法人が寄付をすると節税になるため、法人の税金対策として寄付を活用したいと考える経営者も多い。ただし、寄付金には種類があり、寄付金によっては部分的に経費として認められないことがあるため注意が必要だ。
この記事では、寄付が節税になる仕組みを解説し、節税できる寄付金の種類や限度額を分かりやすく紹介する。
目次
法人が寄付すると節税になるのか?
法人が寄付をすると、寄付金を損金に算入できるため、法人税等を節税する効果がある。損金とは、税金を計算する際の経費のことだ。つまり、寄付金は一定の上限までなら経費にできるため、利益(所得)が圧縮されて法人税等を節税できる。
なお、個人で寄付した場合も、寄付金控除によって所得税や住民税を節税できることがある。
法人で寄付すると税金対策になる仕組み
法人で寄付した場合の節税効果を具体的に見ていこう。
たとえば10万円を寄付金として損金に算入し、法人税等の税率が約30%とすると、節税額は「10万円×約30%=3万円」となる。寄付金が大きくなれば、法人税率に応じて節税効果も大きくなる。
なお、寄付金を損金にするには、法人税の申告書に金額を記載し、寄付金の明細書など一定の書類を添付し、受領証などを保管しておくことが必要だ。
また、寄付金が節税になるとはいっても、寄付した金額以上に税金のメリットがあるわけではない。あくまで支払った寄付金を損金にすることで、部分的に法人税等が安くなるという点を押さえておく必要がある。
寄付金の種類は4つ
寄付金にはいくつかの種類があり、全額を損金にできる寄付金と、上限を超えると損金にできなくなる寄付金がある。続いては、寄付金で税金対策をする際に知っておくべき代表的な4つの寄付金について解説していく。
1 国や地方公共団体への寄付金
まず、国や地方公共団体への寄付金は、全額を損金に算入できる。
たとえば、地震などの災害が発生した際に、国や地方公共団体の窓口に問い合わせて直接寄付をするといったケースが該当する。また、公立高校や公立図書館への寄付や、企業版ふるさと納税も国や地方公共団体への寄付金に該当する。
さらに、新聞社や放送局が呼びかけて行う寄付の中にも、国や地方公共団体への寄付金とみなされるものがある。
2 指定寄付金
指定寄付金とは、財務大臣が指定する寄付金のことで、広く一般に募集され、公益性及び緊急性が高い。指定寄付金も、全額を損金に算入できる。
たとえば、赤い羽根の募金やオリンピック、国宝や重要文化財の修復といった内容が考えられる。その他、私立学校の教育研究や国立大学法人の教育研究などへの寄付も該当することがある。
3 特定公益増進法人などへの寄付金
特定公益増進法人とは、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献などの公益の増進を目的として運営される法人のことだ。特定公益増進法人などへの寄付は、一定の上限までは損金に算入できる。
以下が特定公益増進法人の一例だ。
- 独立行政法人
- 一定の地方独立行政法人
- 自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校復興・共済事業団および日本赤十字社
- 公益社団法人、公益財団法人
- 一定の学校法人
- 社会福祉法人
- 更生保護法人
そのほか、認定NPO法人への寄付も同じように上限までを損金に算入できる。
4 一般の寄付金
一般の寄付金とは、ここまで紹介してきた3つ以外の寄付金のことだ。一般の寄付金も、上限の範囲内であれば損金に算入できる。ただし、上限は特定公益増進法人などと比べて小さい。
一般の寄付金には、たとえば宗教法人(神社やお寺)への支援金、町内会への寄付金、政治団体への寄付金などがある。
法人で寄付するときは限度額に注意
ここまで紹介してきたように、4つの寄付金のうち「国や地方公共団体への寄付金」と「指定寄付金」は全額を損金に算入できる。しかし、「特定公益増進法人などへの寄付金」と「一般の寄付金」には上限がある。
上限を超えると損金に算入できなくなるため、税金対策として寄付をするなら、上限を超えないよう気をつけるようにしたい。続いては、上限の計算方法を解説していく。