学歴,経営者
(画像=Dima Sidelnikov/Shutterstock.com)
黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

高学歴を求める人は多い。「とにかく高学歴であれば得をしても損はしない」と考えるだろう。だが筆者は「高学歴とは投資対象と見る必要があって、自身の人生の必要性を考慮して選択するもの」と割と冷めた目で見ている。

起業して稼ぐ上での学歴

筆者は社会人になった後、MBAの門戸を叩いた経験がある。当時は会社員をやっていて、「サラリーマンとしてキャリアアップするならMBAを取っておきなさい」と上司から言われてのことであった。

だが、起業家となった今はMBAなどまったく不要と考えていて、これは会社経営者に通じる話だと思っている。

「学歴」とは自身を「労働力」という、就職・転職における労働市場ではシグナルとして強力に働く。シグナルというのは顧客に商品、サービスの説得力と認知力を付帯させる。「中卒が教える勉強法」より「東大卒が教える勉強法」の方が多くの人にとって価値を感じやすいのは言うまでもない。

だが、起業の世界はどうなのだろうか?これは分野による。たとえば東大合格を目的とした予備校経営においては、東大卒でなければ何を言ってもまったく説得力がないだろう。反面、物販などでは売られている商品そのものに魅力を感じて買われるので、社長の学歴どころか、社長そのものに興味を持たれることもあまりない。

顧客満足度に学歴は関係ない

取り扱う商品、サービスによってはたしかに学歴が顧客に訴求できる力はある。しかし経営者が目指すべきところは「顧客に買って満足してもらう」ということである。そして顧客満足に学歴はまったく無関係だ。

筆者の経営するフルーツギフトショップ、それから英語多読を用いた英語学習プログラム、メディアへの記事執筆や商業出版をして本を書いていく上で、顧客や取引先の満足度に自身の学歴が役に立ったと感じたことは一度たりともない。正直、筆者の学歴は三流止まりである。だが、これが逆に功を奏したと感じることすらある。

高学歴でないほうが売れることもある

たとえば筆者が手掛ける英語多読の学習プログラムは、ありがたいことにリリースから半年ほどで月収3ケタの収益が出るようになった。入会者に言われるのは、「黒坂さん(筆者)が高学歴エリートでないからこそ、やれば自分ならできると思って興味が湧きました」と言われる。

これは決して褒められているわけではないのだが、「この人にできたならもっと高学歴の自分ならやればできる」と思われることは売上増につながるから、むしろ高学歴でなかったことがビジネスがうまくいっている理由なのかもしれない。

高学歴のサクセスストーリーとの差別化

世の中には高学歴のサクセスストーリーが溢れすぎている。東大卒・京大卒は言わずもがな、さらに海外有名大学院MBAホルダーなど探せば星の数ほどいる。だが顧客は彼らを見て「雲の上の存在だ」と感じてしまうだろう。だからこそ溢れすぎている高学歴のサクセスストーリーと差別化するためにも、あえて「エリートではない」ことをPRすることはビジネスメリットがあるのだ。

小利口は最も起業で成功しないパラーメーター

筆者はいくつかビジネスをしてきて、ありがたいことにそれぞれ月収3ケタ万円程度の収益をあげることができるようになった。大成功などとは言えないが、今のところは楽しくビジネスをできていて、これでもほどほどに満足できている。

そのために良かったことがあるとすれば「バカだったこと」だろう。あまり後先を考えず、「とりあえずやってみて、後はやりながら改善を続けていこう」というバカの思考だ。思いついたことを一日も早く形にして、やってみてデータを取る。そして改善を続けていってまだ続ける価値があるかを判断しながら、良い手応えのものだけを残す。それが現在手掛けているビジネスだ。

これとは逆を行くのが小利口なのだ。小利口はエリート気質、失敗を回避しできるだけ計画的に、時間をかけて戦略を練り上げる。だが、こうした気質の持ち主ほど成功から遠いと筆者は考えている。

ビジネスはやってみないと分からないことがあまりにも多い。売れるかどうか、という他にも「思ったより楽しい(楽しくない)」という自身の適性などはやらないと分からない。もしもやってみて「このビジネスを今後もやりたいと思わない」と思えば撤退することになるが、それまでに緻密に戦略を練りすぎてしまうと、それまでに費やしたコストはすべて無駄になる。失敗を回避しようという「小利口気質」は、起業の世界ではかえってコスト高になるということなのだ。

ここまでトータルで思考するなら、高学歴というステータスから得られるメリットは案外小さいと考える。だから筆者は今からお金と時間をかけて、高学歴というステータスを獲得しようとはまったく感じないのだ。

文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)