小売業向けにDX化(デジタルトランスフォーメーション)の支援などを行うイングリウッド。2021年6月から冷凍惣菜の宅配サービス「三ツ星ファーム」を開始し、幅広い世代から支持を得ている。
2023年5月末時点での販売食数は500万食に達したという。より利用しやすいサービスを目指してサイトの改良などを今後は進め、更なる支持拡大を目指す。データテクノロジー事業本部の金澤裕之フードユニットマネージャーに現状や今後の方針などを聞いた。
――冷凍弁当の宅配サービスを手掛けられている。きっかけと現在の動向は。
当社は輸入代行からスタートした会社で、ECにまつわるビジネスが売上全体の3分の1を占めている。新たにECに注力したいと考えている企業の手伝いも行い、成長してきた。その中で、新規事業として「三ツ星ファーム」はスタートした。
このサービスは、食とサブスクを組み合わせて、サービスを通じてどのような体験を提供できるか、どうすれば喜んでもらえるかを考えて取り組んでいる。メニューの監修には日本を代表するような食の専門家に入ってもらい、支持していただけている。
2021年の開始から毎月大きく伸長しており、5月末時点で累計の販売食数は500万食に達する見込みだ。メインターゲットは30~40代を想定していたが、それ以上の世帯からの引き合いも多く、予想以上に幅広い世代から利用していただけている。
――伸長した要因は。
コロナ禍における食への意識の変化が大きいと感じる。例えばフードデリバリーの場合、店舗で食べるよりも値段は倍近くかかるが、それでも引き合いはある。店舗まで買いに行くのが面倒だと感じる人が増え、需要は堅調に推移していると考えている。多少高くても「利便性が高い」「健康に良い」「美味しい」など、自身の価値基準に沿って商品を選ぶ方が多くなったのでは。
正直なところ、「三ツ星ファーム」の売上は、コロナが落ち着いたら落ち着くと予想していた。しかし、落ち着いた後も着実に販売は伸び続け、累計食数は500万食に達する見込みだ。
〈共働き世帯の夕食としても利用広がる、広告などで訴求〉
――商品のこだわりは。
具材感や大きさ、硬さなど細かな事にも心配りをし、そこが伝わったのでは。今までの宅配サービスは、施設介護などに利用されることを想定した商品が多く、市場は狭かった。そことは全く異なる商品で提案すれば利用していただけると考えて開発している。
当社の冷凍弁当の場合、街で売られている弁当と価格はあまり変わらないが、味だけでなく、長期保存できる点や、自宅に届けてくれるという点でも支持されたと思う。コロナ禍の時は、在宅勤務時の昼食として使っていたという方が多いと感じていたが、今では共働き世帯の夕食や、家事に疲れた方からも活用していただけている。楽しいはずの食事が重荷になっている方もおり、そうした方からも支持されたと思う。定着率も想定よりも高い。
――現在の戦略は。
世代や家族構成、住んでいる地域などによってニーズは変化するので、ターゲティング広告などでより幅広く活用してもらえるようにする。また、活用してくださっている方で冷凍惣菜のサービスを本当に便利に感じているかを調べ、長く愛顧してもらうために様々な施策も行う。サービスの良さを深めるなどして成功に繋げてたい。
――子ども食堂への食事の提供も行っている。
これはニュースを見ていた時に、こうした形で子どもたちに何かできればと思い、取り組んでいる。渋谷の場合、小さな子どもが集まれる場所はそう多くないので、こうした取り組みを通じてつながりを作ってもらえたらと思う。今後も継続していく。
〈ラインアップの更なる拡充へ 弁当以外も視野に〉
――冷凍食品の市場についてどう感じているか。着実に伸びていて、今後も伸長するだろう。ただ、当社のサービスを利用された方から「冷凍なのにこんなに美味しい」という声を頂いた。美味しいと言っていただけるのは嬉しいが、「冷凍なのに」とついていて、冷凍食品へのイメージはまだネガティブなのだと思った。スーパーでも冷凍食品の売場は広がっていて、冷凍技術と共に今後も伸長するだろう。
――今後の取り組みは。
現在展開しているラインアップは60種類ほどなので、これを約100種類まで増やしたい。惣菜以外の商品も検討している。1年後には弁当を売るだけではない取り組みも検討したい。柔軟に対応して活用いただいている方に喜んでもらえたらと思う。
他にも、愛顧されている方にとって使いやすいシステムにしていく。Webサイトはまだまだ見づらく、使いにくいと認識している。もっと柔軟に利用できるシステムにしていく。弁当にしても細かなオーダーに応えられるようにしたい。サブスクなので価格は固定だ。そこで、豪華なメニューや変わり種、シンプルなメニューといったように、利用されている方の気分などに応じて商品を選べるようにしたい。食の楽しさを作り、ワクワクしていただけたらと思う。
〈冷食日報2023年6月1日付〉