矢野経済研究所
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2021年度の国内農薬製剤市場は前年度比 101.7%の3,295億円、2022年度は同102.2%の3,369億円を予測

~作付面積は減少を続ける一方、原料価格の高騰を受けて農薬製剤市場は拡大の見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の農薬市場を調査し、農薬製剤の需要分野別(農耕地、非農耕地、家庭園芸分野)・種類別(殺虫剤、殺菌剤、殺虫・殺菌剤、除草剤、微生物・生物農薬)の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。

農薬製剤市場規模推移・予測

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1.市場概況

水稲の作付面積の減少や豪雨・台風・天候不順などマイナスの影響を受けたが、2021 年度の国内農薬製剤市場規模はメーカー出荷金額ベースで、前年度比 101.7%の3,295億円となった。畑作用の殺菌剤などの出荷額が伸びたほか、水稲・畑作用共に除草剤が堅調に推移した。また、コロナ禍における在宅時間の増加に伴い、園芸をはじめる新規ユーザーが増えたことにより、家庭園芸用農薬の需要増が市場規模の拡大に好影響を与えた。

2.注目トピック

有機農業推進で生物農薬・バイオスティミュラントの開発が活発化

持続可能な社会や環境問題を重視する国内外の動きが高まるなか、農林水産省の「みどりの食料システム戦略」では、化学農薬使用量を2030年までに10%、2050 年までに50%に低減する目標を設定し、環境保全型農業として有機農業を目指す方向にある。

こうしたなか、化学農薬とは異なる手法で防除効果が期待される微生物・生物農薬やバイオスティミュラントが注目されている。
微生物・生物農薬とは、一般的には自然界に普通に存在する微生物のうち、「病原菌から植物を守る微生物」や「害虫から植物を守る微生物」を選抜し、生きた状態のまま使いやすく工夫した「微生物農薬」、及び捕食者・被捕食者の関係、また寄生者・被寄生者の関係などの天敵関係を利用した「天敵農薬」を指す。またバイオスティミュラントとは植物を刺激して植物が元々持っている力を引き出すことで、収穫量や品質を維持したり、収穫後の貯蔵性を高める効果を引き出したりする考え方である。

微生物・生物農薬やバイオスティミュラントは本来の自然界の食物連鎖機能を用いたり、植物が本来有する能力を活用するなど、いずれも化学農薬の使用量を低減するには有効な手法である。農薬メーカー各社は、​化学農薬使用量を低減する目標に向けて、微生物・生物農薬やバイオスティミュラント関連資材の開発を活発化させている。現下、日本の農業は「みどりの食料システム戦略」のもとで、持続可能な農業の実現に向け、大きくかじを切り始めたと言える。

3.将来展望

日本の農業は、担い手の減少や高齢化に伴う離農が続くなか、ここ数年、農業政策における規制緩和により法人による農業への新規参入が拡大するなど農業構造が変化している。

2022年度は農薬製剤に用いられる原料の価格や輸送コストの高騰が製品価格に転嫁を始めるなか、更なる値上げを見越した先取り需要も生じ、国内製剤市場規模はメーカー出荷金額ベースで、前年度比102.2%の3,369 億円を予測する。

2022年度以降も農薬製剤市場は横這いで推移する見通しであるが、先述の原料価格の高騰による製品価格の上昇などを受けて、2030年度の農薬製剤市場規模は3,495億円(2022年度比103.7%)になると予測する。

調査要綱


1.調査期間: 2023年2月~4月
2.調査対象: 農薬市場参入企業(農薬原体メーカー・製剤メーカー・商社)、農薬関連業界団体・官公庁等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査、アンケート調査および文献調査併用
<農薬製剤市場とは>
本調査における農薬製剤市場とは、殺虫剤、殺菌剤、殺虫・殺菌剤、除草剤、微生物・生物農薬等を対象とした。なお国内農薬製剤市場規模はメーカー出荷金額ベースで算出し、OEMを除く自社ブランド製品のみの合計としている。
<市場に含まれる商品・サービス>
農薬原体、農薬製剤(殺虫剤、殺菌剤、殺虫・殺菌剤、除草剤、微生物・生物農薬)

出典資料について

資料名2023年版 農薬産業白書
発刊日2023年04月28日
体裁A4 397ページ
価格(税込)143,000円 (本体価格 130,000円)

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