合本版 ワルい&ズルい心理学
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(本記事は、渋谷 昌三氏の著書『合本版 ワルい&ズルい心理学』=日本文芸社、2023年3月15日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

公の場で約束させると、部下のやる気スイッチが入る

やる気のなさは伝染する

組織のなかには様々なタイプの人がいます。やる気満々でそつなく仕事をこなす人ばかりなら問題はありません。ただ、「定時退社は当たり前。なるべく仕事はやりたくない」という人がひとりでもいると、仕事が滞り、他のスタッフのモチベーションまで下がってしまいます。

確かに、どこにでもやる気のない人はいます。個人の責任の範囲であれば問題はないのですが、職場や学校など、共同作業が必要な場所では支障をきたすため対策が必要です。

もし自分の部下が、本当は実力があるのに怠けているだけの場合、コントラスト効果を使って指導するのをおすすめします。これは最初に心理的負担の高い条件を示し、後から軽い条件を示すと、後者を選択するという心理的効果です。

たとえば、得意先へのプレゼンがあるとします。最初にその「進行役を任せたい」と依頼し、答えに渋ったら「では資料作成をしてもらえるか?」と頼みます。高度な依頼を先にすることで本当にやらせたい作業にYESといわせるというものです。

また、「君だからこそ頼むのだ」と相手の自尊心をくすぐり、特別感を与える接し方も有効です。頼まれた部下は恩義を感じるようになります(好意の返報性)

公的な場で目標を宣言する効果

もう一つ注目したいのが、本人にパブリックな場で目標を宣言させるという方法です。

人は行動を起こすときには目標を立てるものです。これが自分ひとりに対してだと、つい怠けてしまいがちです。ところが、目標を大勢の前で宣言してしまうと、その達成のために努力する確率は高くなります。口にした本人は、大きな責任を自覚するようになり、目標達成のための行動力が増します。このような心理の働きはパブリック・コミットメント(誓約・公約の公表)と呼ばれ、ビジネスの現場ではひんぱんに使われています。上司が部下に目標を設定させて宣言させるだけでなく、部署ごとに毎月の売り上げ目標を発表させる、期限を区切って目標を実行することを宣言させるなど、個人からセクションまで使われ方は様々です。

これはビジネスの世界であれば有効的な方法ですが、趣味で集まったサークルやPTAなどの組織では実行するのはなかなか難しいかもしれません。そんなときは、ひとりだけに宣言させるのではなく、グループに属する全員に対し、「自分の目標」「自分がすべき役割に対する目標」などを順番に言わせていくとうまくいくことが多いものです。

合本版 ワルい&ズルい心理学
渋谷 昌三
1946年、神奈川県生まれ。学習院大学文学部を経て東京都立大学大学院博士課程修了。心理学専攻。文学博士。現在は目白大学教授。主な著書に『心理操作ができる本』『心理おもしろ実験ノート』(三笠書房)、『心理学雑学事典』(日本実業出版社)、『面白いほどよくわかる!心理学の本』『心理学がイッキにわかる本』(西東社)、『人を動かす心理学』( ダイヤモンド社)などがある。

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