図解,オペレーティングリース,節税
(写真=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

オペレーティングリースを節税に活用する方法について、聞いたことはあっても中身は詳しくわからないという方も少なくないでしょう。

実際に、オペレーティングリースは節税方法の中でも効果が高いものとして支持されています。

どういった仕組みで、その節税効果は望めるのでしょうか。

この記事では、オペレーティングリース節税の全体像や節税になる仕組み、事業承継時の活用方法などについて詳しく解説していきます。

オペレーティングリースの全体像

オペレーティングリースには、船舶・航空機・ヘリコプターなど様々なリース物件で実施する方法があります。

それらのリースがどのような形式で実施されるのかを、船舶のリースを例にして見てみましょう。

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(画像=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

上図のようなお金の流れで、「匿名組合」「出資者」「船舶メーカー」「金融機関」「海運会社」の5者で構成されます。

①まず、匿名組合が出資者から出資を募って資金を集めます。
②出資者からの資金だけでは不足する場合などは、匿名組合が金融機関から必要な分だけ借入れを実施します。
③調達した資金を使って、匿名組合が船舶メーカーから船舶を購入します。
④その船舶を海運会社へ貸し出すリース契約を結び、定額でリース料を得ます。
⑤得た利益から、投資額に応じて出資者へ利益を分配します。

このようなお金の流れでオペレーティングリースは実施されていくのですが、上記の③で匿名組合がリース物件を購入することが節税に繋がっていくことになります。

具体的な節税の仕組みについて、次に詳しく見てみましょう。

節税になる理由

前項の図のように、匿名組合がリース物件を購入しますので、リース物件は匿名組合で資産計上をすることになります。

リース資産は定率法を適用して減価償却費を大きく計上できる一方、支払われるリース料は一定であるため、リース開始から数年間は赤字、つまり損失を生み出すこととなります。

同時に、匿名組合への出資は金融商品として扱われます。

匿名組合が出した損失については、出資者も出資持分に応じて損金計上することになります。

つまり損益計算書上の特別損失を大きく計上することができるようになり、税引前利益が大きく減少することで、結果的に節税が見込めるという仕組みです。

中には出資した額の8割近くを初年度に特別損失として損金計上できるケースもあります。

節税効果が高いと言えるのは、この損金計上できる金額の大きさによるものなのです。

損金計上は持続できない

この損金の計上の考え方については、主に2点注意が必要です。

まず、匿名組合の減価償却費と得られるリース料の関係は下図のようになります。

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(画像=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

①リース開始から数年後には、入るリース料の方が計上される減価償却費よりも多くなるので匿名組合では損失が計上されず、出資者も損金計上はできなくなります。

②リースの期間満了時には、匿名組合は船舶を売却することになります。

匿名組合に大きく利益が発生することとなり、その利益は出資者にも分配されるため、出資者は収益を計上しなければなりません。

損金計上による節税効果がずっと持続するわけではありませんので、長期間に渡ってのトータルで収支を判断していかねばならず注意が必要です。

事業承継における活用方法

この節税を活用したいシーンの一つに、事業承継があります。

「株式譲渡」「退職金」が注目すべきポイントとなり、図に表すと下記の通りです。

①まず、会社から匿名組合へ出資をして、初年度に大きく損失を計上します。

②その損失によって利益が圧縮され、株価が下がることが見込めます。

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(画像=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

その株価が下がった株式を、その段階で後任者へ譲渡(売買)します。

株価がそのままの状態で譲渡するよりも、譲渡時の税金に対しての節税ができることになります。

③リース期間満了時には、リース物件売却で得た利益の分配金が匿名組合より支払われます。

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(画像=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

この分配金を現社長の退職金の原資に割り当て、この段階で新社長へ事業承継します。

収益と退職金を相殺することで、ここでも節税が見込めることになります。

株価を構成する要素として、利益の増減が影響する部分は大きいものです。

株式の譲渡において「いかに株価を下げて臨むか」は事業承継における外せない節税ポイントなので、長期的な視野で事業承継に取り組む予定が既にある場合には、オペレーティング節税活用の余地がないか早めに検討したいものです。

オペレーティングリース節税活用時の注意点

オペレーティングリースを活用した節税を検討する上で、主に4点注意しておきたいポイントがあります。

①出資からリース満了時まで長期に及ぶ

リース満了までの期間は、リース物件の法定耐用年数がどれだけかによって大きく変わります。

例に挙げた船舶で、6~10年程度が目安です。

このリース期間は解約することができないので、あくまでも長期的な視点での運用が欠かせません。

②ドル建ての案件が多く、為替変動のリスクを含んでいる

ドル建てでの投資案件が多いため、想定する利回りに対して為替の変動リスクを想定しておかなければなりません。

円建て案件も中にはありますが、好条件のものは限られているので、タイミングよく出会う必要があります。

③元本が保証されているわけではない

オペレーティングリースでは、生命保険でいうところの生命保険機構のような救済措置が用意されていないので、元本が必ず返還されるわけではありません。

投資案件を選ぶ際には、慎重を期す必要があります。

④出資者が個人ではメリットを享受できない

出資者が個人だった場合、匿名組合の損失は出資額の減少とみなされるため、雑所得での区分となり他の所得との損益を通算できません。

損金計上による節税メリットは、出資者が法人の場合に初めて享受できるものとなります。

まとめ

オペレーティングリースを活用した節税方法は、長期的なスパンでの損益を見て実施することになります。

事業承継をより低コストで実現させていくための手段として使うのには効果的です。

一方で、リスクもそれなりに存在しているので、絶対的な節税を考えるよりは、突発的な利益に対する税金の支払いを将来に効果的に先延ばしにするための手段として使うのもよいでしょう。

どのリース案件をどのように使って実施していくのかは、くれぐれも慎重に検討したいものです。(提供:ベンチャーサポート税理士法人