肥満は全身に慢性的な炎症が起きている状態!?

肥満は「万病の元」ともいわれており、糖尿病や高血圧、脂質異常症など生活習慣病だけでなく、その他の身体の不調にも影響を与えているとされています。肥満とは、体脂肪が過剰に蓄積した状態を指し、肥満の判定は主にBMIを用います。日本肥満学会では、BMIが25以上で肥満、35以上で高度肥満に分類しています。厚生労働省によって行われた2019年の「国民健康・栄養調査」によると、日本人の肥満者(BMI25以上)の割合は男性33.0%、女性22.3%で、特に男性は2013年から増加傾向にあるそうです。

さまざまな病気のリスクを高める肥満状態は、全身で慢性的な炎症が起きている状態ともいえるとのこと。その理由について、まずは、脂肪細胞が分泌する生理活性物質についてみてみましょう。脂肪細胞は、ただエネルギーを貯蔵しているだけでなく、脳や腸などの身体の臓器や組織と情報のやりとりを行い、身体の機能を整えるために必要な生理活性物質を分泌する役割も担っています。脂肪細胞から分泌される生理活性物質のことを「アディポサイトカイン」と呼んでいます。

このアディポサイトカインには、「抗炎症性アディポサイトカイン」と「炎症性アディポサイトカイン」が存在します。抗炎症性アディポサイトカインは、食欲を抑制する働きのある「レプチン」、動脈硬化などを防ぐ働きを持つ「アディポネクチン」などがあります。一方、炎症性アディポサイトカインはインスリンの働きを抑制し、糖代謝を悪化させる「TNF-α(ティエヌエフアファ)」、血栓を作りやすくして動脈硬化を促進する「PAI-I(パイワン)」、血圧を上昇させる作用をもたらす「アンジオテンシノーゲン」などがあります。

肥満になると、これらのサイトカインの分泌量が変化するとのこと。抗炎症性サイトカインであるアディポネクチンの分泌量は減少し、炎症性サイトカインであるTNF-α、PAI-I、アンジオテンシノーゲンの分泌量は増加します。また、抗炎症性サイトカインのレプチンは肥満になると効きにくくなるため食欲が低下しづらくなります。

そして、脂肪が過剰に蓄積した脂肪細胞には、マクロファージなどの免疫細胞が集まってきます。集まってきたマクロファージは脂肪細胞を刺激して、炎症性サイトカインの分泌を促進させます。さらに、マクロファージは脂肪細胞の分解も促進するため、飽和脂肪酸などが増加し、その飽和脂肪酸がマクロファージを活性化させます。するとマクロファージはさらに脂肪細胞を刺激するという悪循環が起こります。そのため、炎症が鎮静せず、慢性化していきます。

これが、肥満が慢性炎症を引き起こすメカニズムとされています。この慢性炎症によって、肥満状態は高血圧や動脈硬化などのさまざまな生活習慣病の発症につながっていると考えられています。(監修:健康管理士一般指導員)