合本版 ワルい&ズルい心理学
(画像=yamasan/stock.adobe.com)

(本記事は、渋谷 昌三氏の著書『合本版 ワルい&ズルい心理学』=日本文芸社、2023年3月15日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「人たらし」になるために使いわけたい説得術

KEY WORD
勝つための説得方法

相手をよく見て説得にかかれ

ビジネスの商談をはじめ、恋愛相手を口説くときや親にお金の無心をするときなど、人に何かを依頼する際には相手を説得しなければなりません。

人を説得するまでの具体的なプロセスや働きかけは説得的コミュニケーションと呼ばれ、一面提示両面提示に分けられます。一面提示とは、プラス面だけを相手に知らせる方法で、両面提示はプラスとマイナスの両面を相手に伝える方法です。

セールスでの活用例をあげましょう。一面提示は、売りたい相手に商品知識がなく、面倒を嫌う相手などに有効です。よい面だけを説明するだけで、「買ってみようかな」という気持ちを後押しします。両面提示は、疑り深い人やある程度商品知識をもつ人に対して効果的です。このタイプは悪い面もきちんと受け止め、納得したうえで購入を検討することができます。

説得的コミュニケーション
意図的なメッセージにより、受け手の行動や意見を特定の方向に変えさせることを狙ったコミュニケーションのこと。

もちろん、恋愛にも応用できます。「僕は君のすべてが好きだ」といわれるのが好きな人もいれば、「こんなところが玉にキズだけど、そこがまた君の魅力なんだ」と両面提示されることで、グッとくる人もいます。これはやはりさまざまな経験を積みながら、ケースや相手によって使いわけたいものです。

「説明」が先か「結論」が先か

交渉などの席で、説得上手なベテラン営業マンの話しぶりを目のあたりにして、うらやましく思った経験をおもちの方もいることでしょう。自分の意見を認めさせるのがうまい人は、場の空気を読むのも上手です。観察力と注意力に優れ、相手の心理やその場の状況を読むことに長(た)けているのです。

彼らは話をしている相手や置かれた状況を考慮して、それにあわせて話し方や話題を自在に変えることができます。そして、特に2パターンの話し方を巧みに使いわけます。

ひとつは、先に説明をしてから、最後に結論を述べるクライマックス法。もうひとつは、まず最初に結論を述べて、あとから説明をつけるアンチ・クライマックス法です。相手が話に興味がありそうなときはクライマックス法で、相手に聞く準備ができていないときは、アンチ・クライマックス法で話すのが効果的です。また、クライマックス法で話しかけてくる相手はクライマックス法で話を返されることを、アンチ・クライマックス法で話してくる相手なら、アンチ・クライマックス法で返されることを好むとされています。

新商品のレトルトカレーのプレゼンを例にあげましょう。

「加熱時間を従来の3分から、1分に短縮」「具はすべて国産の野菜」と説明をつけてから、最後に「すべてにこだわりぬいた画期的なレトルトカレーなのです」とアピールするのがクライマックス法の進め方です。

最初に「これからご紹介するのは、すべてにこだわりぬいたいまだかつてないレトルトカレーです」と宣言したあとに具体的な説明に入るのがアンチクライマックス法のやり方です。

交渉上手を目指すなら、これらの説得術を身につけましょう。

クライマックス法とアンチ・クライマックス法
心理学における説得方法で話の組み立て方のこと。まずあたりさわりのない話をした後、重要な話をするのがクライマックス法。最初に重要な話をして、あとからあたりさわりのない話をするのがアンチ・クライマックス法。

説得がうまい人が使い分けている2つのトーク術
(画像=『合本版 ワルい&ズルい心理学』より)
合本版 ワルい&ズルい心理学
渋谷 昌三
1946年、神奈川県生まれ。学習院大学文学部を経て東京都立大学大学院博士課程修了。心理学専攻。文学博士。現在は目白大学教授。主な著書に『心理操作ができる本』『心理おもしろ実験ノート』(三笠書房)、『心理学雑学事典』(日本実業出版社)、『面白いほどよくわかる!心理学の本』『心理学がイッキにわかる本』(西東社)、『人を動かす心理学』( ダイヤモンド社)などがある。

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