推定

民法では、数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する、とされています。

これは、生存していたことが明らかではないときに適用される法律となっています。

たとえば、同じ交通事故であっても、一人は事故時に死亡して、もう一人は、その後病院に運ばれ病院で亡くなったとします。

この場合は、同一の事故ですが、死亡日時は明らかに違っています。

このようなときは死亡日時が明らかに違いますので、同時死亡の推定は適用されません

同じ交通事故でも、どちらもが事故時に死亡したような場合、この場合は、どちらが先に息を引き取ったかを明らかにするのはなかなか難しいところです。

このような死亡時が明らかでないときに、同時死亡の推定が適用されるのです。

また、この同時死亡の推定は、同一事故でなければならないわけではありません。

あくまでも、複数の死亡者がいた場合で、そのうちの一人が他の者より長く生きていたことが明らかでない場合に適用されるものです。

ですので、たとえば、同一の事故ではなく、別々の場所で死亡したような場合であっても、その死亡日時が分からず、どちらかが他の者の死亡後に生存していたことが明らかでない場合は適用されることになります。

同時死亡の推定が適用された場合の相続

同一死亡の推定がされた場合、相続はどうなるのでしょうか。

同時に死亡した場合、それらの者同士での相続関係は生じません

相続とは、被相続人が死亡したときに、相続人は生きている必要があるからです。

死亡者は、権利能力を有しておらず、権利義務関係を受け継ぐことはできません

同時死亡の推定とは、同時に死亡したことになりますので、片方が相続人となることはできないものになるのです。

たとえば、夫婦に子どもがいるケースを考えてみます。

通常、夫婦のどちらかが亡くなった場合、配偶者と子どもがそれぞれ2分の1ずつ遺産を相続するというのが法定相続となります。

ですが、これが夫婦が同時に死亡した場合、配偶者は相続人となることができません

ですので、相続人は子どものみとなり、子どもが全遺産を相続することになります。

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また、逆にこれが親子が同時に死亡した場合で考えてみますとどうなるでしょうか。

通常ですと、親が死亡した場合、子どもは相続人となることができます。

ですが、これが同時死亡の推定が適用されますと、子どもは相続人となることができませんので、配偶者と直系尊属やあるいは兄弟姉妹が相続人となります。

ただし、この子どもにさらに子どもがいた場合はどうなるでしょうか。

通常、被相続人が亡くなったときに、被相続人の子どもがすでに亡くなっており、その子どもに子ども(被相続人の孫のこと)がいた場合、代襲相続といいまして、孫は相続人となることができます。

これを同時死亡の推定にあてはめるとどうなるのでしょうか。

上のケースで親子が同時に死亡した場合、子どもは相続人となることができませんが、孫は代襲相続によって相続人となることができます。

民法では、代襲相続の要件として、子どもが相続の開始以前に死亡したとき、とされています。

そして、この同時死亡の推定も相続の開始以前に死亡したときに含まれると考えられているため、孫は代襲相続することができるのです。

どちらかの死亡が先だったことが判明した場合

上に見てきましたように、誰が誰より先に死亡したか、あるいは生存していたのか、というのは、相続を考える上で大変重要な問題になります。

ほんの少し先に死亡したのが誰になるのかで、相続人となれる人も違えば、その配分も変わってくるからなのです。

そういう意味で、同時死亡の推定ももちろんですが、死亡日時というのはとても重要な情報になります。

たとえば、同一死亡の推定がされた場合に、あとから明らかに違う死亡日時だったことが分かった場合は、どうなるのでしょうか。

同時死亡の推定は、あくまでも推定するということですから、反証することも可能です。

明らかに同時でないというような反対の証拠が見つかったのであれば、同時死亡の推定を覆すことも可能です。

また同時死亡の推定によって、同時に死亡したものとして、遺産分割協議をした場合で、同時死亡ではなく、明らかにどちらかが長く生存していたことが分かった場合は、すでになされた遺産分割協議は無効となってしまいます。

この場合は、再度遺産分割協議を求めることもできます。

行方不明者からの相続は

生きているのか、死んでいるのかわからない、行方不明者の場合の相続はどのように行えばいいのでしょうか。

行方不明者の場合、失踪宣告をするという方法により、相続をすることができます。

以下に解説します。

失踪宣告とは

失踪宣告とは、生死がわからない状態が続く行方不明者について、残された配偶者や相続人のために、その行方不明者を死亡したものとして扱い、身分上や財産上の法律関係を確定させる制度となります。

行方不明者の生死が分からず、それが長い間続くと相続人も確定しませんし、財産や身分関係などについて、関係者はどのように扱っていいか分からなくなってしまいます。

そこで、失踪宣告をすることで、そういった法律関係を確定させる制度があるのです。

これは、長く生死が分からない行方不明者だけでなく、たとえば、戦争や船舶事故などの危難に出会い生死が分からない場合などにも適用できるものとなっています。

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失踪宣告が認められるケース

民法では、失踪宣告が認められるケースについて、次のような場合としています。

① 行方不明者などの不在者の生死が7年間明らかでないとき
② 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者、その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止やんだ後、船舶が沈没した後またはその他の危難が去った後1年間明らかでないとき

このように、行方不明になって7年間生死が明らかでないときか、危難にあって危難が去った後1年間生死が明らかでないときに、利害関係人は、家庭裁判所に失踪宣告の請求を申し立てることができます。

失踪宣告の効果はいつから

さて、失踪宣告がなされると、失踪者は死亡したとみなされることになるのですが、いつ死亡したとみなされるのでしょうか。

こちらも民法により、死亡時期が決まっていて、次のとき死亡したとみなされることになります。

① 生死が7年間明らかでない不在者の場合、期間が満了したとき
② 危難にあった者の場合、その危難が去ったとき

この2つのときに死亡したとみなされ、相続などの法律関係が確定します。(図2)

失踪宣告後にもしも生きていた場合

失踪宣告は、あくまでも生死が分からない行方不明者について、死亡したとみなす制度です。

ですので、実際には生きているかもわからないわけで、もしも失踪宣告後に生きていたことがわかった場合はどうすればいいのでしょうか。

失踪者が生存していたことがわかった場合、家庭裁判所は、失踪者本人や利害関係人の請求によって失踪宣告を取り消さなければならないとされています。

これは、生存していたことが明らかになった場合のみでなく、失踪宣告したときと異なることで死亡したことが証明された場合にも適用されます。

失踪宣告が取り消された場合、相続した財産はどうなるのでしょうか。

失踪宣告によって相続が開始され、相続財産を得たものは、失踪宣告が取り消された場合、その権利を失うことになります。

ただし、この場合、相続した財産を返還する義務が生ずるのですが、これは現に利益を受けている限度においてのみでいいことになっています。

失踪宣告を信じて相続し、その財産を使ってしまっている場合は、残っている限度で失踪者に財産を返還すればいいことになっており、使ってしまった分の返還義務はないということなのです。

災害による生死の時期が不明のケースでは

災害で生死の時期が不明な場合やあるいは遺体が見つからないケースなどでは、相続はどのようにすべきでしょうか。

震災や災害事故などでの死亡の場合

震災や大規模な災害などで死亡した場合、死亡の日時がわからないだけでなく、遺体そのものが発見されないケースもあります。

こういったケースでも失踪宣告をすることができます。

震災や災害を失踪宣告ができる危難に該当するケースは多くあります。

危難に該当するのであれば、危難が去ってから1年間生死が明らかでないときは、利害関係人は、家庭裁判所に失踪宣告の請求を申し立てることができます。

また、失踪宣告が認められれば、危難が去ったとき、死亡したとみなされますので、そのときに相続が開始することになります。

戸籍に死亡が記載されるケース

震災や災害での死亡の場合、上のように失踪宣告をして死亡したとみなすことができるのですが、失踪宣告を待つまでもなく、明らかに死亡したと思われるケースがあります。

この場合、認定死亡と死亡証明書の添付による死亡届という方法があります。

認定死亡とは、水難や火災、あるいはその他の事変によって死亡した場合、その取調をした官庁や公署の報告によって、戸籍に死亡の記載がされるというものです。

戸籍に死亡が記載されれば、相続が開始されることになります。

死亡証明書の添付とは、通常死亡届を届出るときには、死亡診断書か死体検案書を添付するのですが、

災害などで、この死亡診断書や死体検案書がない場合、死亡の事実を証すべき書面に代えることができ、これを死亡証明書の添付といいます。

この死亡証明書には何か決まりがあるわけではなく、官公署の証明書や陳述書、あるいはその他の証明書のこともあります。

こういった手続きにより戸籍に死亡が記載されれば相続は開始します。

まとめ

夫婦が同一事故にあった場合など、どちらかが先に死亡したことが明らかでない場合は、同時死亡の推定が適用されます。

同時死亡の推定が適用され、同時に死亡したとみなされた場合、その死亡者同士では、相続関係は生じないことになります。

同時死亡の推定は、あくまでも推定ですから、明らかな証拠がある場合、反証も可能です。

失踪宣告は、行方不明者についての身分上や財産上の法律関係を確定させる制度です。

失踪宣告は、不在者の生死が7年間明らかでないときや、危難に遭遇した者の生死について危難が去った後1年間明らかでないときに、利害関係人が家庭裁判所に請求を申し立てることができます。

失踪宣告が認められると、失踪者は死亡したとみなされ、相続などの法律関係が確定します。

失踪宣告後に生きていることが分かった場合、本人や利害関係人は、失踪宣告の取り消しを請求することができます。

失踪宣告が取り消された場合、その宣告によって得た権利は失われることになるのですが、善意の者について、財産の返還は、現に利益を受けている限度のみとなります。

震災や災害事故の場合も失踪宣告の危難に該当しますが、明らかに死亡したと思われるケースについては、認定死亡や死亡証明書の添付によって戸籍に死亡が記載され、相続が開始するケースもあります。
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