企業買収の注意点・デメリット

次は企業買収の注意点・デメリットについて解説します。企業買収で注意すべき点やデメリットは、主に以下の4点です。

①顧客離れのリスクがある

社内のいたる場所で不協和音が生じたり、買収側と買収される側の統合作業が不十分だったりすると、これまでの取引先や顧客が離れていってしまうリスクが生じかねません。

例えば、企業買収後に買収される企業の従業員の離職が進めば、業務の遂行に影響が出るだけでなく、良くない噂が立ってしまいかねません。 また、統合作業が不十分のままで見切り発車してしまうと、システム障害や人為的ミスが続くなどして、結果的に顧客離れにつながる可能性があります。

②人材流出のリスクがある

買収された企業の従業員は、今後の待遇、処遇に不安を感じるものです。買収側の従業員の中にも、統合にともなう異動、環境の変化に馴染めず不満を抱える人が出てくるかもしれません。

このように企業買収を行うと、せっかく獲得した人材が流出してしまうリスクが生じるケースがあります。 ただし、買収後のPMI(Post Merger Integration=M&A成立後の経営統合プロセス)を十分に行えば、人材流出のリスクを抑えることが可能です。リスクを減らすには、PMIを自社だけで行うのではなく、ノウハウを持っている専門家の力を借りるのが良いでしょう。

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③思わぬ債務を引き継ぐ可能性がある

株式の譲渡によって企業買収を行うと、買収された企業の簿外債務や偶発債務を引き継いでしまう場合があります。 意図的に簿外にしてある債務などは事前の買収監査(デューデリジェンス)や最終契約書で防ぐことができますが、以下の債務には特に注意が必要です。

債務例 概要
回収見込みが低い売掛金 トラブルによる納期遅れで、回収が遅れている売掛金は注意が必要です。
賞与引当金・退職給与引当金 財務会計上損金算入できないため、適正な金額で計上されておらず、後から引当金の不足が見つかる場合があります。
未払い残業代 買収される側の従業員への過去の残業代未払いが、買収後に発覚する場合があります。

あらかじめ、これらのリスクを把握し買収監査に臨む、もしくは不測の事態にも対応できる契約書を締結しておくことでリスク回避につながるでしょう。

④現場の負担が増加する

両社の業務をスムーズに進めるには、PMIをしなければなりません。この手続きは製造現場だけでなく、経理や総務などの事務業務を始め、営業や販売、物流など統合が必要なあらゆる現場で求められます。

一般的にこの手続きは半年程度で終わるものの、その間の負担はすべて現場の従業員が担わなければなりません。この負担が大きいほど従業員は大変な思いをすることになるため注意が必要です。