税金滞納
(画像=sergeyishkoff / PIXTA)

法人に発生する税金は、納付期限までにすべて支払うことが原則だ。しかし、経営状況によってはどうしても現金をねん出できず、滞納してしまうケースも存在する。そこで今回は税金を滞納するデメリットや、現金が不足している場合の対策などを解説していく。

法人の税金滞納は珍しくない!納税への強い意識を

法人が経営を続けるうえで、必ず発生するコストが「税金」だ。法人税や消費税をはじめ、法人は利益に応じた税金を必ず納めなくてはならない。

しかし、国税庁が発表した「平成30年度租税滞納状況」によると、法人が税金を滞納するケースは数多く存在する。法人税については697億円、消費税では3,521億円の滞納が新規に発生しており、さらに平成29年度までに徴収できていない多額の「前期繰越額」も存在している。

ただし、平成初期からの推移を見てみると、滞納残高・滞納発生割合はともに右肩下がりの状況だ。この状況からは政府の努力がうかがえるが、企業経営者の納税への意識も徐々に強まっていると言えるだろう。

政府は税金滞納に対して「確実な徴収」を目指しているため、企業経営者は余計な税金トラブルが生じないように、引き続き納税への意識を強く持っておきたい。

税金を滞納したときのペナルティは?滞納から差し押さえまでの流れ

各種税金には「納付期限」が定められており、この期限を1日でも過ぎると滞納扱いになってしまう。滞納扱いになると、ペナルティとして以下の「延滞税」が発生するため、結果的に法人の税負担は通常よりも大きくなる。

○延滞税とは?
納付期限を過ぎた場合に、その罰則として課せられる税金のこと。法人税や消費税はもちろん、社会保険料の滞納にも適用されている。
延滞税の計算方法は「本税の額×税率×延滞期間」であり、延滞期間が長いほど負担額は大きくなる。また、延滞期間によって税率も以下のように変わるため、仮に延滞税が発生してしまった場合には、早めに支払うことで税負担を抑えておきたい。

・納付期限の翌日から2ヶ月以内の税率…「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低いほう
・納付期限の翌日から2ヶ月を超えた場合の税率…「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低いほう
(※社会保険料については、納付期限の翌日から「3ヶ月」が基準となる)

また、上記の延滞税が発生しても納税をしなかった場合には、最終的に資産の「差し押さえ」が実施される。納付期限を過ぎてから差し押さえが実施されるまでの流れは以下のとおりだ。

滞納から差し押さえまでの流れ 概要
【1】督促状の送付 納付期限から1ヶ月程度を目安に、納付期限や税目、問い合わせ先が記載された督促状が送付されてくる。
【2】電話・書面による催促 督促状の送付に合わせて、電話や書面による連絡が届くケースも珍しくない。状況次第では、担当者が会社に直接訪問してくることも。
【3】経営者や財産の調査 差し押さえの前準備として、経営者の情報が調査される。調査の結果「差し押さえが難しい」と判断された場合には、強制捜査が入る可能性も。
【4】差し押さえ 経営者が最低限の生活を送るための「差押禁止財産」を除いて、資産が差し押さえられる。差し押さえられた財産は公売にかけられ、その売却額で滞納分を支払う。

法律上では、差し押さえは「督促状を送付してから10日以降」であれば実施できる決まりになっている。すぐに実施されるケースは少ないかもしれないが、この期間を過ぎたら「いつでも差し押さえられる可能性がある点」は確実に理解しておく必要がある。

差し押さえ以外にもこんなデメリットが!融資や個人財産への影響

税金を滞納するデメリットは、上記の延滞税や差し押さえだけではない。以下でまとめたデメリットを見てわかるように、税金の滞納には致命的なリスクが数多く潜んでいる。

経営者個人に発生するデメリット 法人に発生するデメリット
・税務署から目をつけられ、税務調査が入る可能性が高まる
・個人信用情報(ブラックリスト)に記録が残る
・公売により、通常よりも低い金額で資産を売却させられる
・社会保険の場合は、受給額が減る
・税務署から目をつけられ、税務調査が入る可能性が高まる
・社会的な信用力が下がる
・融資を受けられる可能性が極端に下がる
・キャッシュフローが悪化する

経営者や法人にとって、「融資を受けられない」点は深刻なデメリットだ。経営者個人の生活に支障が出るだけではなく、再起を図ろうと思っても起業資金を調達できなくなる。法人についても、資金がなければ事業を続けることが難しいので、倒産リスクが一気に高まってしまう。

また、公売にかけられた資産は、市場価格よりも20%~30%ほど低い価格で取引されるケースが多い。つまり、差し押さえが実施されると、それだけで経営者や法人には多額の損失が発生してしまうのだ。

税金を滞納すれば手元に残せるキャッシュは多少増やせるが、それ以上に深刻なリスクを抱える形になるため、「税金を滞納するメリットはない」とはっきり言えるだろう。

税金滞納による差し押さえを防ぐための注意点

ここまで税金滞納のデメリットを詳しく解説してきたが、やはり「差し押さえ」は特に防いでおきたいリスク。手元にいくら資産を残していても、財産を差し押さえられるとその資産を自由に使えなくなるので、今後の選択肢もぐっと狭まってしまう。

そこで以下では、差し押さえを防ぐために押さえたい注意点をまとめた。もちろん、税金は納付期限を守ることが原則だが、万が一支払いが遅れてしまったときには以下の点を意識して行動しよう。

1.督促状が届いたら、まずは支払いの検討を

手元に督促状が届いたら、まず考えるべきことは「早急な支払い」だ。前述でも解説したとおり、滞納する期間が長引くほど延滞税は増大し、それと同時に差し押さえのリスクも高まっていくので、いち早く対応することを検討しなければならない。

将来的に返済できる見込みがある場合には、納税のために融資を受ける方法もひとつの手段になる。差し押さえが実施されてからでは融資を受けることも難しくなるため、督促状が届いた時点で迅速に行動することを意識しよう。

2.消費税と源泉徴収税は優先的に支払う

法人に課せられる税金にはいくつか種類があるが、中でも注意しておきたいのは「消費税」と「源泉徴収税」の2つ。これらの税金は、滞納すると短期間で差し押さえに発展しやすいと言われている。 消費税と源泉徴収税は、消費者や雇用者から一時的に預かり、後になってから法人がまとめて支払うタイプの税金だ。この点がほかの税金とは大きく異なるため、差し押さえリスクが高いとされている。

したがって、万が一すべての税金を支払うことが難しい場合には、消費税・源泉徴収税の2つを優先的に支払っておきたい。もちろん、だからと言ってほかの税金を軽視できるわけではないので、「すべての税金を完納すること」は前提として認識しておこう。

3.税務署や年金事務所とのコミュニケーションを軽視しない

督促状や催促の連絡が届いた場合には、「納税する意思」をきちんと示すことが必要だ。税金を取り立てる側としても、「経営状況が厳しいから納税できていない」という状況はある程度理解しているため、丁寧に対応すれば差し押さえを引き延ばせる可能性がある。

中には、「支払い能力がないから、今は連絡を取っても意味がない」と感じる方もいるだろう。しかし、税務署や年金事務所からの連絡を拒絶すると、取り立てる側としても差し押さえ以外の選択肢がなくなってしまうため、決してコミュニケーションを軽視してはいけない。

催促の連絡が入った場合には、常に丁寧に対応することを意識しよう。

税金の支払いが難しいときは…?経営者が覚えておきたい対処法

税金はすべての種類を完納することが理想だが、経営状況によってはどうしても支払いが難しくなる場合もある。そのようなシーンにおいても、常に正しい対処法で差し押さえをできる限り防ぐことが重要だ。

納付期限までに税金を支払えない経営者は、以下の対処法もきちんと押さえておこう。

1.まずは顧問税理士などの専門家に相談を

納付期限までに税金を支払えないことがわかったら、まず行うべきことは「専門家への相談」だ。たとえば、税金関係に強い顧問税理士などに相談をすれば、会社の財務状況と税額を照らし合わせたうえで、最適な選択肢をアドバイスしてもらえる可能性がある。

また、会社のエリアによっては、滞納専門の相談窓口が存在しているケースもある。顧問税理士がおらず相談先の目星がつかない場合には、そのような選択肢も考えて各地域の情報を調べてみよう。

2.税務署や年金事務所への相談も忘れずに

専門家だけではなく、管轄の税務署や年金事務所に相談をすることも大切なポイントだ。直面している状況を正直に伝え、かつ納税する意思がしっかりと伝われば、いきなり一括での支払いが強要されるわけではない。

納税者の状況にもよるが、小切手や手形での支払い、分割払いなどを認めてもらえるケースもある。一括払いを避けることができれば、資金をねん出するための時間を稼げるだろう。

ただし、滞納が1年以上続いている場合には、「納付計画書」などの書類が求められることもある。ほかにも、支払いに対応できない理由や財務状況などを尋ねられる可能性が高いので、相談をする前には自社の状況をきちんと整理しておきたい。

「そのまま放置」はNG!常に選択肢は残されている

法人が税金を滞納したときに、最もしてはいけない行動は「そのまま放置すること」だ。本記事でも解説したように、財産が差し押さえられて資金を自由に使えなくなれば、再起を図ることもできなくなる。

仮に税金の支払い能力がなかったとしても、専門家や税務署などに相談をする選択肢が残されているため、まずは行動を始めることを強く意識したい。また、税金は毎年発生するコストなので、完納した後も常に翌期の支払いについて計画しておこう。

文・THE OWNER編集部