重要事実の公表とは

インサイダー取引規制が解除される重要事実の公表は、以下のように定められています。

① 重要事実が記載された有価証券報告書等の財務局における公衆縦覧
② 2以上の報道機関への重要事実の公開後12時間経過(12時間ルール)
③ 取引所等における重要事実の公衆縦覧(適時開示情報伝達システム「TDnet」への登録)

単に、企業のホームページに重要事実が掲載されただけでは「公表」されたことにはならないため注意が必要です。

参考:金融庁「インサイダー取引規制における公表措置(見直し前・見直し後)」

インサイダー取引が必ず発覚する理由

インサイダー取引が発覚する背景には、日常的に行われている厳しい調査や監視、情報提供が挙げられます。

証券取引等監視委員会による調査

日本証券取引所自主規制法人では、重要事実が公表された銘柄を幅広く抽出したうえで、投資者の属性情報や売買状況等の詳細な分析を日々行い、インサイダー取引と疑われる取引の絞込みを行っています。 「あまりにもタイミングが良く、疑わしい取引が発生していないか」「会社関係者、その家族・友人などが関わっている可能性がないか」などの視点で厳しく調査されます。 そして、疑わしい取引について、全て証券取引等監視委員会に報告されています。

インサイダー取引は、金融商品市場の信頼を揺るがしかねない不正取引であるため、このように日常的な調査、監視が厳しく行われています。

内部関係者による密告

企業の内部関係者による密告や内部告発によってインサイダー取引が発覚するケースも少なくありません。 内部告発後、会社側と裁判やトラブルに発展するケースもあるため、事前に経験豊富な弁護士など外部の専門家への相談が不可欠です。

インサイダー取引を未然に防ぐための対策

インサイダー取引は組織としての信頼失墜・イメージダウンにつながるばかりか、金銭的なリスクを背負う可能性もあるため適切な対策が必要です。企業には特に次の3つの対応が求められます。

①適時・適切な情報開示

これまでご紹介してきた通り、「重要事実の公表」有無が、インサイダー取引に該当するか否かの分かれ目となります。 そのため、投資判断に重大な影響を与える情報は、適時開示に対応することが求められます。ただし、未成熟・不確実な情報を開示することで、かえって誤導する可能性がある場合には、適時開示を行うに及ばないケースも考えられます。

②適切な情報管理・体制整備

未公表の機密情報が外部に漏れて不正利用されないよう、適切な情報管理・体制整備が求められます。たとえば会社関係者が個別に株取引を行う際に、会社への申請と承認が必要な仕組みを構築する、申請と承認の仕組みを構築することが挙げられます。

また、公正な監査や判断ができる者を監査人として選定し、定期的な内部監査を実施することも、組織的な不正を防ぐためには重要です。

③関係者に対する規制の周知徹底

インサイダー取引は、上場会社のコンプライアンス上、重要な問題であることを関係者が十分に認識する必要があります。 定期的な勉強会や研修などの社内教育により、役員や従業員にインサイダー取引の違法性の周知を徹底することが重要です。また、インサイダー取引をして組織に損害を与えたときの、ペナルティーを記載した誓約書を交わすことも、不正や違反の抑制につながるでしょう。

また、個人には「むやみに重要事実を口外しない」「重要事実が公表されているものか確認する」「情報管理は社内ルールに従う」などの対応が求められます。自身が意図しないところで、家族や友人など周囲にインサイダー取引を行うきっかけをつくらないよう注意が必要です。