2022年度の自治体向けソリューション市場はコロナ特需からの反動減で前年度比3.5%減の7,002億5,000万円と予測
~2023年度以降の市場は基幹系システム標準化の影響で転換点を迎える~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の自治体向けソリューション市場を調査し、市場概況や将来展望、サービス提供事業者の動向などを明らかにした。
自治体向けソリューション市場規模推移・予測
1.市場概況
2021年度の自治体向けソリューション市場は事業者売上高ベースで7,256億3,000万円、前年度比7.2%増になったと推計する。同年度は新型コロナウイルスに関連して、特に自治体向けのBPOサービス(ワクチン接種券印刷・発送、コロナ相談窓口、ワクチン予約コールセンター、接種後のデータ入力等のバックヤード業務代行など)が大きく拡大したほか、コロナ対応に関するシステムの構築・導入も増え、市場を押し上げる要因となった。コロナ禍による需要増は2020年度から始まっているが、2021年度は特需となった。
また、基幹系(住民情報系)システムの標準化は自治体向けソリューション市場にとって大きなイベントだが、2022年8月に政府が標準仕様書を公開し、ITベンダーが標準仕様準拠システムの開発に着手している段階にあり、2023年1月時点ではまだ市場規模に対する影響はない。
2.注目トピック
自治体DXやデジタル田園都市国家構想への注目度が高まる
政府はシステムコストの削減などを目的として、全自治体の基幹系システムを2025年度末までに標準化仕様に準拠したシステムに統一し、デジタル庁が調達するガバメントクラウドで運用するという方針を決定している。そのため、自治体向けソリューション市場では、2026年度以降の成長領域を開拓する動きが進んでいる。
デジタル技術を活用して地域課題の解決や魅力向上を図る、広義での自治体DXは主要なターゲット領域となる。特に、岸田政権の重点政策であるデジタル田園都市国家構想への注目度が高まっている。行政手続きのオンライン化などが加速しているほか、デジタル田園都市国家構想は従来からのスマートシティの取り組みとも重複しており、ヘルスケアや、モビリティ、観光、金融など幅広い領域でデジタル化が推進されている。2023年度にはいっそうの活性化が見込まれる。
自治体向けソリューション市場は、これらの新しい取り組みによって将来的に大きく変化していく見通しである。
3.将来展望
2022年度にはコロナ禍に関連する需要は大幅に減少し、コロナ禍前の水準に近づく見込みである。この影響を受け、2022年度の自治体向けソリューション市場は、前年度比3.5%減の7,002億5,000万円になると予測する。
2023年度以降、基幹系システム標準化とガバメントクラウドへの移行は大きく市場に影響し、2025年度までは自治体向けソリューション市場を押し上げる要因となる。
その後、標準化・移行が終了する2026年度には、ITベンダーの基幹系システムやクラウド事業売上の減少などにより、市場が縮小する見通しとなる。2026年度の自治体向けソリューション市場はいったん大きく減少し、前年度比34.3%減の6,531億円になると予測する。自治体向けソリューション市場は大きな転換点を迎えている。
調査要綱
1.調査期間: 2022年10月~2023年1月 2.調査対象: 自治体向けソリューションを提供するITベンダー及び自治体 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用 |
<自治体向けソリューション市場とは> 本調査における自治体向けソリューションとは、地方自治体で導入される情報システムを指す。市場規模には、ハードウェアやソフトウェアの購入費、レンタル・リース料、保守・サービスサポート料、回線使用料、要員派遣費、アウトソーシング(BPOサービス)費などを含む。 地方自治体側の費目でみると、機器購入費、情報システムの委託費、各種研修費用、アウトソーシング(BPOサービス)費などを含む。自治体職員の人件費、政府が自治体に交付する補助金、政府によるガバメントクラウドなどの調達費は含まない。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 地方自治体向けの基幹系(住民情報系)ソリューション、内部情報系ソリューション、現場向けソリューション、自治体DX関連ソリューションなど |
出典資料について
資料名 | 2023 自治体向けソリューション市場の実態と展望 ~デジタル・ガバメント、自治体DXの最新動向~ |
発刊日 | 2023年01月24日 |
体裁 | A4 319ページ |
価格(税込) | 198,000円 (本体価格 180,000円) |
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